不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,779 / 2,090
蛇足編

緑の怪物

しおりを挟む
「どうかしました?」
「いや、あそこにゴブリンが……」
「え?何処ですか?」
「あれ……逃げたか?」


ホネミンが見た時はレナが見つけたゴブリンらしき生き物は消えており、彼は不思議に思ったが今は離れる事を優先した。この現場を他の人間に見られたら色々と面倒臭くなり、早々に塔の大迷宮へ向けて出発する事にした――





――レナ達が去った後、馬車の元に先ほど彼が見かけたゴブリンのような生き物が訪れた。そのゴブリンに酷似した生き物は馬車に倒れた人間達を見下ろし、酷く怒った様子で見下ろす。


「フゥッ……フゥッ……!!」


その生き物は馬車が転倒した際に散らばった荷物に視線を向け、その中から自分の身体を覆い隠せそうなマントを回収する。他には巨人族が扱う大きさの鉈を見つけ、それを手にするとその場を立ち去る。

去り際に生き物は馬車を振り返り、鼻を鳴らす。実を言えば馬車を転倒させたのはこの生き物であり、自分を捕まえて売り物にしようとした者達に復讐を果たす。


「俺は……魔物じゃない」


生き物は人語を話してその場を離れ、この時に彼は脳裏にレナ達の姿を思い浮かべる。馬車を転倒させた後、生き物は腹を空かせて獲物を求めて一時的に馬車を離れた。だが、戻ってきた彼は馬車の元に人間がいる事に気が付く。

最初にレナを見た時、生き物は異様な恐怖を覚えた。レナは一見は人間の少年にしか見えないが、実際はそこいらの魔物よりも恐ろしい存在だと生き物は見抜いた。彼は今までにない恐怖を覚え、即座に逃げ去ろうとした。その判断は正しく、もしも生き物がレナに襲い掛かっていたら返り討ちにされていただろう。

もう二度とあのような存在と出くわしたくはないと思いながら生き物は立ち去るが、彼は後の時代にレナと再会する事になる。しかも最悪な形の出会いで無惨な死を遂げる事は今の彼には知る由もない――





――冒険都市を離れると、レナは都市を出る前に購入した道具でキャンプを行う。本当なら冒険都市で一泊したい所だが、知り合いと顔を合わせる事を考慮して外で一晩過ごす事になった。


「レナさんは料理が美味いですね」
「調理の技能も持ってるから」
「ウォンッ!!」
「ぷるぷるっ(うまうま)」


昼間の間に遭遇した食用の魔物の肉を利用し、今夜は豚汁を作った。運がいい事にオークを発見したお陰で今日の晩御飯は何とかなったが、問題なのはここから先だった。


「塔の大迷宮に向かうとなると地竜の巣を進む事になるのか……地竜に見つかったら面倒だな」
「大丈夫でしょう。地竜なんて滅多に遭遇しませんし、余程派手に騒がなければ平気ですって」
「ぷるぷるっ(←怯える)」


プルミンは地竜と聞いただけで震え上がり、彼(?)は元々はただのスライムだったがサンドワームに丸飲みにされ、胃液を吸収した事で今の姿になった。その後は彼を食べたサンドワームが地竜に食べられた際に偶然にも脱出し、ホネミンと出会う。


「プルミン、怯える必要はないよ。地竜に見つかってもウルが逃げ切ってくれるから」
「ウォンッ!!」
「さてと、そろそろ寝ましょうか。今日は色々あって疲れましたし……あ、私が可愛い殻って襲わないでくださいね」
「大丈夫、俺もウルも人肉は食べないから」
「餌として見られている!?」


レナとホネミンは就寝し、見張りに関してはウルとプルミンがいるので大丈夫だと判断した。ウルの嗅覚とプルミンの感知能力ならば誰かが近付いたら必ず気付く事ができるため、ゆっくりと休む事にした。

しばらくの間は静寂の時が訪れるが、不意にレナは目を覚まして身体を起き上げる。どうにも寝付けない彼は空間魔法を発動させてオリハルコン製の大剣と長剣を取り出す。こちらは遺跡を守護していた戦人形の武器を改造して作り上げた代物だが、やはり退魔刀や鏡刀と比べると性能はかなり落ちる。


(この二つの武器、もうちょっと何とかできないかな……)


アダマンタイトで作り上げた退魔刀とあらゆる魔法を跳ね返す鏡刀と比べると、オリハルコン製の武器はどうにもレナの性には合わない。アダマンタイトで作り上げた大剣は重量が重いがその分に破壊力も高く、非常に頑強で滅多に壊れる事はない。

オリハルコンの場合はアダマンタイトと比べると軽く、硬度もかなり劣る。それでも普通の魔法金属と比べて頑丈でしかも軽い。魔法耐性に関してもアダマンタイトを上回るため、魔法攻撃には強い一面を持つ。鏡刀のように魔法を跳ね返す事はできなくても防御するには最適だった。


「よし……こいつをこうするか」


悩んだ末にレナは長剣の方を別の形に変形させ、今後は武器ではなく防具として扱う事に決めた。彼は形状高速変化の能力を利用して長剣を円盤型の盾に変形させる。盾を扱った戦闘はレナは殆どした事ないが、この機会に盾を利用する戦法も覚えて置く事に決めた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。