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蛇足編
覚醒の時は近い
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「――嫌な夢ね」
森の中でシズネは目を覚まし、彼女は久々に武者修行の旅に出ていた。シズネは己の力を完璧に使いこなすために敢えて一人で旅を行い、吸血鬼としての力を高めていく。
「もう少し時間はかかりそうね。だけど、この力を使いこなせれば……ふふふ」
何故か胸元の辺りを摩りながらシズネは笑みを浮かべ、自分が徐々に吸血鬼と化していると聞いた時は流石にショックを受けたが、よくよく考えれば悪い事ではない。確かに吸血鬼の評判はあまりよくはないが、吸血鬼は魔人族の中では最も人間に近い存在で子供も為す事もできる。それに吸血鬼の能力を身に付ければある程度の肉体の変化を行えた。
難点があるとすれば吸血鬼と化す事で常時異性を引き寄せる「魅了」の能力も身に着ける事となり、この能力は制御できなければ無差別に異性を引き寄せてしまう。想い人だけを魅了するのであれば別に問題はないが、流石に見知らぬ男を知らず知らずのうちに魅了する事になると考えれば嫌な思いをする。
「しばらくは帰れそうにないわね……スラミン君でも連れて来れば良かったわ」
傭兵として生きてきた時はシズネは基本的には一人で生きてきたが、この数年の間は仲間達と共にいるのが当たり前になっていた。一人がこんなにも心細いと感じたのは久しぶりであり、いつも両親の事を思い出す。
ちなみに彼女を追い出したギランの正妻は王妃に結託していた事が発覚し、今現在は牢獄で過ごしている。今尚も彼女はナオに許しを乞うているが彼女は聞き入れず、実を言えばギランの毒殺に関わっていた事が発覚した。
(あの女が父上の殺しに関わっていたなんて……)
実を言えばギランがゴウライとの試合中に飲んだ水には毒物は入っておらず、その代わりにとある植物の成長を促す成分が入っている事が判明した。ギランが食事の際に彼の正妻はとある植物の種を混ぜており、それを食べてしまったギランは例の水を飲んで身体に異変が起きた。
ギランが飲んだ植物の種は体内で成長し、彼の身体の内側から寄生した。この植物の種はかつてはヨツバ王国の人間が処刑の際に利用していた食虫植物であり、体内から食い荒らされる恐ろしい代物だった。王妃はそれを何処かから入手し、ギランに飲ませて死に追い詰めた。
(父が毒程度で死ぬわけはないと思っていたけど、まさか植物で人を殺すなんて……恐ろしい女ね)
前々からシズネはギランの死に疑問を抱き、屈強な父親が毒で死んだとは信じられなかった。武人として生きてきたギランは暗殺対策のために毒耐性の技能も身に着けており、普通の毒で彼が死ぬはずはない。だから王妃は策を講じて彼を殺す。
そもそもゴウライを招いたのも王妃の仕業であり、ギランとゴウライが戦うように仕向けたのも王妃の仕業だった。全ては王妃が立てた計画であり、子供の頃のシズネはそれに気づかずに彼女に従っていた。
(……あの女が父上を殺したような物ね。でも、不思議と憎む気にはなれないわ)
王妃のせいで敬愛していた父親と最愛の母が死んだというのにシズネは王妃を憎めなかった。理由としては確かに王妃はギランを罠に嵌めたが、その後はシズネの面倒は見てくれた。彼女に復讐の機会を与えるという言葉も嘘ではなく、彼女がここまで強くなれたのはミドルに指示したからである。
自分が殺した男の娘を王妃はわざわざ拾い上げ、七大魔剣の雪月花まで託した。彼女がシズネの事を気に入っていたのは才ある人間だからであり、血の繋がりがなくとも王妃はシズネの事を本当の子供のように接していた。シズネ自身は王妃に対して母親のような愛情を抱いた事はないが、一応は恩義を感じていた。
(……父様と母様が生きていればきっと私はレナ達に会う事はできなかった。そう考えると人生とは不思議ね)
両親を失った時はシズネは自分は一生不幸だと思っていた。これからは復讐のためだけに生きていくしかないと考えてもいた。しかし、レナ達と出会ったお陰で心休まる時が過ごせるようになり、何時しか彼等の事を本当の仲間だと思っていた。
シズネがレナ達に接触した理由は王妃からの指示であり、レナという存在を見極めて彼女の障害になる存在になる前に消すのが仕事だった。場合によってはレナが王妃にとって有益な存在になるのであれば彼女の元に招く役割も与えられていた。仮にレナが王妃にとっては厄介な王位継承者であろうと、有能な人間ならば王妃は自分の元においてもいいと考えていた。
王妃にとっては若くて有能な存在であれば自分の子供として育てる。実の子供であるミレトに大しては一片の愛情も注がなかったが、彼女は血の繋がりがない他人の方を信用する。それは彼女の育ちがあまりにも特殊だからであり、彼女の人生は他の人間を蹴落とさなければ生きていけなかったという。
昔にシズネは一度だけ王妃の過去の話を聞いた事があり、旧帝国の支配者になるために血の繋がった他の兄妹と争い合ってきた。お互いに生き残るために相手を出し抜き、時には殺し合いもした。そんな環境で生まれたせいで王妃は血の繋がりを信じない存在になった。
森の中でシズネは目を覚まし、彼女は久々に武者修行の旅に出ていた。シズネは己の力を完璧に使いこなすために敢えて一人で旅を行い、吸血鬼としての力を高めていく。
「もう少し時間はかかりそうね。だけど、この力を使いこなせれば……ふふふ」
何故か胸元の辺りを摩りながらシズネは笑みを浮かべ、自分が徐々に吸血鬼と化していると聞いた時は流石にショックを受けたが、よくよく考えれば悪い事ではない。確かに吸血鬼の評判はあまりよくはないが、吸血鬼は魔人族の中では最も人間に近い存在で子供も為す事もできる。それに吸血鬼の能力を身に付ければある程度の肉体の変化を行えた。
難点があるとすれば吸血鬼と化す事で常時異性を引き寄せる「魅了」の能力も身に着ける事となり、この能力は制御できなければ無差別に異性を引き寄せてしまう。想い人だけを魅了するのであれば別に問題はないが、流石に見知らぬ男を知らず知らずのうちに魅了する事になると考えれば嫌な思いをする。
「しばらくは帰れそうにないわね……スラミン君でも連れて来れば良かったわ」
傭兵として生きてきた時はシズネは基本的には一人で生きてきたが、この数年の間は仲間達と共にいるのが当たり前になっていた。一人がこんなにも心細いと感じたのは久しぶりであり、いつも両親の事を思い出す。
ちなみに彼女を追い出したギランの正妻は王妃に結託していた事が発覚し、今現在は牢獄で過ごしている。今尚も彼女はナオに許しを乞うているが彼女は聞き入れず、実を言えばギランの毒殺に関わっていた事が発覚した。
(あの女が父上の殺しに関わっていたなんて……)
実を言えばギランがゴウライとの試合中に飲んだ水には毒物は入っておらず、その代わりにとある植物の成長を促す成分が入っている事が判明した。ギランが食事の際に彼の正妻はとある植物の種を混ぜており、それを食べてしまったギランは例の水を飲んで身体に異変が起きた。
ギランが飲んだ植物の種は体内で成長し、彼の身体の内側から寄生した。この植物の種はかつてはヨツバ王国の人間が処刑の際に利用していた食虫植物であり、体内から食い荒らされる恐ろしい代物だった。王妃はそれを何処かから入手し、ギランに飲ませて死に追い詰めた。
(父が毒程度で死ぬわけはないと思っていたけど、まさか植物で人を殺すなんて……恐ろしい女ね)
前々からシズネはギランの死に疑問を抱き、屈強な父親が毒で死んだとは信じられなかった。武人として生きてきたギランは暗殺対策のために毒耐性の技能も身に着けており、普通の毒で彼が死ぬはずはない。だから王妃は策を講じて彼を殺す。
そもそもゴウライを招いたのも王妃の仕業であり、ギランとゴウライが戦うように仕向けたのも王妃の仕業だった。全ては王妃が立てた計画であり、子供の頃のシズネはそれに気づかずに彼女に従っていた。
(……あの女が父上を殺したような物ね。でも、不思議と憎む気にはなれないわ)
王妃のせいで敬愛していた父親と最愛の母が死んだというのにシズネは王妃を憎めなかった。理由としては確かに王妃はギランを罠に嵌めたが、その後はシズネの面倒は見てくれた。彼女に復讐の機会を与えるという言葉も嘘ではなく、彼女がここまで強くなれたのはミドルに指示したからである。
自分が殺した男の娘を王妃はわざわざ拾い上げ、七大魔剣の雪月花まで託した。彼女がシズネの事を気に入っていたのは才ある人間だからであり、血の繋がりがなくとも王妃はシズネの事を本当の子供のように接していた。シズネ自身は王妃に対して母親のような愛情を抱いた事はないが、一応は恩義を感じていた。
(……父様と母様が生きていればきっと私はレナ達に会う事はできなかった。そう考えると人生とは不思議ね)
両親を失った時はシズネは自分は一生不幸だと思っていた。これからは復讐のためだけに生きていくしかないと考えてもいた。しかし、レナ達と出会ったお陰で心休まる時が過ごせるようになり、何時しか彼等の事を本当の仲間だと思っていた。
シズネがレナ達に接触した理由は王妃からの指示であり、レナという存在を見極めて彼女の障害になる存在になる前に消すのが仕事だった。場合によってはレナが王妃にとって有益な存在になるのであれば彼女の元に招く役割も与えられていた。仮にレナが王妃にとっては厄介な王位継承者であろうと、有能な人間ならば王妃は自分の元においてもいいと考えていた。
王妃にとっては若くて有能な存在であれば自分の子供として育てる。実の子供であるミレトに大しては一片の愛情も注がなかったが、彼女は血の繋がりがない他人の方を信用する。それは彼女の育ちがあまりにも特殊だからであり、彼女の人生は他の人間を蹴落とさなければ生きていけなかったという。
昔にシズネは一度だけ王妃の過去の話を聞いた事があり、旧帝国の支配者になるために血の繋がった他の兄妹と争い合ってきた。お互いに生き残るために相手を出し抜き、時には殺し合いもした。そんな環境で生まれたせいで王妃は血の繋がりを信じない存在になった。
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