不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

森の屋敷へ

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「――よし、戻ってこれた!!」
「うわっ……ここ、何処だ?」
「遺跡……のようですが、私達が先ほどまでいた場所とは違いますね」


転移装置を起動させ、大陸に存在する深淵の森の古代遺跡へとレナ達は転移に成功した。この場所には何度かレナも立ち寄っているため見間違えるはずがなく、レミアとハルナは初めて訪れた場所なので戸惑う。

無事に大陸へと帰還を果たしたレナは喜び、まずは身体を休めるのも兼ねて自分が育った屋敷の事を思い出す。この森にはレナが幼少期に育った屋敷が存在し、そこにまず向かう事にした。


「よし、二人とも俺が育った屋敷まで移動しよう。どっちにしろ、足がないと今日中に森を抜け出すのも難しいだろうし……」
「屋敷……まさか、レナ王子が育ったという例の屋敷の事ですか?」
「何だそれ、何処にあるんだ?」
「まあ、その辺は歩きながら話すよ……ここら辺は魔物も現れるから気を付けなよ」


レナは屋敷に向かう途中で二人に説明を行い、バルトロス王国では深淵の森に屋敷を築き上げ、そこの場所に表舞台には出る事が許されない王家の関係者を育てていた事を話す。レナの場合、世継ぎとして生まれた彼だが身に付けていた職業が「不遇職」だと判明し、赤ん坊の頃に母親のアイラと共に屋敷に送り込まれた。



――王子として生まれたにも関わらず、レナは不遇職という理由で世継ぎとは認められず、実の父親から捨てられた。しかし、仮に父親の身に何か起きた時や新しい世継ぎが生まれるまではレナが王位継承する権利を持っているため、処刑する事は出来ない。

過去にも歴史上でレナと同じような境遇の王族は深淵の森に存在する屋敷に送り込まれ、そこで生活を余儀なくされる。どうして魔物が現れるような危険な場所に屋敷を作り出したのかというと、理由としては魔物の存在が屋敷への侵入者を阻み、逆に屋敷から逃げ出す事も許されないからである。

まさか危険な魔物が巣食う森の中に王族関係者が暮らす屋敷があるとは誰も考えず、実際に屋敷の存在は王国の人間でも一部しか知らされていない。大将軍であるレミアもレナが脱走した後にその話を聞かされた。



「ミドル大将軍から話は伺っていましたが、まさか本当に先王が生まれた赤子をそんな場所に送り込んだなんて……」
「酷い父ちゃんだな……」
「でも、俺としては都合が良かったけどね。別にいっぱい世話をする人いたし、不自由は感じなかったよ」


屋敷には大勢の使用人が暮らしており、母親のアイラや姉代わりのアリアも居たのでレナは寂しさを感じた事はない。むしろ環境的にはレナにとっては最高だった。

人が暮らす場所に囲まれた屋敷だったらレナは抜け出す事も難しく、特訓も出来なかった。幼少期のレナはアイリスの指導を受けながら様々な技能を覚えるために訓練を行い、時には屋敷の外の魔物と戦ってレベルを上げる事もあった。そういう意味ではレナにとっては自分が強くなるための最高の環境と言える。


「ですが屋敷に暮らしていた使用人はたしか今はもういないのでは……冒険都市のレナ様様の屋敷に移り住んだと聞いていますが」
「うん、でもあの屋敷の方も管理する人が残っているはずだよ。だからそこに行けば大丈夫だと思う」
「ふぁあっ……今日は色々とあって疲れたから、休みたいぜ……」
「そうですね……」


ハルナは眠たそうな表情を浮かべ、レミアの方も顔色が悪かった。今日は色々な出来事があったため、流石に3人とも疲れていた。屋敷へと向かう途中、レナは不意に懐かしい場所を通る。


「あ、ここ……」
「ん?どうかしたのか?」
「滝が気になるのですか?」
「いや、昔……ここで世話になっていた事を思い出してね」


レナは森の中にある滝を見ると、昔の事を思い出す。屋敷から逃げ出した後、レナはウルと出会い、滝の裏の洞窟の存在をアイリスに知らされる。この滝の裏には元々はウルを育てていた森人族の女性がいたらしいが、レナが訪れた時には既に森人族は死亡し、彼女が残した滝の裏の洞窟にレナは住居として利用して暮らし始めた。

最初の頃はウルと共に森の中で暮らし、外の世界へ行く事は出来なかった。屋敷を抜け出した後のレナは指名手配されてしまい、外の世界に出る事も出来ず、指名手配が解除されるまでウルと共にこの森の中で暮らす。その生活の中でレナは初めて友達になった魔物の事を思い出す。

ウルやアイラが大切な存在なのは違いないが、レナにとって二人は家族であり、友達とは違う。レナが生まれて初めて出来た友達は人間ではなく、力が弱くて群れからはぐれて一人ぼっちで生活していた子供のゴブリンだった。ゴブリンはオークに襲われていた所をレナに偶然救われ、それ以来にゴブリンはレナに懐く。

時々は食べ物を持ってきてはレナに渡してくるため、レナもゴブリンに食料を渡すと、奇妙な関係を築く。ゴブリンは定期的にレナの元へ訪れ、食糧交換を行う。ただそれだけの関係だったが、ある時に悲劇が襲い掛かった。それはレナの住処にしていた住居に赤毛熊が襲い掛かり、それを知ったレナは赤毛熊を討伐しようとしたが、あと一歩という所で油断してやられてしまう。

絶体絶命の窮地に彼を救ったのがゴブリンであり、レナに襲い掛かろうとした赤毛熊にゴブリンは飛び掛かった。結果から言えば赤毛熊はゴブリンを殺し、それを目撃したレナは無我夢中に赤毛熊を襲い掛かり、殺した。結局はレナはゴブリンに救われたが、ゴブリンを死なせてしまい、その事は今でも忘れられない。



後にレナはゴブリンの墓を作り、もう二度と誰も犠牲にしないために彼は強くなることを誓う。今のレナが生きているのは友達のゴブリンのお陰であり、レナは後で必ず墓参りに向かう事を決めた――
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