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ダイン 監獄都市編
酒だぁあああっ!!
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「――かんぱ~い!!」
『乾杯!!』
囚人区で起きた騒動から1時間後、作業区のギルの館では小髭族の囚人が全員集まり、ダインが盗み出した酒を飲む。彼等は久々の上等な酒に涙を流し、もう二度と飲めないと思っていた酒に歓喜する。
「ぶはぁっ!!やっぱり、酒はこれぐらい美味くないとな!!」
「久々に心地よく酔えそうだな……おい、もっと注いでくれよ!!」
「ダイン、お前さんは最高だ!!ほれほれ、お前さんも飲め!!」
「いや、僕は酒はあんまり……」
「全く、にぎやかな人たちですね……ほら、つまみも用意しましたよ。ゴブさんが」
「ギギィッ!!」
ダインが盗み出した酒で祝宴が行われ、ギルと彼の配下の小髭族は涙を流しながら酒を堪能する。そんな彼等にダインは呆れながらも、ミイネとゴブは酒のつまみまで用意してくれた。
あの後、ダイン達は正体を気付かれる事もなく逃げ出す事に成功し、その後の出来事はミイネによると色々と大変だったらしい。まずは侵入者を許した兵士達は叱りつけられ、それを捕まえる事も出来なかったファングや屋敷内の女囚人達も折檻を受ける羽目になったという。
現在は屋敷内を捜索して盗まれた物を確認しているらしいが、今の所はパールが酒を盗まれた事は気づかれていない。それも時間の問題だろうが、少なくともダインが盗んだという証拠は残していない。
「おう、坊主!!お前のお陰で俺達も自由に慣れたぜ!!ありがとな!!」
「若いの、また貸しが出来たな。この恩は忘れんぞ」
「別に言って……おっさんも爺さんも自由になれて良かったな」
「そうですね、ならこれからは本格的に僕達が外の世界へ抜け出す方法を考えましょうか」
マサルもドルトンも今回のダインの功績のお陰で解放され、二人はギルの元に厄介になる事になった。彼の配下に加われば仕事に困る事はなく、それぞれに適した仕事を割与えられるだろう。
これで後はグシャスに関してはパールが動いてくれれば脅威は無くなり、ギルの一強時代が訪れる。三巨頭のギルが囚人達の頂点に立てばもうグシャスだろうがガルルだろうが恐れる相手はいない。
「ギルさん、約束ですよ。ダインさんの手配書の件は忘れてないでしょうね」
「おう、当たり前よ!!俺の部下には全員にそこの坊主を狙うのを辞めるように通達しておいた!!兵士達の方も裏で話を通しているから少なくとも作業区ではその坊主を襲う奴等はいなくなった!!」
「という事です。良かったですね、ダインさん」
「あ、ああ……苦労した甲斐があったな」
「ギギィッ(よしよし)」
涙目を浮かべながらダインは作業区内とはいえ、こそこそと隠れながら行動せずに済む事に嬉しく思う。囚人なのに高額の手配書を張り出された時は生きた心地がしなかったが、これでもう逃げ回る必要はない。
「さてと……それじゃあ、これからの事を話し合いましょうか。ダインさんを助けるためにここまでは色々と大変でしたが、やっと余裕も取り戻せました」
「これからの事って……外へ出るための話か?」
「そうですよ。僕達の目的は忘れてませんよね?」
酒に酔う前にミイネはダインを引き連れ、部屋の隅の方で向かい合う。彼女の目的は外へ抜け出す事であるため、そのためにはどうしてもダインの力が必要不可欠だった。
「ダインさん、僕達の目的は外の世界の人間に気に入られ、誰かに買われてもらって外へ抜け出す事は覚えてますね」
「覚えてるよ。でも、そんな方法で本当に上手く行くのか?」
「確かに色々と不安はありますね。基本的に奴隷は購入される際、ダインさんが身に付けている服従の腕輪のような類の魔道具を装着されますからね」
「なら、僕達が外に出ても自由になれないのと同じじゃん!!」
「大丈夫です、その辺は僕が何とかします……問題なのはダインさんが外の世界の人間に気に入られるかです。試合で活躍して外の世界の人間の目に留まるという方法もありますが、この方法だと試合に出続けない限りはどうしようもありません」
闘技者として試合に参加し、活躍をすれば外の世界の人間の注目を惹く。そして注目を惹けば彼を購入しようとする貴族や商人も現れるかもしれない。しかし、この方法だと試合に出続けて注目を集めなければならない。
既にダインは新人の囚人でありながら有名な存在になりつつあるが、それでも外の世界の人間の注目を集めるには決定打を欠ける。それは彼が人間である事が問題だった。
「大抵の貴族や商人は囚人を購入する際は護衛目的です。だから基本的には獣人族の囚人を購入します。普通の人間と比べても運動能力も高いし、五感も優れてますからね。人間の兵士と獣人の兵士なら後者を選ぶのがこの国では当たり前です」
「何だよそれ……じゃあ、僕は誰も買ってくれないのか?」
「いいえ、ダインさんはまがりなりにも魔導士である事が重要なんです。この国では魔法を扱える人間は滅多にいませんからね」
獣人族は魔法を不得手としており、ダインのような魔導士のような人材は貴重だった。そこでミイネは彼が魔導士である事を大々的に示し、活躍させて外の世界の人間の目を惹く事を方法を考えてきた。
『乾杯!!』
囚人区で起きた騒動から1時間後、作業区のギルの館では小髭族の囚人が全員集まり、ダインが盗み出した酒を飲む。彼等は久々の上等な酒に涙を流し、もう二度と飲めないと思っていた酒に歓喜する。
「ぶはぁっ!!やっぱり、酒はこれぐらい美味くないとな!!」
「久々に心地よく酔えそうだな……おい、もっと注いでくれよ!!」
「ダイン、お前さんは最高だ!!ほれほれ、お前さんも飲め!!」
「いや、僕は酒はあんまり……」
「全く、にぎやかな人たちですね……ほら、つまみも用意しましたよ。ゴブさんが」
「ギギィッ!!」
ダインが盗み出した酒で祝宴が行われ、ギルと彼の配下の小髭族は涙を流しながら酒を堪能する。そんな彼等にダインは呆れながらも、ミイネとゴブは酒のつまみまで用意してくれた。
あの後、ダイン達は正体を気付かれる事もなく逃げ出す事に成功し、その後の出来事はミイネによると色々と大変だったらしい。まずは侵入者を許した兵士達は叱りつけられ、それを捕まえる事も出来なかったファングや屋敷内の女囚人達も折檻を受ける羽目になったという。
現在は屋敷内を捜索して盗まれた物を確認しているらしいが、今の所はパールが酒を盗まれた事は気づかれていない。それも時間の問題だろうが、少なくともダインが盗んだという証拠は残していない。
「おう、坊主!!お前のお陰で俺達も自由に慣れたぜ!!ありがとな!!」
「若いの、また貸しが出来たな。この恩は忘れんぞ」
「別に言って……おっさんも爺さんも自由になれて良かったな」
「そうですね、ならこれからは本格的に僕達が外の世界へ抜け出す方法を考えましょうか」
マサルもドルトンも今回のダインの功績のお陰で解放され、二人はギルの元に厄介になる事になった。彼の配下に加われば仕事に困る事はなく、それぞれに適した仕事を割与えられるだろう。
これで後はグシャスに関してはパールが動いてくれれば脅威は無くなり、ギルの一強時代が訪れる。三巨頭のギルが囚人達の頂点に立てばもうグシャスだろうがガルルだろうが恐れる相手はいない。
「ギルさん、約束ですよ。ダインさんの手配書の件は忘れてないでしょうね」
「おう、当たり前よ!!俺の部下には全員にそこの坊主を狙うのを辞めるように通達しておいた!!兵士達の方も裏で話を通しているから少なくとも作業区ではその坊主を襲う奴等はいなくなった!!」
「という事です。良かったですね、ダインさん」
「あ、ああ……苦労した甲斐があったな」
「ギギィッ(よしよし)」
涙目を浮かべながらダインは作業区内とはいえ、こそこそと隠れながら行動せずに済む事に嬉しく思う。囚人なのに高額の手配書を張り出された時は生きた心地がしなかったが、これでもう逃げ回る必要はない。
「さてと……それじゃあ、これからの事を話し合いましょうか。ダインさんを助けるためにここまでは色々と大変でしたが、やっと余裕も取り戻せました」
「これからの事って……外へ出るための話か?」
「そうですよ。僕達の目的は忘れてませんよね?」
酒に酔う前にミイネはダインを引き連れ、部屋の隅の方で向かい合う。彼女の目的は外へ抜け出す事であるため、そのためにはどうしてもダインの力が必要不可欠だった。
「ダインさん、僕達の目的は外の世界の人間に気に入られ、誰かに買われてもらって外へ抜け出す事は覚えてますね」
「覚えてるよ。でも、そんな方法で本当に上手く行くのか?」
「確かに色々と不安はありますね。基本的に奴隷は購入される際、ダインさんが身に付けている服従の腕輪のような類の魔道具を装着されますからね」
「なら、僕達が外に出ても自由になれないのと同じじゃん!!」
「大丈夫です、その辺は僕が何とかします……問題なのはダインさんが外の世界の人間に気に入られるかです。試合で活躍して外の世界の人間の目に留まるという方法もありますが、この方法だと試合に出続けない限りはどうしようもありません」
闘技者として試合に参加し、活躍をすれば外の世界の人間の注目を惹く。そして注目を惹けば彼を購入しようとする貴族や商人も現れるかもしれない。しかし、この方法だと試合に出続けて注目を集めなければならない。
既にダインは新人の囚人でありながら有名な存在になりつつあるが、それでも外の世界の人間の注目を集めるには決定打を欠ける。それは彼が人間である事が問題だった。
「大抵の貴族や商人は囚人を購入する際は護衛目的です。だから基本的には獣人族の囚人を購入します。普通の人間と比べても運動能力も高いし、五感も優れてますからね。人間の兵士と獣人の兵士なら後者を選ぶのがこの国では当たり前です」
「何だよそれ……じゃあ、僕は誰も買ってくれないのか?」
「いいえ、ダインさんはまがりなりにも魔導士である事が重要なんです。この国では魔法を扱える人間は滅多にいませんからね」
獣人族は魔法を不得手としており、ダインのような魔導士のような人材は貴重だった。そこでミイネは彼が魔導士である事を大々的に示し、活躍させて外の世界の人間の目を惹く事を方法を考えてきた。
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