不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,245 / 2,091
ダイン 監獄都市編

脱出!!

しおりを挟む
「うおりゃああっ!!」
「ちょっ!?馬鹿、それはパールさんの……」


肖像画を手にしたダインはヤンへ向けて走り出し、その彼の行動にヤンは慌てて止めようとした。だが、ここで両手の鉤爪に気付き、もしも鉤爪で肖像画を傷つければ無事では済まない。

咄嗟にヤンは鉤爪を外して地面に放り込むと、肖像画を掲げたダインを受け止めようとした。結果から言えばヤンはダインが抱えていた肖像画の額縁の部分を掴み取り、止める事に成功する。


「この馬鹿っ!!」
「うわっ!?」


額縁の部分を掴んでどうにかダインの突進を止めたヤンだったが、彼女が安心するのも束の間、ダインのポケットに入っていた鼠が飛び出すとヤンの顔に目掛けて飛び込む。


「チュチュッ!!」
「ひいっ!?鼠ぃっ!?」


鼠が自分の顔面に向けて急に飛び込んできた事にヤンは驚き、意外と乙女らしい反応を示す。彼女は鼠を避けようと首を逸らすが、その隙にダインは肖像画を手放すと丁度ヤンが肖像画のせいで自分の姿が見えない事に気付く。

姿さえ見られていなければ影魔法を発動出来るため、ここでダインは即座に右手を床に伸ばし、影魔法を発動させてヤンの足元を拘束する。唐突に足元に影の触手が絡みついて動けなくなったヤンは戸惑う。


「な、何だ!?足が……」
「うおらぁっ!!」
「ちょ、うわぁあああっ!?」


足元を拘束したヤンを更にダインは影の触手を操作して彼女の両足を引き寄せ、ヤンは背中から床に倒れ込む。肖像画だけは何とか守ろうとして両手を塞いでいたせいで受身も碌に取れず、その隙にダインは窓へ向けて駆け出す。


(逃げるなら今しかない!!)


もう手段を選んでいる暇はなく、ダインは窓に目掛けて突っ込むと、いつの間にか先回りしていたのか鼠が鍵を開く。その結果、ダインは窓を破壊する事もなく、窓を開いて外へ飛び出す事に成功する。


(ありがとなっ!!)


窓から抜け出す際にダインは鼠に振り返ると、鼠は小さな手を振る動作を行い、どうやらここでお別れらしい。ダインは窓から飛び出して地面へと迫ると、ここで影魔法を発動させ、黒腕の要領で両足を影で覆い込むと、無事に地面に着地した。


「着地!!」
「ウォンッ!?」
「な、何だ!?」
「おい、誰か出てきたぞ!!」
「……あ~あっ」
「ギギィッ……(頭を抑える)」


ダインが外に飛び出した瞬間、当然ではあるが外に立っていた兵士とファングに気付かれ、彼は他の者にも見られてしまう。その姿を見てミイネとゴブは頭を抑え、これでこっそりと抜け出す事は出来なくなった。

だが、姿を見られても正体を気付かれずに逃げ切ればいいだけの話のため、ダインは最初に屋敷に侵入した箇所に向けて駆け出す。この時に侵入者を発見した兵士とファングの群れはダインの後を追う。


「し、侵入者だぁっ!!」
「捕まえろ!!」
「絶対に逃すな!!」
『ガアアアッ!!』
「うおおおおっ!!逃げ切ってやるぅっ!!」


ダインは後ろから追いかけてくる兵士のファングの気配を感じながらも屋敷に侵入した鉄柵へ向けて駆け出す。異変に気付いたのか、鉄柵の前に待機していたギルが驚きの声を上げる。


「ば、馬鹿!!見つかったのか!?」
「そこ、退いてくれ!!」


最初の手はずではダインが目的の物を盗み出し、こっそりと抜け出した後にギルが出迎えるはずだったが、この状況でギルが鉄柵の仕掛けを外すのはまずい。もしも兵士に鉄柵の仕掛けを見られれば怪しまれ、当然だが製作者のギルが問い質される。

しかし、その事を踏まえた上でダインも鉄柵の元へ向かい、この時に彼は足元に纏わせた影を利用して加速する。最初に3階から飛び降りる時に足元に影を纏ったのは着地の衝撃を影魔法で無効化するためだったが、この影はダインの想う様に動く。


(もっと早く……!!)


影魔法の応用でダインは無理やりに自分の足を動かし、普通の人間ならばあり得ない速度で駆け抜けた。その移動速度は獣人族の兵士やファングですらも追いつかず、更に彼は鉄柵に向けて飛び込む。


「おりゃああああっ!!」
「うおっ!?」
『な、なにぃいいいっ!?』


ダインは飛び蹴りの要領で鉄柵に仕掛けが施された箇所に蹴りを叩き込むと、丁度いい具合に鉄柵の鉄棒が外れ、はた目から見ればダインの蹴りによって鉄柵が破壊されたようにしか見えない。その様子を見ていた兵士達は唖然とするが、ダインは鉄柵の外に抜け出すと、ギルに話しかけた。


「ほら、早く逃げよう!!」
「お、おう……中々やるじゃねえかっ!!」
「いいから早く!!」


鉄柵を潜り抜ければ後は逃げ切るだけであり、まだ兵士達とファングは追いついていない。すぐに二人はその場を離れるために駆け出すと、屋敷の敷地内の兵士の怒号が響く。


「く、くそっ!!逃げるな!!」
「おい、追いかけるぞ!!」
「ファング共、奴等を追いかけろ!!早くしろ!!」
『ガアッ……』


兵士達はファングを外へ放とうとするが、ここで予想外の事態が発生した。それはファングたちが屋敷の敷地内に離れるのを嫌がり、出て行こうとしない。実は監獄都市で飼育されているファングたちは安全面のため、屋敷の敷地内から離れる事は許されていない。

ファングを飼育する際に屋敷の外へ抜け出そうとすれば厳しく折檻し、そのせいでファングたちは主人がいなければ外に抜け出そうとはしない。だからこそ外へ逃げだしたダイン達の後を追う事は出来なかった。
しおりを挟む
感想 5,095

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。