不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

文字の大きさ

大中小

1,557 / 2,090

真・最終章　七魔将編

海の生物

しおりを挟む

――深淵の森の遺跡に転移したレナ達は森の中を探索し、食材となる魔獣を探す。この森はレナもウルも何年も暮らした場所であり、狩猟する事は慣れていた。

「見つけた！！行け、ウル！！」
「ウォオオンッ！！」
「フゴォオオオッ！？」

森の中でボアを発見したレナはウルに指示を出すと、ウルは即座にボアに追いついて鋭い爪を放つ。ウルの一撃を受けたボアは背中から血飛沫を上げながら倒れ込む。それを確認したレナはウルの元へ駆けつけて褒める。

「よしよし、よくやったぞ。こいつはご馳走だな」
「ウォンッ♪」
「あら……貴方達もここに居たのね」
「ボアを仕留めたのか、流石だな」
「ぷるぷるっ」

レナがウルと共にボアを狩る事に成功すると、他の者たちも姿を現す。シズネは数匹の一角兎を仕留めたらしく、縄で縛り付けて運んでいた。ゴンゾウの方は両肩にオークの死骸を持ち上げ、どうやら他の者も狩猟に成功していたらしい。

「二人とも大収穫みたいだね」
「ああ、この森には俺もちょくちょく訪れているからな」
「ヒトミン君も協力してくれて助かったわ。この子、隠れている魔獣の位置を教えてくれるから見つけるのは楽だったわ」
「ぷるんっ(←誇らしげな表情を浮かべる)」

スライムの感知能力を生かしてヒトミンも狩猟に協力してくれたらしく、シズネは彼の頭を撫でる。これで合流していないのはコトミンだけだが、彼女は川に潜って魚を捕獲しているはずだった。

人魚族であるコトミンは主に魚を主食としており、彼女は自分が食べる分は自分で取りに行く。他の者と合流できたのでレナはコトミンがいるはずの滝へ向かう。ちなみに彼女が魚を取っている場所はレナが隠れ家にしていた例の滝である。

「コトミンの方はどうかな。鮫かタコは釣れたかな？」
「何で川で鮫とタコが釣れるのよ……」
「鮫といえば前にレナに懐いていた魚人が居たな。元気にしているだろうか」
「そういえばいたね」

レナがゴンゾウと共に監獄都市に脱出した後、コトミンが魚人と呼ばれる外見は鮫にそっくりな姿をしていた。色々とあって魚人はレナ達と一時期共に行動していたが、今は別れて何処にいるのかも分からない。

「シーク(魚人)の奴、元気にしているかな」
「人間に釣られて食べられていないといいがな」
「何の話をしているのよ……ほら、着いたわよ」
「ぷるるんっ？」
「クゥ～ンッ？」

滝に到着するとレナ達はコトミンの姿を探すが、彼女の姿は見当たらない。しかし、川原の方にはコトミンが捕まえたと思われる魚が焚火で焼かれていた。どうやら彼女はここで食事を取ろうとしていたらしいが、肝心のコトミンの姿が見当たらない。

「あれ、おかしいな……コトミン？何処にいるの？」
「この魚、まだ焼いたばかりのようだな……」
「という事はさっきまでコトミンがここにいたわけね」

焚火で焼かれている魚は先ほど捕まえたばかりらしく、コトミンがここに居た事は間違いない。彼女以外の人間がここに訪れて魚を焼いている可能性もあるが、この深淵の森は魔物が巣食う危険地帯であるため、冒険都市の冒険者でさえも滅多に近づかない。

レナ達以外にこの森に人がいるとは思えず、まだ川の中に潜っているのかとレナ達は水面を覗き込む。すると滝壺の方から泡が上がり、それを見たレナは水中に何かが潜んでいる事に気付く。

(コトミンが潜ってるのか？いや、それなら声をかけた時点ですぐに出てくるはずだ……何だ！？)

反射的にレナは背中に抱えている退魔刀に手を伸ばすと、滝壺の方から大きな影が出現し、流れ落ちる滝をまるで鯉の滝登りのように移動して姿を現す。

「シャアアアアッ！！」
「さ、鮫！？」
「レナ、危ない！！」
「くっ！？」

滝から出現したのは巨大な鮫のような生物であり、レナに目掛けて大口を開いて噛みつこうとしてきた。それを見たゴンゾウとシズネは彼を助けようとするが、レナは退魔刀を抜いて噛みつこうとしてくる鮫に対して刃で防ぐ。

「アガァッ！！」
「うわっ！？」
「レナ！！」
「離れなさい、この鮫！！」

レナに噛みつこうとした鮫は退魔刀の刃に噛みつき、そのまま彼を押し倒す。退魔刀の刃に牙を食い込ませながら鮫はレナを睨みつけ、即座にゴンゾウとシズネは彼を救おうとした。しかし、二人が動く前に滝壺から他にも影が出現し、今度は巨大なイカとタコが出現して二人に襲い掛かる。

「「ジュルルルッ！！」」
「ぬあっ！？」
「た、タコ！？いやぁっ！？」
「ぷるるんっ！？」

イカはゴンゾウに向けて鋭く尖った先端部分を突き刺そうとしてくるが、ゴンゾウは咄嗟に側面に回って抑えつける。一方でシズネの方はタコを見た瞬間に悲鳴を上げ、慌てて距離を取った。どうやら彼女はタコは苦手らしく、ヒトミンも慌てふためく。

何故か川の中から現れた海の生き物たちにレナ達は追い詰められ、３人は３匹の魔物なのかどうかもよく分からない生き物に追い詰められてしまう。レナはこの状況を打破するため、自分を噛み付こうとする鮫に対して魔法を使おうとした。

しおりを挟む