不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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ダイン 監獄都市編

よし、これで帰れるん……だよな?

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窓を開いてダインは中へと侵入すると、部屋に入った時点でダインの視界には棚に並べられた大量の酒を確認した。どうやらここが酒を保管している部屋らしく、思っていた以上に酒の数も種類も豊富だった。


「うわっ、何だよこれ……本当にここ監獄か?どれも一級品じゃないか」
「チュチュッ?」


ダイン本人は酒はあまり好かないが、酒好きのバルに付き合わされてよく飲みに行かされる事があり、それなりに酒の知識はあった。彼は棚の中に並べられている酒に視線を向け、どれもこれも年代物の上等な酒だと知る。

ここが監獄である事を忘れるほどの光景であり、同時に看守長の権力が伺える。そもそも監獄に存在しながらこんな屋敷の中で暮らしている事自体がおかしな話であり、暗にパールがどれだけ特別な存在なのかが伺えた。


「よし、これだけ持って帰れば十分だろ……後はこいつの出番だな」
「チュチュッ?」


ダインはとりあえずは棚の中を吟味し、盗んだことが簡単にばれない様に出来る限りは目立たない位置に存在する酒を抜き取る。とりあえずは10本ほどワインを回収すると、彼はこの時にワインを回収するための魔道具を取り出す。

こちらの魔道具もギルから借りた代物であり、大量のワインを持ち運ぶために必要な代物だった。彼から借りたのは「収納石」と呼ばれる魔道具であり、レアが得意とする「空間魔法(収納魔法)」と同じように異空間に物体を預ける魔道具である。


(あのおっさん、よくこんな物まで持ってたな……)


収納石は異空間に物体を預ける魔道具ではあるが、制限重量が存在し、更に彼が託された収納石の場合は収められる物体は1つに限られる。そのため、普通ならば大量のワインを預ける事は出来ない。

だからこそ事前に収納石には「木箱」を預けて置き、その木箱を取り出すとワインを木箱の中に詰める。その木箱に蓋をすればもう一度異空間に預ける事が出来た。容器の類ならば複数の道具を同時に収納できるという点は優れていた。


「よし、これであとは逃げるだけだな。後はこいつを……」


酒が盗んだ事はいずれ気づかれるため、その前に偽装工作を行う必要があった。ダインはギルから事前に受け取っていたもう一つの道具を取り出す。それはギルの配下のリックが所有していた「短剣」だった。

リックは闘技場でダインが打ち倒した闘技者だが、彼は元々は三巨頭のグシャスの配下であるため、そのリックが所有している短剣をこの場所に残しておけば必然とグシャスの派閥が疑われる。ちなみにこの短剣はリックが懲罰房に送り込まれる際に看守が回収した代物であり、秘密裡にギルが看守に賄賂を贈って受け取った代物である。


「これでグシャスの奴も終わりだな……」
「チュチュッ(←あくどい表情)」


グシャスの配下であったリックの短剣がこの場所で見つかれば当然だが怪しまれるのはグシャスの派閥であり、もしもパールに目を付けられれば流石のグシャスもどうしようも出来ない。いくら三巨頭と呼ばれようが、監獄都市を管理するのはあくまでも看守である事に変わりはない。

ダインは適当に短剣を床に置くと、これで全ての目的を果たした彼は逃げる手段を考える。まずは窓から外へ抜け出すのは難しく、窓の外を見ると未だにファングに取り囲まれるミイネと兵士達の姿が見えた。


「この位置からだと外へ降りようとすれば見つかるかもしれないな……でも、中から抜け出そうとすれば他の女囚人に見つかるかもしれないし、どうすればいいんだよ……」


建物の内部は現在も女囚人が覗き魔の捜索を行っているはずなので建物の中から一階に移動するのは難しい。だが、ならば兵士達の視界に入らない部屋の窓から外へ降りるしかない。


「よし、向かい側の部屋からなら外へ出よう。お前はどうする?一緒に来るのか?」
「チュチュ~」


鼠はダインの言葉を聞いて彼の右肩に移動し、どうやらこのまま付いてくるつもりらしい。この鼠の正体も気になる所だが、今の所はダインの事を助けてくれるため、一先ずはダインも信用する事にした。


(こいつを操っている奴も気になるけど、今はここから早く抜け出さないとな……どうかあいつらがいませんように!!)


扉を僅かに開いたダインは隙間か外の様子を伺い、通路に人がいない事を確認するとすぐに部屋を飛び出す。そして向かい側に存在する部屋へ移動して抜け出そうとした時、ここで思いもよらぬ声を耳にした。


「見つけたぞ、覗き魔がっ!!」
「えっ!?」
「チュチュッ!?」


頭上から聞こえてきた声にダインは驚いて振り返ると、そこには天井に張り付く女囚人の姿が存在した。バルの様に大柄で筋骨隆々な肉体をしており、両手には鉤爪を装着していた。どうやら天井に鉤爪を突き刺し、その状態からずっと天井に身を潜めて通路の見張りを行っていたらしい。
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