不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,411 / 2,090
真・最終章 七魔将編

分断

しおりを挟む
「ティナ、何処に逃げたか分かる?」
「えっとね……多分、あっちの方!!」
「あっちの方というと……外ですね」


ティナは瞼を閉じて意識を集中させると、ギルドの建物を取り囲む鉄柵の向こう側を指差す。どうやら既にアルドラは地中を移動してギルドの敷地の外に移動しているらしく、この時にハルナはオウガが抜け出す際に破壊した鉄柵を指差す。


「なあ、ここからなら外に出られそうだぞ!!早く追いかけよう!!」
「どうしてここだけ鉄柵が……」
「その説明は後でするから……今は追いかける事に集中した方がいいと思う」
「ウォンッ!!」


オウガは逃げ出す際に彼は内側から鉄柵を破壊しており、この場合はギルドを取り囲む鉄柵に設置された結界石は発動しない。ちなみにウル達は鉄柵を跳び越えて中に侵入してきたが、彼等が入り込んで来たのに結界石が発動しなかったのはマリアのお陰である。

ウルが普段から装着している王冠のような形をした特殊な首輪には、マリアが与えた特別な魔石が嵌め込まれている。過去にレナを迎えに来たウルが鉄柵を跳び越えようとして結界石が発動して大変な事態に陥った事故があり、この時にマリアはレナのペットであるウルだけは中に入り込めるように彼の王冠に特殊な細工を施してくれた。


「アンジュちゃんとサーシャちゃんとバルさんはウルちゃんに乗せたよ!!」
「よし、なら俺達も行こう!!」
「ですが気を付けてください!!まだアルドラの洗脳が解かれていない者達も外にいるはずです!!もしも遭遇すれば……」
「今は考える暇はない!!急いで追いかけよう!!」
「よっしゃあっ!!」


ハルナは鉄柵を掴むと、彼女は力ずくでオウガが逃げ出す時に捻じ曲げた鉄柵を更に広げてナイ達は敷地の外へ抜け出す。この時にレナはギルドに侵入者が訪れないように見張りを任せたゴンゾウと、マリアの部屋の中でスラミンに治療を任せたミレトの事は気がかりではあったが、ここはアルドラを追跡する事を優先する。


(あの二人なら大丈夫のはず……今はアルドラを追いかけないと!!)


アルドラを倒さなければ洗脳された者達は完全には解放されず、一刻も早く彼女を見つけ出して始末するためにレナ達はティナの魔物使いの能力を頼りに後を追う――





――鉄柵からレナ達が抜け出した後、しばらくすると敷地内にオウガが姿を現す。彼はゴンゾウを倒して中に入り込むと、戦闘の痕跡を確認して既にレナ達が屋敷にいない事に気付く。


「ちっ……あの小僧に手間取り過ぎたか」


この場所にてオウガは強い気配を感じ取ったが、破壊された鉄柵を確認して既に敷地の外に抜け出した事を知る。オウガは後を追いかけようとした時、奇妙な気配を感じて彼は振り返った。


(何だ……この気配は?)


オウガが振り返った先には破壊された窓が存在し、彼は建物の中から不穏な気配を感じ取って窓に向けて飛び込む。そしてオウガの視界にはスライムを枕代わりにして眠る少年の姿が映し出された。


「すぅっ……すぅっ……」
「ぷるぷるっ……!?」
「……何だと?」


部屋の中に入って早々にオウガは床に倒れている少年ミレトと、彼を心配するように枕代わりになったスライムのスラミンの姿を見て戸惑い、自分が感じ取った気配の正体がこんな小さな子供である事に動揺する。

意識を失っているミレトと彼に寄りそうスラミンの姿を見てオウガは舌打ちし、気絶している人間(しかも子供)を痛めつける趣味はなく、彼は再び窓から外へ飛び出そうと身を乗り出す。だが、跳び越える寸前にオウガは少年が手にしている槍の正体を思い出す。


「これは……ロンギヌスか?馬鹿な、どうしてこの小僧がこの槍を……」


ミレトが所有するロンギヌスを見てオウガは衝撃の表情を浮かべ、彼がまだ石像にされる前の時代にも同じ物を見かけた事がある。ロンギヌスを目にしたオウガは少年の元に近付くと、スラミンが警戒する様に身体を震わせる。


「ぷるるるんっ!!」
「……スライム如きが、それで俺から守っているつもりか?」
「ぷるんっ!?」


スラミンはミレトを守るためにオウガに向けて飛び跳ねるが、それに対してオウガは左手を伸ばすとデコピンだけでスラミンを弾き飛ばす。オウガの攻撃を受けたスラミンは派手に部屋の中を飛び回り、やがて勢いが止まった時には目元をぐるぐると回して鳴き声を上げる。


「ぷるぷるぷるっ……」
「邪魔をするな、弱者は弱者らしく強者に従え」
「うっ……」


オウガはロンギヌスを確認するためにミレトに手を伸ばすが、意識を失っているにも関わらずにミレトはロンギヌスを手放さない。気を失おうと武器を手放さない彼の姿にオウガは内心では感心するが、それでも彼はロンギヌスをミレトから奪い取ろうとした。

だが、オウガがロンギヌスに触れようとした瞬間にロンギヌスが光り輝き、触れようとしたオウガの手の方が弾かれてしまう。それを確認したオウガは衝撃の表情を浮かべ、聖剣と同様に魔槍ロンギヌスは正当な所有者以外の人間には触れる事はできない。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。