不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,746 / 2,090
真・最終章 七魔将編

海戦

しおりを挟む
魔力切れによってレナの退魔刀の蒼炎の出力が弱まった結果、失速した彼を飲み込もうと炎龍は顎が張り裂けないばかりに口を開く。しかし、炎龍に飲み込まれる前にレナの元に凄まじい速度で移動する人影が存在した。


『とうっ!!』
『うわっ!?』


レナを助け出したのはコトミンだった。地上で別れたはずの彼女がここにいる事にレナは驚くが、コトミンは凄まじい勢いでレナを抱き寄せた状態で浮上する。その移動速度は炎龍さえも追いつけず、瞬く間に彼女は距離を離す。


『コトミン!!もう来てたの!?』
『皆、もう準備はしてる』


コトミンは事前にレナが海底の遺跡へ移動する事を知っており、彼女は他の者達も準備を整えている事を知らせる。二人は海底を抜け出すと、海上に浮かぶ巨大な船を確認した。その船の正体はホネミンが開発した潜水船だった。


「到着!!」
「ぶはぁっ!?」


海上に浮上するとコトミンは勢いのままレナを担いで潜水船の甲板に着地する。レナは魔鎧術を解いて甲板に倒れ込むと、そこには既に他の仲間達の姿もあった。


「レナ!!大丈夫か!?」
「やっぱり生きてたか坊主!!」
「心配してたのよ」
「また一人で無茶をして……貴方はいつもそうよ!!」
「皆……良かった、無事だったのか」


甲板には炎龍討伐のために同行していた聖剣所有者と同行者の姿も存在し、更には冒険都市で別れた仲間達も集まっていた。実を言えば冒険都市を離れる前にマリアは転移魔法で他の者達も海へと転移させていた。

現在の海上には複数の大船が存在し、そこには冒険都市の面々も集まっていた。どうして彼等がここへ待機しているのかというと、それはレナの提案で炎龍を海に転移させるという話を聞いて万全の準備を整えていたからである。


「……む、婿殿、言われた通りに炎龍を倒す準備は整えているぞ」
「王様……いや、お義父さん」
「ぐぬぬっ……」
「父上、落ち着いて下さい。今は争っている場合ではありません!!」
「そうですわ!!ここは国など関係なく、皆で力を合わせて戦う時ですわ!!」


船の中にはヨツバ王国が保有する船も存在し、この船にはヨツバ王国の戦力が乗り込んでいる。ちなみに船の船首には外見デザインは若かりし頃のデブリの像がボディビルようなポーズを取っている姿の銅像が建てられていた。


「な、何だこの銅像……何処の邪神だ!?」
「ヨツバ王国はこんな銅像の髪を崇拝しているのか……」
「恐ろしい国だね……」
「……バルトロス王国に帰順しようかしら」
「誤解ですわ!?それは邪神像ではありません、若かりし頃の父上ですわ!!」


銅像を見た途端にダイン、ゴンゾウ、バルは退き気味になるとマリアも視線をあからさまに逸らす。慌ててノルンが否定するが、悠長に話している余裕はなかった。



――オァアアアアアッ!!



話し込んでいる間に遂に炎龍が海上へ浮上すると、海面に振動が走って船が揺れる。この時にレナは潜水船を操縦しているのはホネミンか気になり、彼女も既に船に乗り込んでいるのかを尋ねる。


「おっとと……この船はホネミンが運転してるの?」
「いいえ、私はここにいますよ」
「「ぷるぷるっ」」
「うわっ!?何でいるの!?」


ホネミンは何故か甲板でスライム達を脇に抱えた状態で待機しており、状況的に考えて彼女も先ほど転移してきたらしい。しかし、それならば現在の潜水船船は誰が動かしているのかとレナは疑問を口にする前に炎龍が攻撃を開始した。


「アガァアアアッ!!」
「やべえっ!?またとんでもないのを撃ってくるぞ!!」
「面舵いっぱい!!避けてください!!」


甲板に取り付けられている伝声管にホネミンは声をかけると、潜水船は急速に右に傾いて進路を変えた。その結果、炎龍が放った熱線の回避に成功する。どうにか事前に船を動かした事で避ける事には成功したが、船を動かしているのは何者なのかとレナは気になった。

これまでに潜水船を動かせるのはホネミンだけだと思っていたが、彼女以外に巧みに船を操作する技術を持つ者がいたのかとレナは不思議に思う。そこで彼はホネミンの元に近付いて伝声管に耳を近づけると、その声を聞いて驚く。


『ぷるっくりんっ!!』
「いや、お前が運転してんのかい!!」
「副船長ですから」


潜水船を操作しているのがホネミンが飼っているペットのプルミンだと判明し、どうやって操縦席で運転しているのかは不明だが、彼の巧みな船操技術のお陰で炎龍の攻撃を回避できた。しかも船はそのまま動き出し、炎龍の側面へと移動を開始した。


「儂等も動くぞ!!風の精霊よ、我等に力を!!」
「精霊の力を借りて船を動かせ!!」


デブリたちが乗り込んでいる船はどうやら風の精霊を利用して風の力で動かすらしく、潜水船とは反対方向に移動を行う。左右に船が分かれた事で炎龍はどちらから狙うか迷い、その間にレナ達は戦闘準備を整える。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。