不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,421 / 2,090
真・最終章 七魔将編

オウガの目的

しおりを挟む
「オウガ……どうして?」
「勘違いするな、別にお前を救うために来たわけではない。それにしてもまさか人間如きにやられるとはな」
「くっ……」


アルドラは自分の今の姿をオウガに見られた事に屈辱を覚えるが、バルの大剣を片手で受け止めるオウガを見て心強い味方が戻ってきてくれたとも思う。バルの方は大剣を掴まれた状態でびくともせず、どれだけ力を込めようとまるで万力のような握力で止められて微動だにしない。


(何だい、この馬鹿げた力は……!?)


バルも人間の中では腕力に優れた剣士ではあるが、オウガに掴まれた大剣はどれだけ彼女が力を込めようと引き剥がせず、それどころか指に掴まれている刃の部分に罅割れが生じる。


「この程度の武器では俺を倒せん」
「なっ!?」
「危ない!!」
「わあっ!?」


オウガは力ずくで大剣を握りしめて破壊すると、それを見たバルは驚愕の声を上げてコトミンは咄嗟にティナを庇う。大剣の破片が周囲に散らばり、その様子を見ていた者達は冷や汗を流す。

この状況下でオウガが現れた事は正に最悪としか言いようがなく、この状況でまともに戦えるのはバルだけである。ハルナの方はいつもの彼女ならば真っ先にオウガに殴り掛かっていてもおかしくはないが、現在の彼女は疲れ切った表情で膝を着いて動かない。


「はあっ、はあっ……」
「……さっきまでの威勢はどうした小娘?」
「このっ……くぅっ!?」


ハルナはオウガの挑発の言葉に反射的に立ち上がろうとしたが、身体の方は言う事を聞かずに膝を崩す。ここまでの戦闘でハルナも限界を迎え、その様子を見てオウガは抱えていたミレトを放り投げる。


「受け止めろ」
「うわっ!?ミ、ミレト!?あんた、ミレトに何を……」
「気を失っているだけだ……その小僧が起きたら伝えろ、いずれ貴様を殺すとな」
「何だと……待てっ!!」


ミレトをバルに投げ渡したオウガはアルドラの元へ歩き、倒れている彼女を片腕で抱えるとその場を離れようとした。だが、その様子を見ていたハルナは止めようとするがバルは咄嗟に彼女の肩を掴む。


「駄目だ!!行かせてやりな!!」
「な、何を言ってるんだ!?あいつらを逃がすわけには……」
「いいから止めるんだ!!今のあんたとあたしにあいつらを倒せると思ってるのかい?あいつらが退くならここは見逃すしかないんだよ……!!」
「……悔しいけど今はどうしようもできない」
「ううっ……怖かったよ」


残念ながらアルドラはともかく、オウガの方は今のバルたちが相手にするのは分が悪い。そのためにここは彼等を見逃すしかなく、立ち去っていくアルドラとオウガを見届ける――





――試合場を離れていくアルドラはオウガに抱えられた状態で無言で過ごし、彼の行動に対してアルドラは疑問を抱く。彼が女には何があろうと直接的に手を出さない事は知っているが、それでもミレトをわざわざ連れてきてバルに任せた事に彼女は違和感を抱く。


「オウガ……貴方、あれは何の真似?」
「…………」
「あの少年を生かした理由、それにわざわざ私を助けに来るなんて何を考えているの?」
「……お前の力が必要だからだ。それ以外に俺がお前を助ける理由などない」


アルドラはオウガの発言に疑問を抱き、今までアルドラはオウガと協力体制を組んでいたが、彼が自分の力を必要だと断言した事など今までに一度もなかった。しかし、オウガは自分の目的のどうしてもアルドラの力を借りる必要があった。


「お前から渡された毒……あの小僧にも飲ませてやった。あの毒を飲ませれば小僧はお前の意のままに操れるはずだ」
「毒……まさか、あれを飲ませたの?どうしてあんな子供に……」
「子供とはいえ、あの呪われた魔槍に気に入られていた。何時の日かこの俺を脅かす存在として成長するかもしれん……その時が来たらお前にも協力してもらうぞ」
「……そう言う事ね」


オウガの言葉を聞いてアルドラは彼が自分の事を救ったのはあくまでも自分のためであり、決してアルドラに対して仲間感情を抱いた上での行動ではない事を悟る。しかし、それを知ってアルドラは逆に安心した。

お互いに利用する立場となった事でアルドラは安心感を抱き、同時に彼女はこれ以上に冒険都市に潜むのは危険だと判断すると、彼女はオウガに一刻も早く都市を離れるように促す。


「オウガ、ここは離れましょう……癪だけど私達はここにいられないわ」
「ほう、珍しく弱気だな。配下にした奴等はどうする?奴等も永遠にお前の操り人形というわけでもあるまい」


アルドラの血を分け与えられた存在は彼女の命じるままに従うが、実を言えば時間経過によって血の効力が弱まる。アルドラが側にいれば効力が弱まる事はないが、彼女と離れて一か月も経過すれば効力はほぼ完全に失われてしまう。


「勿論、連れて行ける子は連れて行くわ。貴方も同行してもらうわよ、今度は勝手な行動は許さないわ」
「ちっ……」


冒険都市から脱出するためにアルドラはオウガと共に内密に抜け出し、この時に彼女は冒険都市の冒険者の中でも有能な人材を引き抜いて退散しようとした時、ここで二人の前に思いもよらぬ人物が現れた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。