不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

上には上がいる

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――レナとゴウライが激闘を繰り広げた頃、ホムラとシズネも帝都に辿り着いていた。二人はレナとゴウライが戦った建物からそれほど離れていない位置に存在し、既に他の仲間達の姿を視認していた。


「……どうやらレナが勝ったようね」
「馬鹿な……あのゴウライに勝っただと」
「そんなに驚く事でもないでしょう。レナの強さは貴方も良く知っているでしょう?」


ホムラはレナがゴウライを打ち倒した事に信じられない表情を浮かべるが、かつてレナは闘技祭でゴウライに勝利している。ホムラ自身もレナに敗れているため、彼がどれだけ強いのかはよく知っていた。しかし、それでもゴウライに正面から挑んで勝つ剣士が居るなど思いもしなかった。

ゴウライの強さはホムラは認めており、彼女でさえもゴウライを相手にすれば勝てる保証はない。そんな彼女にレナが打ち勝ったという事実にホムラは悔しく思い、自分よりも上の実力者が何人もいる事にホムラは我慢ならない。


(何なんだこいつらは……!!)


六聖将の中でも特別な立場である西聖将の位に就いたホムラだが、彼女はヨツバ王国の中では自分に勝る人間はいないと自負している。実際に他の六聖将と手合わせという名目で戦った事はあるが、一度たりとも彼女は敗北した事がない。

しかし、同じくダークエルフの里の出身のゴウライには彼女は一度も勝った事はない。尤もゴウライと戦ったのは彼女が今よりも若く未熟な頃だが、仮に今のゴウライとホムラが戦っても確実に勝てる保証などない。


(くそっ……私の力はこれが限界なのか?)


強くなるためにホムラは幼少期から厳しい訓練を重ねてきた。毎日のように魔物と戦い続け、魔刀術を極めたといっても過言ではない。それにも関わらずにホムラよりも強い戦士は少なくとも4人は存在する。

ゴウライ、シズネ、レナ、そして自分を追い詰めたラストの事を思い返し、彼女にとってはこの4人がいる限りは自分は「最強」を名乗れない事に悔しさを抱く。誰よりも強くなる事を誓って生きてきた彼女にとって自分よりも上に立つ人間は妬ましい。


「どうしたの?早く合流するわよ」
「黙れ、私に指図するな!!」
「何をそんなに怒っているのよ?」


シズネの言葉にホムラは反発し、妙に不機嫌な彼女にシズネは眉をしかめる。やがて彼女を無視してシズネは先に向かう。


「こんな場所で拗ねても何も変わらないわよ」
「ちっ……」


ホムラを置いてシズネは先に向かうと、そんな彼女に対してホムラは拳を握りしめる。今の彼女ではシズネ一人にすら勝てない事は理解しており、改めてホムラは自分の弱さを認識した。


(私は……こんなにも弱かったのか)


ダークエルフの里の中ではホムラに敵う存在はおらず、ヨツバ王国内でも彼女に勝る存在は一人もいなかった。しかし、ヨツバ王国を離れると彼女を越える存在など何人もおり、その事実を知った彼女は悔しさと同時に負けん気を覚える。

いくら自分よりも強い存在がいようと、彼女は更にその存在を越えるために強くなればいいと考え直す。今よりも力を身に付けるためにホムラは決意し、先を歩くシズネに告げた。


「他の奴等に伝えろ!!私はここへ残る!!」
「……何を言っているの?」
「いいからそう伝えろ!!」


シズネはホムラの言葉に驚いて振り返るが、彼女は既に姿を消していた。慌ててシズネはホムラを探すが、恐らく彼女は自分が通過した黒門を通って別の場所に向かったと思われた。


「ここに残る?いったい何を考えているの……まあ、いいわ」


消えたホムラを追う事をシズネは諦め、一先ずは自分だけでも合流する事を決めた。シズネとしてもホムラの気持ちが分からないでもなく、彼女はかつてのシズネと同じだった。ゴウライを倒すためにシズネは手段を択ばず、強くなるためならどんな事もした。

幼少期に母親と共に追い出され、母親が死んだ後は王妃に引き取られて彼女から雪月花を受け取った。その後は彼女の元で腕を磨きながら生きていき、そしてレナ達と出会った。最初はレナ達を監視する目的で近付いたが、やがて彼等と本当に絆が芽生えた事でシズネは王妃を裏切ってレナ達と共に生きていく事を誓う。

剣術を磨く事だけではなく、他の人間と力を合わせる事でシズネは精神的にも成長した。そのお陰で彼女は雪月花を使いこなせるようになり、最強の魔剣剣士となった。だが、ホムラには部下と呼べる存在は居ても仲間という存在はおらず、彼女は一人で強くなろうとする。


(一人の力で強くなるのは限界があるわよ……)


ホムラが自分の意思で戻ってくる事を祈り、彼女がこの場所に残る事を一応は他の仲間に伝えるためにシズネはレナ達の元へ向かう――





――その頃、ホムラと同様に強さを求めるハルナは地上の世界で激しい訓練を課していた。彼女は聖剣カラドボルグの力を我が物にするため、地上で最も危険な地域に足を踏み入れていた。
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