不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

旅に出よう

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――屋敷に帰ったレナは全員を呼び出すと、自分が当分の間は戻らない事を率直に伝えた。


「旅に出ます。探さないでください」
『えぇええええっ!?』


家出すると勘違いされそうな言い方になってしまったが、レナは旅に出るという決意は固かった。自分の立場など考えず、昔のように自由な生活を送るためにしばらくの間は帰ってこない事を伝える。


「ぼ、坊ちゃま!!我々に何か落ち度が!?」
「いや、そういうわけじゃないよ」
「ならばどうして……?」


屋敷の執事がレナの言葉に狼狽するが、レナは窓の外を眺めてこれまでの事を振り返る。昔と今ではレナは立場が違い、本来ならば自由気ままに生きていけるほど暇ではない。しかし、それでもレナは旅に出る事を決意した。


「今はとにかくここを離れて色々な場所に行きたい。自分が自由だって事を感じたいと思ってね」
「そ、そんな……」
「ですがレナ様、勝手に離れられては我々も困ります」
「困るのなら止めてみせなよ。力尽くでもいいからさ」
「……本気ですか?」


リンダの言葉にレナは臆せずに言い返すと、流石の彼女も冷や汗を流す。この世界でレナを止められるだけの実力者など数える程しかおらず、本気となったレナは世界最強の戦士である。

旅に出ると決意したレナは誰に反対されようと辞めるつもりはなく、今日中に出発する予定だった。レナは既に荷物を整えており、万が一の場合に備えてリーリスが作り出してくれた連絡機器だけは置いておく。


「とりあえず、これだけは置いていくよ。リーリスが作り出した通信機型魔道具だから」
「な、何これ?」
「キュロッ?」


リーリスが開発した通信機は「黒電話」の形をしており、こんな物だが世界最新鋭の技術で造り出された連絡機器である。これを使用すればレナが所有する通信機と繋がり、連絡だけは何時でも取れる。黒電話をレナは置いていくと、自分は今から旅に出る事をきっぱりと伝えた。


「というわけで俺はもう行くから、皆も達者でね」
「お、お待ちください!!まだ話は……」
「そうだよレナたん!!」
「私達を捨てる気?酷い人……ううっ」
「「ぷるぷるっ(←つぶらな瞳)」」


レナが立ち去ろうとするとティナが抱きつき、コトミンが泣き真似を行い、スライム達は足元から見上げて来る。普通の人間ならば躊躇するだろうが、レナは一味違った。


「何言ってんの?皆も一緒に行くんだよ」
『えっ……』
「俺一人で旅に出ると思ったの?皆一緒に行けば寂しくないでしょ」


思いもよらぬレナの発言にコトミン達は呆気に取られたが、彼女達は自分達も同行しても良いと知ると途端に態度を変えた。


「わ~い!!久しぶりにレナたんと一緒に旅ができるんだね!?」
「それなら問題なし、ならすぐに準備する」
「「ぷるるんっ(やったぜ)」」
「お、お待ちください!!皆さん、それでいいんですか!?」


旅に同行できるのであればコトミンもティナも反対せず、率先して旅の準備を行う。真面目なリンダだけは止めようとしたが、そんな彼女に対してレナは近づくと彼女の手を掴む。


「リンダが一緒に居てくれると心強いんだけどな……」
「えっ、あっ、ですが……」
「駄目かな……?」
「……はい」
『リンダさん!?』


あっさりとレナに説得されたリンダに使用人たちは唖然とするが、リンダは既にレナの虜だった。そもそも彼女はティナに仕える身分であり、そのティナの夫であるレナには逆らえない。

リンダの同行も決まり、全員が準備を整えるとレナ達は外へ向かう。慌てて使用人たちは止めようとするが、どんなに妨害されてもレナは旅を出る事に変わりはない。


「お、お待ちください!!坊ちゃま、せめて行先だけでも教えてください!!」
「行先なんてないよ。自由気ままに旅がしたいだけだから」
「で、では次はいつ帰ってくるのですか!?」
「それも分からない、でも当分は帰ってこないと思うよ」
「そんな……」


レナは使用人達の質問に適当に帰しながら屋敷の出入口に辿り着くと、既に荷物の準備を整えたコトミン達が待ち構えていた。ペットたちも付いてくるつもりらしく、アインやミノの姿もあった。


「キュロロッ!!」
「ブモォッ……」
「お前達も一緒に来るのか?よし、しっかりとご主人様を守るんだぞ」
「「ぷるぷるっ(承知した)」」
「お前等は守るというより、守られる立場なような気がするけど……」
「そんな事はない、スラミンもヒトミンも十分に強い」


魔獣達にティナ達の護衛を任せてレナは旅に出るために扉を開く。しかし、そこには思いもよらぬ人物が待ち構えていた。


「待ちなさい、レナちゃん」
「……母上!?」
「おお、奥方様!!」
「どうかレナ様をお止めください!!」


屋敷の外に待っていたのはアイラであり、彼女が居る事にレナは驚愕した。しかもアイラの隣にはマリアとナオの姿もあり、何故かマリアは疲れた表情を浮かべていた。
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