不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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世界の異変編

女は殴らない

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「ん、どうした?かかってこないのか?」
「……女を殴る趣味はない」
「は?何だそれは、男女差別は許さんぞ!!」
「どういう怒り方をしてるのよ……」


オウガの意外過ぎる言葉にゴウライは憤慨し、彼女の見た限りではオウガは腕が経つ武人である事は見抜いていた。一流の武人は相手の雰囲気のみでも力量を計れるが、ゴウライの目から見てオウガは只者ではない。

その一方でもう一人のアルドラの方もオウガの台詞を聞いて笑みを浮かべ、どうやら彼がシズネとゴウライを相手に戦う事はないと予測していたようだ。だが、オウガが戦わないとなるとアルドラ一人だけで相手にするつもりなのかとシズネは疑問を抱く。


(この女……何を考えているの?)


アルドラを睨みつけながらシズネは白百合を構え、魔刀術を発動させる準備を行う。もしもアルドラが怪しい行動を取れば瞬時に突き刺すつもりだが、そんな彼女に対してアルドラは心を読んだように笑みを浮かべる。


「それは止めておいた方が良いわ、貴女では私に敵わない」
「っ……読唇術を使えるのね」


自分の考えを読み取られたシズネは一瞬だけ驚くが、すぐにアルドラが「読唇術」の技能を覚えている事を察する。この世界では読唇術は唇の動きを見て何を話しているのか察するだけではなく、相手の考えを読み取る事も出来る。だが、あまりに習得が難しいため、覚えている人間は滅多にいない。

シズネは自分の考えを呼んだアルドラに対して警戒心を抱き、彼女は白百合を構えた。七魔将である以上はここで仕留めるべきであり、彼女はアルドラに攻撃を仕掛けようとした瞬間、地面に亀裂が走った。


「なっ!?」
「ぬあっ!?」
「ちっ……」
「私達は相手しないけど、その代わりにこの子が戦ってあげるわ」


地面に盛り上がった瞬間、即座に4人はその場を離れた。アルドラは背中から翼を伸ばして空を飛ぶとオウガは彼女の足を掴み、シズネとゴウライは急いで武器を構える。



――オァアアアアッ!!



地面の中から出現したのは「地竜」であり、亀の甲羅を想像させる岩山を背中に背負い、岩石の如く硬い皮膚に覆われた竜種が出現した。その光景を見たシズネは目を見開き、ゴウライの方は若干嬉しそうな声を上げる。


「おおっ!!地竜ではないか、久しぶりに見たな!!」
「喜んでいる場合じゃないでしょう!!どうしてこんな場所に……!?」


二人が地竜と相対するのは初めてではなく、かつて冒険都市を襲撃した個体と比べれば小さいが、それでも竜種の中では火竜や牙竜を上回る大きさを誇る。かつて冒険都市に地竜が現れた時は冒険者が総出で倒した相手だが、今回は援軍は期待できない。


「オォオオオオッ……!!」


地竜は足元を見下ろし、自分の前に立ち尽くすシズネとゴウライに視線を向け、敵と判断したのか咆哮を放つ。その迫力にシズネは気圧され、ゴウライは大剣を握りしめて身構える。

突如として現れた地竜にシズネは動揺を隠せず、どう考えてもアルドラが何かを仕掛けたに違いない。しかし、災害の象徴として恐れられる竜種を呼び出す力など聞いた事も見た事もない。


(あの女、何をしたというの……!?)


白百合を構えながらシズネは地竜の様子を伺うと、この時に地竜の目元が怪しく光り輝いている事に気付き、その様子を見てある予想を立てる。それは地竜がサキュバスの「魅了」の能力によって操られているのではないかという考え方だった。


(まさか……知的生物以外の存在に魅了したというの!?)


基本的にはサキュバスが扱う魅了の能力は人族以外の存在、つまり魔物の類には通用しない。ゴブリンなどの知能が高い存在ならば通じる場合もあるが、その他の生物には殆ど効果がない。せいぜい見惚れて動けないぐらいの効果はあるかもしれないが、まさか地竜を虜にして操れるほどの力を持つなど普通に考えれば有り得ない。

だが、七魔将であるアルドラの力は並のサキュバスの比ではなく、彼女は魅了を使用すればどんな生物であろうと「異性」ならば従えさせることが出来る。そして彼女の力はそれだけではなく、虜にした生物を自分の命令に絶対服従させる力を持っていた。


「さあ、始めなさい。あの二人を殺さない程度に痛めつけるのよ」
「はっ!!これは楽しめそうだな!!」
「……まさかこいつとまた戦う事になるとは思わなかったわ」
「オァアアアアッ!!」


地竜に対してシズネとゴウライは各々の武器を構え、動き出す。それに対してアルドラとオウガは上空から様子を伺い、彼女達が何処まで粘るのか見届ける――



※書籍版に伴い、土竜は地竜になりました。
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