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蛇足編
人体実験
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――ダイン達の疑問の答えを知る者は一人だけ存在した。それは王妃に気に入られていたシズネであり、彼女は幼い頃に雪月花を託されてる。雪月花を手にした事で彼女は青の剣聖と呼ばれるまでに成長し、現在では世界有数の剣士に育ったと言っても過言ではない。
シズネは父親を失い、自分を養ってくれていた母親が死んだ後に王妃と接触した。王妃は復讐の機会と力を与える代わりに自分に従うように告げ、彼女はその条件を受け入れた。王妃はゴウライに対抗するために彼女に七大魔剣「雪月花」を託し、その後はミドルに彼女の指導を行わせた。
『僕の技を見て、自分の物にするんだ。君の才能ならばあの御方の側近に相応しい騎士となれるだろう』
『……勘違いしないで頂戴。私はあいつらとは違う、あの女に媚びを売るつもりはないわ』
ミドルはシズネをいずれ王妃の側近に育て上げるつもりで彼女に武術を教えたが、当のシズネは王妃に対して忠誠心など一切なかった。自分を助けてくれた事に恩義を感じていないわけではないが、元々はギランが死んだのは王妃がゴウライと彼が戦うように仕向けたからである。
復讐のために必要な力を与えてくれた事には感謝はしているが、シズネにとってはゴウライの次に王妃は自分の父親の仇である。だから他の子供達と違ってシズネは王妃に心酔せず、己の力を磨く事だけに専念してきた。
『一つ聞かせて頂戴、前に会った時と他の子の様子が違うのだけど……何をしたの?』
『僕は何もしていないさ。彼等の面倒を見ているのは王妃様だ』
傭兵稼業を始めてからもシズネは定期的に呼び出され、ミドルから指導を受ける事はあった。しかし、彼女は王妃の傍に控える子供達の様子がおかしい事に気が付く。最初に出会った頃と比べ、子供達の雰囲気が変わっているように感じられた。
子供達の変化に勘付いたシズネはミドルに問い質すが、彼によれば子供達の指導を行っているのは自分ではなく、王妃が直々に行っている事を話す。しかし、冷静に考えて王妃という立場の人間が他の貴族の子供の世話をする事にシズネは違和感を抱く。
『……少し、調べてみましょうか』
ある日にシズネはミドルの指導を受けた後、彼女は子供達の様子を探る事にした。そして判明した事は子供達は毎日支給される薬を飲んでいるらしく、その薬を飲んだ後は特殊な訓練を行っていた。
『う、ううっ……』
『はあっ、はあっ……』
『く、苦しい……』
『頑張りなさい、弱音を吐いては駄目よ』
調べた結果、子供達は夜を迎えると王城内に存在する牢獄に閉じ込められている事が判明した。仮にも有力貴族の子供達を牢獄に閉じ込めるなど普通ならば有り得ない話だが、王妃が渡した薬を飲んだ後の彼等は異常な行動を取る。
薬を飲んだ子供達は苦しんだ後、彼等が落ち着くまで王妃はその様子を眺め続ける。それは彼等を心配しているというよりも、観察して何かを確かめるような目つきだった。その光景を盗み見したシズネは王妃の異常性に気が付き、彼女は決して王妃には逆らわないように誓う。
(あの女……イカれているわ)
子供達にどんな薬を飲ませたのかは不明だが、シズネの見立てでは王妃が用意した薬は何らかの能力を開花させる効果をもたらし、しかし能力を目覚めさせるまでに数年もの時を費やす。シズネの場合は父親の剣の才能を引き継いでいたために他の子供と違って薬を与える事はなかったが、もしも彼女が魔剣を扱いこなせなかったら子供達と同じ立場になっていたかもしれない。
シズネは子供達を利用して王妃が何らかの「人体実験」を行っている事を知り、彼女はその日以降は一層に修行に励む事にした。もしも王妃がシズネではゴウライに及ばないと判断した場合、他の子供と同様に実験を行う可能性を知り、彼女はそれを恐れて今まで以上に修行に励む。
しかし、シズネの誤算は王妃は彼女の行動を予測していた。だから敢えてシズネに自分が子供達に行っている実験を見させ、彼女に焦燥感を抱かせる。王妃の計画ではいずれはゴウライを始末するためにシズネを育て上げようとしていたのは嘘ではなく、彼女に復讐の機会を与える約束は守るつもりだった。
『強くなりなさい、誰よりも強く……そうすれば貴女は私の子供になれる』
王妃は血の繋がりがある子供よりも自分が育て上げる子供達の方を愛しており、それはシズネも例外ではなかった。彼女に自分がどのように思われていようと、王妃はシズネを引き取った時から彼女の事を自分の子供だと認識して愛していた。
レナ達と接触した事で心変わりし、自分を裏切ったシズネを捕まえた時も王妃は彼女を殺さなかった。その理由の一つはシズネの力を惜しんだのもあるが、もしかしたら本当に彼女に対して育て親として愛情を抱いていたのかもしれない――
シズネは父親を失い、自分を養ってくれていた母親が死んだ後に王妃と接触した。王妃は復讐の機会と力を与える代わりに自分に従うように告げ、彼女はその条件を受け入れた。王妃はゴウライに対抗するために彼女に七大魔剣「雪月花」を託し、その後はミドルに彼女の指導を行わせた。
『僕の技を見て、自分の物にするんだ。君の才能ならばあの御方の側近に相応しい騎士となれるだろう』
『……勘違いしないで頂戴。私はあいつらとは違う、あの女に媚びを売るつもりはないわ』
ミドルはシズネをいずれ王妃の側近に育て上げるつもりで彼女に武術を教えたが、当のシズネは王妃に対して忠誠心など一切なかった。自分を助けてくれた事に恩義を感じていないわけではないが、元々はギランが死んだのは王妃がゴウライと彼が戦うように仕向けたからである。
復讐のために必要な力を与えてくれた事には感謝はしているが、シズネにとってはゴウライの次に王妃は自分の父親の仇である。だから他の子供達と違ってシズネは王妃に心酔せず、己の力を磨く事だけに専念してきた。
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『……少し、調べてみましょうか』
ある日にシズネはミドルの指導を受けた後、彼女は子供達の様子を探る事にした。そして判明した事は子供達は毎日支給される薬を飲んでいるらしく、その薬を飲んだ後は特殊な訓練を行っていた。
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薬を飲んだ子供達は苦しんだ後、彼等が落ち着くまで王妃はその様子を眺め続ける。それは彼等を心配しているというよりも、観察して何かを確かめるような目つきだった。その光景を盗み見したシズネは王妃の異常性に気が付き、彼女は決して王妃には逆らわないように誓う。
(あの女……イカれているわ)
子供達にどんな薬を飲ませたのかは不明だが、シズネの見立てでは王妃が用意した薬は何らかの能力を開花させる効果をもたらし、しかし能力を目覚めさせるまでに数年もの時を費やす。シズネの場合は父親の剣の才能を引き継いでいたために他の子供と違って薬を与える事はなかったが、もしも彼女が魔剣を扱いこなせなかったら子供達と同じ立場になっていたかもしれない。
シズネは子供達を利用して王妃が何らかの「人体実験」を行っている事を知り、彼女はその日以降は一層に修行に励む事にした。もしも王妃がシズネではゴウライに及ばないと判断した場合、他の子供と同様に実験を行う可能性を知り、彼女はそれを恐れて今まで以上に修行に励む。
しかし、シズネの誤算は王妃は彼女の行動を予測していた。だから敢えてシズネに自分が子供達に行っている実験を見させ、彼女に焦燥感を抱かせる。王妃の計画ではいずれはゴウライを始末するためにシズネを育て上げようとしていたのは嘘ではなく、彼女に復讐の機会を与える約束は守るつもりだった。
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