不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,902 / 2,090
蛇足編

閑話 《ダイン達の金欠の理由》

しおりを挟む
――ダイン達はとあるカジノに立ち寄っていた。旅の資金も余裕がないというのにどうしてカジノに立ち寄ったのかというと、賭博で金を設けるのが目的ではなく、カジノの地下で行われている闘技場で戦って賞金を得るためにゴンゾウが奮戦していた。


「うおおおっ!!」
「ガハァッ!?」
『き、決まった!!鬼仮面の拳がオーガの顔面を打ち抜いた!!これは逆転か!!』
「おっしゃあっ!!その調子だ!!」
「これで勝てば大儲けですね!!」


ゴンゾウは仮面を身に着けた状態でオーガと戦い、武器を着用せずに素手だけで戦う。この闘技場では武具や防具の装備は禁止されており、戦わされる相手は魔物限定である。格闘家の職業の人間でも素手のみで魔物と戦わされるのは危険なのだが、もしも勝ち上がれば高額の賞金を得られる。

既にゴンゾウはオーク、赤毛熊、トロール、ゴーレムといった魔物を打ち倒しており、最後の相手はオーガだった。オーガは巨人族にも勝る体躯と怪力を誇るが、数々の強敵を打ち倒して成長したゴンゾウの敵ではない。


「ふんっ!!」
「ウガァッ!?」
「も、持ち上げた!?あの巨体を!?」
「何をするつもりだ!?」


ゴンゾウはオーガの背後に回り込み、後ろから抱きしめて力尽くで持ち上げた。そして渾身の力を込めてオーガを地面に叩きつけた。


「レナ直伝……バックドロップ!!」
「ガハァアアアッ!?」
『き、決まったぁっ!!』


レナから教わったプロレス技をゴンゾウは繰り出し、凄まじい勢いで頭から地面に叩き落されたオーガは白目を剥いて倒れた。実況はそれを見てゴンゾウの勝利を確信すると、ゴンゾウは全身から汗を流しながらダインとミイネが居る観客席に向けて腕を上げる。


「勝ったぞぉっ!!」
「や、やった!!これで今日の宿代は確保だ!!」
「まさか鬼人化も使わずに勝つなんて……」


大会の規定では五連勝すれば賞金を得られるため、ゴンゾウは莫大な賞金を得る権利を手に入れた。ダイン達は実は闘技場に参加したのは旅の資金を集めるためであり、これで今日の所は野宿せずに済みそうだった――





――ゴンゾウの活躍のお陰でダイン達は久々に大金を入手し、これでしばらくの間は旅は安泰だと思われたが、次の日の朝にミイネは寝間着姿で苛立った表情を浮かべながらダインとゴンゾウに正座させていた。


「それで……昨日あんなに稼いだお金は何処に行ったんですか?」
「い、いや……つい、昨日は羽目を外しすぎちゃって……」
「すまん……もうこれだけしか残っていない」


ゴンゾウとダインは銅貨が数枚しか入っていない小袋を渡し、それを確認したミイネはこめかみに青筋を浮かべる。昨日の賞金はゴンゾウの厚意で三分割してそれぞれに分け与えたのだが、たった一晩でダインとゴンゾウは使い果たしてしまった。


「ダインさんは何にお金を使ったんですか?まさか、娼館に行ったりしたんじゃ……」
「い、行くわけないだろ!?僕はその、昨日のカジノで少しだけ遊んで行こうとしたら最初は物凄く勝ったんだ!!だけど、遊んでいくうちに少しずつ減って言って……気が付いたらほとんど金が残ってなかった」
「それは嵌められたんですよ!!最初に勝たせて後から金を搾り取る賭博の常套手段です!!」
「ううっ……」


ダインはカジノで大損してしまい、ミイネは頭を抱えた。普段のダインはあまり賭博は行わないのだが、思いもよらぬ大金を得たので羽目を外しすぎた様子だった。


「それでゴンゾウさん?」
「腹が減ったから食べ歩きしていたら、気付かないうちにこの街で一番の料亭で食べていた」
「まあ、ゴンゾウさんらしいですね……」


巨人族であるゴンゾウは人間以上に食欲旺盛なので腹が減ったら我慢できず、高級料亭に立ち寄って金を使い果たしていたらしい。ミイネが同行していれば二人の行動を止められたが、彼女も疲れていたので宿に泊まっていたのが災いした。

一番の年下であるミイネの方が金管理がしっかりしており、今後はダインとゴンゾウに無暗に大金を与える事はしない事に決めた。ミイネはこの二人と常に旅をしていたレナがどのように扱っていたのか気にかかり、改めてレナを恋しく思う。


「ああ……レナさんを連れて来れば良かった」
「「面目ない……」」


ミイネはレナが一緒ならば二人が暴走する事はないと思い、今度から旅をするときはレナを連れて行く事を決意した。



※ちなみにレナがカジノに同行していた場合

アイリス「レナさん、相手はワンペアで勝負してきますよ!!」←ポーカーで相手の手札を教える
レナ「よし、それなら俺の勝ちだ!!」←せこい
ダイン「やった!!これで10連勝だ!!」
カジノ関係者「ぐぬぬっ……」

あまりに勝ちすぎてカジノ側からイカサマだと疑われます。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。