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蛇足編
ギラン
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「……ミズネさんは何処にいるんだろう」
「ここまで探して手がかりは無しですか……仕方ありません、探し方を少し変えましょう」
「変えるって?」
「人魚族なら水場がある場所を必ず拠点にします。王都の中に流れている川を調べてみましょう」
「川か……」
闇雲に探し回っても見つからないと判断したレナとホネミンは今度は川を調べてみる事にした。二人は川が流れている場所を探し出そうとした時、前方に人だかりができている事に気付く。
「何でしょうかあれは?」
「さあ……調べてみる?」
人だかりが集まっている場所へ向かうと、そこには異様な光景が広がっていた。一見すると巨人族と見間違える程の大柄な体躯の男性が立っており、彼の前には獣人族の男が立っていた。街中にも関わらずに獣人族の男は剣を抜いており、酷く緊張した様子だった。
「お、親父の仇だ……ぶっ殺してやる」
「……止めろ、君では私には勝てない」
「うるせえっ!!」
大男に対して獣人族の男は剣の刃に隠し持っていた小瓶の中身を注ぐ。どうやら毒物の類だと思われ、刃に紫色の液体が流れる。それを見たレナは止めるべきかと思ったが、ホネミンがレナを止めた。
「さっきも言ったでしょう。これ以上に余計な介入は駄目ですよ」
「だけど……」
「それに見てください、あの男の人の落ち着き様……只者じゃありませんよ」
ホネミンの言葉通りに男は剣に毒を塗った相手を見ても動じず、仁王立ちのまま構えもしない。彼の背中には大剣が存在し、それをよく見るとレナは驚愕の表情を浮かべた。
「あの剣は……!?」
「死ねぇえええっ!!」
大男の背負う大剣の正体に気付いたレナは驚いたが、獣人族の男は毒を塗った剣を手にして跳躍した。上空から大男の頭に目掛けて剣を振り下ろそうとしたが、それに対して大男は背中の大剣に手を伸ばす。
目にも止まらぬ速さで大男は大剣を引き抜くと、それを空中に浮揚した獣人族の男に目掛けて叩き込む。切り裂くのではなく、大剣の腹の部分を当てて男を地面に叩きつける。
「ぐはぁっ!?」
「未熟者がっ!!」
あまりの威力に男は地面にめり込み、白目を剥いて気絶してしまう。そんな男に対して大男は武器を背中に戻すと、彼の身体を掴んで地面から引きずり出す。
「……仇を討つつもりならば毒などと言う姑息な手を使わず、腕を磨いて挑んで来い」
「ぐ、ぐそぉっ……」
「大将軍!!ここにおられましたか!!」
「これは何の騒ぎですか!?」
捕まった獣人族の男は大男の言葉に涙を流し、遅れて警備兵が駆けつけてきた。兵士達は大男の事を大将軍と呼び、その事からレナは大男の正体がシズネの父親の「ギラン」だと見抜く。
――大将軍ギランはかつてはレナと死闘を繰り広げたミドルと肩を並べる大将軍であり、ミドルが大将軍の地位に就く前から大将軍の座に就いている。彼の実力はシズネの話によればゴウライと全くの互角らしく、もしもイレアビトがギランに毒を仕込まなければゴウライに敗れる事はなかったという。
ギランが所持する武器は聖剣デュランダルであり、この武器は現在はゴウライが所持しているが元々は王国の所有物だった。ギランは聖剣の所持が許されるほどに国王からの信頼が厚く、後に王となるバルトロス13世からも信頼する人物だった。
レナはギランの顔を見るのは初めてであり、外見の方はシズネと全くと言っていいほどに似ていない。しかし、今の一連の動きから彼が聞いていた通りに優れた剣士である事は間違いなく、確かにゴウライに匹敵する剛剣の剣士だと知る。
(この時代のゴウライよりも強いかもしれない……)
この時代に訪れてからレナはゴウライと戦っているが、少なくともレナが戦った時のゴウライよりもギランの方が優れていると思われた。ギランはまだ若く、恐らくは年齢的にも全盛期と思われる。
「あれが大将軍ギランですか……私も噂しか聞いた事がありませんけど、確かに強いですね」
「でも、どうして命を狙われたんだ?」
街中にも関わらずに獣人族の男がギランの命を狙った事にレナは不思議に思い、彼の口ぶりだとギランに父親を殺されたそうだが、どうしてギランは彼の父親を殺したのか分からない。ギランは捕まえた男を警備兵に引き渡すと、連行する前に彼に淡々と告げた。
「お前の父親を殺したのは私だと言ったな。だが、お前の父親は我が国の兵士を何人殺した?」
「な、何だと……!?」
「俺はお前の父親を殺したのはこの国のためだ。そしてお前の父親も自分の国のために戦った……その事に後悔はない。もしも俺がお前の父親に殺されていたとしても恨みは抱かん」
「ふざけるな!!貴様だけは……必ず殺してやる!!」
「……ならば次は誰にも迷惑を掛けずに俺の命だけを狙え。何度でも相手にしてやろう」
「ほら、付いて来い!!」
「くそっ……くそぉおおおっ!!」
話を聞く限りではどうやらギランと獣人族の男は何らかの事情があったらしく、ギランは自分がした事に後悔はしていないが男の復讐を止めるつもりもなかった。
「ここまで探して手がかりは無しですか……仕方ありません、探し方を少し変えましょう」
「変えるって?」
「人魚族なら水場がある場所を必ず拠点にします。王都の中に流れている川を調べてみましょう」
「川か……」
闇雲に探し回っても見つからないと判断したレナとホネミンは今度は川を調べてみる事にした。二人は川が流れている場所を探し出そうとした時、前方に人だかりができている事に気付く。
「何でしょうかあれは?」
「さあ……調べてみる?」
人だかりが集まっている場所へ向かうと、そこには異様な光景が広がっていた。一見すると巨人族と見間違える程の大柄な体躯の男性が立っており、彼の前には獣人族の男が立っていた。街中にも関わらずに獣人族の男は剣を抜いており、酷く緊張した様子だった。
「お、親父の仇だ……ぶっ殺してやる」
「……止めろ、君では私には勝てない」
「うるせえっ!!」
大男に対して獣人族の男は剣の刃に隠し持っていた小瓶の中身を注ぐ。どうやら毒物の類だと思われ、刃に紫色の液体が流れる。それを見たレナは止めるべきかと思ったが、ホネミンがレナを止めた。
「さっきも言ったでしょう。これ以上に余計な介入は駄目ですよ」
「だけど……」
「それに見てください、あの男の人の落ち着き様……只者じゃありませんよ」
ホネミンの言葉通りに男は剣に毒を塗った相手を見ても動じず、仁王立ちのまま構えもしない。彼の背中には大剣が存在し、それをよく見るとレナは驚愕の表情を浮かべた。
「あの剣は……!?」
「死ねぇえええっ!!」
大男の背負う大剣の正体に気付いたレナは驚いたが、獣人族の男は毒を塗った剣を手にして跳躍した。上空から大男の頭に目掛けて剣を振り下ろそうとしたが、それに対して大男は背中の大剣に手を伸ばす。
目にも止まらぬ速さで大男は大剣を引き抜くと、それを空中に浮揚した獣人族の男に目掛けて叩き込む。切り裂くのではなく、大剣の腹の部分を当てて男を地面に叩きつける。
「ぐはぁっ!?」
「未熟者がっ!!」
あまりの威力に男は地面にめり込み、白目を剥いて気絶してしまう。そんな男に対して大男は武器を背中に戻すと、彼の身体を掴んで地面から引きずり出す。
「……仇を討つつもりならば毒などと言う姑息な手を使わず、腕を磨いて挑んで来い」
「ぐ、ぐそぉっ……」
「大将軍!!ここにおられましたか!!」
「これは何の騒ぎですか!?」
捕まった獣人族の男は大男の言葉に涙を流し、遅れて警備兵が駆けつけてきた。兵士達は大男の事を大将軍と呼び、その事からレナは大男の正体がシズネの父親の「ギラン」だと見抜く。
――大将軍ギランはかつてはレナと死闘を繰り広げたミドルと肩を並べる大将軍であり、ミドルが大将軍の地位に就く前から大将軍の座に就いている。彼の実力はシズネの話によればゴウライと全くの互角らしく、もしもイレアビトがギランに毒を仕込まなければゴウライに敗れる事はなかったという。
ギランが所持する武器は聖剣デュランダルであり、この武器は現在はゴウライが所持しているが元々は王国の所有物だった。ギランは聖剣の所持が許されるほどに国王からの信頼が厚く、後に王となるバルトロス13世からも信頼する人物だった。
レナはギランの顔を見るのは初めてであり、外見の方はシズネと全くと言っていいほどに似ていない。しかし、今の一連の動きから彼が聞いていた通りに優れた剣士である事は間違いなく、確かにゴウライに匹敵する剛剣の剣士だと知る。
(この時代のゴウライよりも強いかもしれない……)
この時代に訪れてからレナはゴウライと戦っているが、少なくともレナが戦った時のゴウライよりもギランの方が優れていると思われた。ギランはまだ若く、恐らくは年齢的にも全盛期と思われる。
「あれが大将軍ギランですか……私も噂しか聞いた事がありませんけど、確かに強いですね」
「でも、どうして命を狙われたんだ?」
街中にも関わらずに獣人族の男がギランの命を狙った事にレナは不思議に思い、彼の口ぶりだとギランに父親を殺されたそうだが、どうしてギランは彼の父親を殺したのか分からない。ギランは捕まえた男を警備兵に引き渡すと、連行する前に彼に淡々と告げた。
「お前の父親を殺したのは私だと言ったな。だが、お前の父親は我が国の兵士を何人殺した?」
「な、何だと……!?」
「俺はお前の父親を殺したのはこの国のためだ。そしてお前の父親も自分の国のために戦った……その事に後悔はない。もしも俺がお前の父親に殺されていたとしても恨みは抱かん」
「ふざけるな!!貴様だけは……必ず殺してやる!!」
「……ならば次は誰にも迷惑を掛けずに俺の命だけを狙え。何度でも相手にしてやろう」
「ほら、付いて来い!!」
「くそっ……くそぉおおおっ!!」
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