不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,909 / 2,090
蛇足編

閑話 《リンダの意外な弱点》

しおりを挟む
「レナたん、遅いなぁっ……あ、もしかして道に迷ってるのかな?」
「砂漠だから道はありませんが……レナ様なら大丈夫でしょう」


ティナとリンダは岩山にてレナの帰りを待っていた。砂漠を横断するには砂船に乗らなければならないが、その肝心の砂船は現在修理中で動かない。小型船ならば残っているが、安全性を考慮してレナだけが砂漠都市に向かう。

二人はレナが作り出した黒渦の前で待機し、彼が戻ってくるのを待ち構える。その様子を商人達は心配そうに眺めていた。レナの強さは先ほど思い知らされたが、やはり砂漠を一人で横断するのは危険過ぎる。


「あ、あの……本当に大丈夫なのでしょうか。一人でこの砂漠を越えるのはやはり無謀では」
「大丈夫です。レナ様はただの人間ではありません、歴史に名を残す英雄なのですから」
「あの方が英雄……」


リンダの言葉に商人達は納得せざるを得ず、彼女の言う通りにレナの力は常識を遥かに超えていた。勇者の子孫でもあり、アイリスによって適切な指導で鍛え上げられたレナは今では世界でも指折りの魔法剣士として育った。


「レナたんが戻ってくるまで暇だな……そうだ!!ご飯でも作ってあげようよ!!」
「それはいいですね。あ、ですが食材の方が……」
「あ、そうだった。荷物は全部レナたんが預かってるんだったね」


旅を行う際はレナは空間魔法で余計な荷物は異空間に預けている。異空間に食材を預けて置けば腐る事もないため、食材の管理も彼に任せていた。これでは料理ができないとティナが困っていると、リンダは商人に食材が余っていないのかを尋ねる。


「申し訳ありませんが食材を分けてくれませんか?勿論、お金は払います」
「それは構いませんが、ここで料理をするのですか?」
「何か問題が?」
「いえ、その……この砂漠には少々厄介な魔物が住み着いております。別に危害を加えなければ何もしてこないのですが、女性の方は……」
「大丈夫です。魔物が現れても私が対処しましょう」
「リンダは凄く強いんだよ~」
「は、はあっ……そう言う事ならば用意しましょう」


商人達は二人の言葉を聞いて荷物の中から食材を分け与えようとすると、岩山で見張りを行っていた兵士が大声をあげる。


「や、やばい!!奴だ、奴が現れたぞ!!」
「えっ!?」
「ま、まさか!?」
「奴とは?まさかまた土鯨が……!?」


レナが不在の時に岩山に魔物が接近し、即座にリンダは戦闘態勢に入った。だが、岩山に迫るのは土鯨の類ではなく、全身が漆黒に覆われたミミズのような巨大な魔物だった。


「ギュルルルッ!!」
「あ~!?サンドワームさんだ!!」
「えっ……!?」
「あ、あれです!!先ほど話した魔物です!!」


商人達が心配していたのはサンドワームである事が判明し、基本的にはこの世界ではサンドワームは人間に対して滅多に危害を加える事はない。むしろ農家の間ではサンドワームは大地に栄養を与える存在として重宝され、大切に扱われている。

このアチチ砂漠にはサンドワームも生息していた事が判明し、魔物使いであるティナはサンドワームを見ても特に嫌悪感を抱かない。だが、リンダはサンドワームが現れたのを見て目を見開き、身体が震え始めた。


「ギュルルッ……」
「わあっ、こっち見てるよ。お腹空いてるのかな?」
「…………」
「あれ、リンダ?」


サンドワームは食材の香りに釣られて現れたのか岩山の上に立っているティナとリンダの元に顔を近づけ、それを見たリンダは立ち尽くしたまま動かない。不思議に思ったティナはリンダに視線を向けると、そこには立ったまま白目で気絶しているリンダの姿があった。



※この世界の大抵の女性はサンドワームを大の苦手としています。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。