不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

レナが恋しい

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「なんでこうなるんだ……レナと一緒の時は面倒事にはよく巻き込まれたけど、生活に困る事はなかったのに」
「レナはしっかり者だからな」
「そんなに恋しいならレナさんも連れて来れば良かったんですよ」
「しょうがないだろ、誘ったけど今は忙しいって断られたんだよ!!」


ダインは旅に出る前にレナも誘ったのだが、色々と用事が重なっているので同行はできなかった。レナと旅をしていた時は少なくともお金に困る事はなく、面倒事には巻き込まれる事は多いがそれは今でも変わらない。

レナと旅をしている時は彼が自然と皆を率いる立場と成り、危険な場所に赴く時も常に前線で戦っていた。また、他の人間が困っている時は力を貸してくれたため、一緒にいる間は安心して過ごせる。


「ダイン、やっぱり人数を増やしたらどうだ?回復魔法を使える人間が一人でもいれば心強いぞ」
「そんな簡単に言うなよ……回復魔法の使い手なんて滅多にいないんだぞ」
「そもそも獣人国では魔法の使い手自体が少ないですからね」


前の旅の時にはレナやコトミンが回復魔法を扱えるので怪我を負っても治してくれたが、現在のダイン達の中には回復魔法の使い手はいない。だから戦闘で傷を負った時は薬に頼るしかなく、そのせいで出費が掛かる。


「回復薬はどれくらい残ってる?」
「あんまり余裕はありませんね。薬草があれば調合もできますけど……この地方では薬草はあまりありませんね」
「はあっ……また買わないといけないのか」
「荷物がまた多くなるな」


旅に必要な荷物は当然ながら自力で持ち歩かなければならず、レナが一緒の時は空間魔法で荷物を異空間に収納してもらったため、旅を行う時は余分な荷物は持ち運ぶ必要はなく、快適に移動する事ができた。今更ながらにレナがどれほど有能な能力を持っているのか思い知らされた。


「……次に旅に出る時はレナさんも一緒に付いて行ってもらいましょうか」
「そうだな……」
「でも、あいつも色々と忙しい身分だからな……僕達の旅に付き合ってくれるかな」


現在のレナはバルトロス王国の王弟であり、S級冒険者にしてヨツバ王国の姫であるティナの旦那でもあり、しかも人魚族の間では実は相当に偉い立場になったコトミンの旦那でもある。そもそもダインとゴンゾウが所属するギルドはレナとは別のギルドであり、同行するのも本来ならば難しい。

これからもレナとは今まで通りの関係でいられるのかとダインは不安を抱くが、どんな立場になろうとダインにとってはレナは親友である。彼ならば立場など関係なく、今まで通りに接してくれると信じて眠る事にした。


「もう考えるのは後にしよう……持ち帰ったお宝は換金して明日は街で泊まろう」
「良いんですか?」
「こんな重い荷物を持ち歩くのも大変だろ……命には変えられないよ」
「そうだな」


折角手に入れたお宝ではあるが、明日には骨董品屋に持ち込んで売り込む事にした。もしもレナが居たとすれば金貨や銀貨を錬金術師の能力で金塊や銀塊に変えれば高く売れるかもしれないが、この場にレナがいない以上はどうしようもない。


「ミイネ、監獄都市まであとどれくらいかかる?」
「今の調子だと到着は半年後ですね」
「うげっ……そんなの待ってられないよ」
「移動用の魔獣を借りるしかないかもしれませんね。でも、ゴンゾウさんを乗せられるだけの魔獣が都合よくいるかどうか……」
「すまん……色々と迷惑を掛けるな」
「いいって、戦闘の時はゴンゾウが一番頑張ってるんだらかさ」


前の旅の時はウルが狼車を引いて全員を運んでいたが、生憎とダイン達はウルのような騎獣は連れ歩いていない。ウルはレナの指示が無ければ同行せず、巨人族を運べるような騎獣は滅多にいないので旅が遅くなる原因の一つだった。

今後も旅を続けるのであればこれらの問題を解決しなければどうにもならず、ダインはレナ達の存在がどれほど有難かったのか改めて認識した――






――翌日の朝、ダイン達は近くの街で遺跡から発見したお宝を売って資金を手に入れた。それなりに高く売れたのでしばらくは金に困りそうはないが、どこから話を聞きつけてきたのかダイン達の元に獣人族の荒くれが訪れる。


「へへへ……お前等、結構な金を持ってるんだろ?なら俺達に恵んで貰おうじゃないか」
「な、何だよお前等!?」
「どうやら荒くれのようですね……この街ではこういうの多いそうですよ」
「邪魔だ、退け」


自分達の前に立ち塞がる獣人達に対してゴンゾウは一歩前に出て威圧すると、彼の気迫に気圧された獣人達は無意識に後退る。しかし、彼等の一人が前に出て冷や汗を流しながらも立ち塞がった。


「きょ、巨人族が偉そうに威張ってるんじゃねえ!!お前等は魔法も使えない癖に!!」
「……確かに俺達の種族は魔法を苦手としている。だが、魔法などなくても俺達には腕力と技がある」


ゴンゾウは力こぶを作って見せつけると、彼の言葉に獣人達は顔色を青くする。しかし、ここで退くわけにはいかずに彼の前に立ちはだかる獣人は短剣を取り出してゴンゾウに切りかかった。
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