不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

赤髪の剣士

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「あんたのお陰で助かったよ。けど、なんでこんな所で一人でいるんだい?あたしみたいにまさか間違えて入ってきたのかい?」
「いや、ちょっと用事がありまして……」
「用事?こんな所に何の用があって……うわっ!?なんだいあの馬鹿でかい城は!?」
「あっ……」


今更ながらにテンは古城の存在を知ってしまい、ここでレナはまずい事に気が付く。この時代で第三階層の古城の存在を知る人間はカイ以外にはおらず、ここで彼女に見られる事は非常にまずい。


「この階層にあんな馬鹿でかい城があったのかい!?そんなの聞いた事もないよ!!」
「いや、えっと……あ、あれはですね」
「こうしている場合じゃないね!!ほら、あんたも付いて来な!!あたしの経験上ではこういう怪しげな場所にお宝がある可能性が一番高いんだよ!!」


テンは興奮した様子で古城へ向かおうとするが、彼女を行かせるのはまずい。今はホネミンが中に潜入して過去の時代のホネミンに気付かれないように魔石を探しているはずであり、ここでテンが入ると面倒な事態に陥る。

自分が助けたせいでテンに古城の存在を知られてしまい、どうにか彼女を引き留める方法がないのかを考えた。そこでレナは駄目元でテンの肩を掴み、先に行かないように頼む。


「すいません!!話を聞いて下さい!!」
「はあっ!?話ってなんだい?」
「えっと……あの城には入らないでください!!それと城の事を他の人に話すのも止めてください!!」
「何でだい!?」


レナの言葉にテンは信じられない表情を浮かべ、塔の大迷宮の第三階層に古城が存在するなど誰もが知らない。もしも他の人間も知れば第三階層を捜索する人間が現れ、そうなるとホネミンの存在が大勢の人間に知られる可能性もある。

未来の時代のホネミンはカイ以外の人間と接触したのはレナ達が初めてだと言っていたため、この時代の人間と遭遇したらタイムパラドックスが起きてしまう。だからこそレナはテンに古城の事を他の人間に話さないように頼むが、彼女は納得するはずがない。


「馬鹿を言うんじゃないよ!!あんた、あの城にあるお宝を独り占めにするつもりかい?それならいくら命の恩人だからと言っても許さないよ!!」
「違うんです!!あの城にはえっと……き、危険なアンデッドが住み着いているんです!!」
「アンデッド!?」


我ながらとんでもない作り話をしてしまったと思ったレナだったが、効果は意外とあって勇み込んでいたテンの顔色が変わる。何故だか知らないが彼女はアンデッドに対して苦手意識があるらしく、不安そうな表情を浮かべる。


「そ、その話……嘘じゃないだろうね?」
「は、はい……あの城はアンデッドの巣窟なんです。だから不用意に入ると襲われて大変な事になります」
「で、でもそれなら尚更他の人間に知らせないといけないんじゃないかい?」
「あの城は普段は砂に埋もれて滅多に地表に出てこないんです。それに危険を知らせても興味本位で逆にあの城を探そうとする人間も出てくるかもしれませんし……」
「ま、まあ一理あるね……」


少し無理のある言い訳だったがテンはレナの言葉を聞いて納得し、どうやら彼女はアンデッドが苦手らしい。このまま誤魔化しきれるかと思ったレナだったが、テンは悩んだ末にレナに告げる。


「い、いや……冒険者がアンデッド如きに怯えるはずがないだろ!?あたしは行くよ、お宝があるかもしれないんだ!!」
「ちょっと待ってください!!あの城にはそんなのありませんから!!生きの良いスケルトンが居るだけですから!!」
「じょ、上等だ!!スケルトンぐらい木っ端みじんにしてやるよ!!」
「普通のスケルトンじゃないんです!!究極生命体ぐらいの能力を誇るアルティメットスケルトンなんです!!」
「どんなスケルトンだいそれは!?」


必死にレナはテンを引き留めようとするが、彼女は若干怖気づきながらも古城へ向かおうとする。このままでは駄目だと思ったレナはホネミンがアイラとマリアに使用した薬を思い出す。二人を倒した後、ホネミンは薬を利用して記憶を消した。

今ならばテンを気絶させて薬を与えれば記憶が飛んで古城の存在を忘れる可能性もあり、覚悟を固めたレナはテンの身体を離すと空間魔法を発動させる。異空間から大剣を取り出したレナを見てテンは驚く。


「あ、あんた!?今どこから武器を……いや、それよりもなんだいその目は!?」
「すいません……ここで気絶してもらいます」
「はっ!!やっぱりあんたはあの古城を独り占めするつもりかい!?口封じのためにあたしを殺そうというのなら、そうはいかないよ!!」


テンは大剣を取り出したレナに対して自らも大剣を抜き、この時にレナは最初の頃にバルが使用していた大剣と似ている事に気が付く。尤もデザインが似ているだけで二人の剣は同じ物ではなく、バルの大剣はミスリル製だったがテンの大剣は岩石を大剣の形に削り取ったような武器だった。
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