不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

白銀龍

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「あれが黄金のサンドゴーレムか……凄いな、あいつを捕まえたらいくらぐらい儲かるんだろう」
『気にするところはそこですか』


レナの言葉にアイリスが突っ込みを入れ、こうして彼女の方から声を掛けてくるのは久々だった。砂船からレナ達はしばらくは黄金のサンドゴーレムを眺めていたが、やがてサンドゴーレムは砂の中に潜って姿を消してしまう。


『ゴォオオッ……!!』
「あ、消えちゃった!?」
「黄金のサンドゴーレムは普段は砂の中に潜っているそうです」
「なるほど、あの巨体で砂の中を潜られたら捕まえる方法もないか……」


全身が砂金で構成されている黄金のサンドゴーレムを狙う輩は多いが、サンドゴーレムは普段は地中に潜っているので捕まえる事も難しい。砂海では砂船に乗らなければ移動もままならないため、捕まえるのは困難な相手だった。


「もう消えちゃった……もっと見たかったのに」
「リンダの発勁で地面の中から吹き飛ばせない?」
「さ、流石にそれは無理かと……」


あっさり消えてしまった黄金のサンドゴーレムにティナはがっかりするが、目的は果たせたのでレナはコトミン達の元へ戻る事を決めた。


「それじゃあ、そろそろ帰ろうか。砂漠も正直飽きてきたし……」
「そうだね~」
「流石にこの暑さは堪えますね……」


砂漠は十分に堪能したのでレナ達はコトミン達が待つ街に引き返す事を決めたが、甲板から客室に戻ろうとした時に船員が上空を見上げて騒ぎ出す。


「うわぁっ!?な、何だありゃっ!?」
「ば、馬鹿でかい化物が浮いてるぞ!?」
「え?何々?」
「いったい何を見て……あ、あれは!?」
「何だ!?」


船員の声を聞いてレナ達は顔を見上げると、そこには砂船を遥かに超える巨体の生物が浮いていた。その生物は全身が銀色の鱗に覆われた巨大な龍であり、かつてレナが塔の大迷宮で対峙した「白竜」と容姿は似ているが大きさは桁違いの差があった。

巨大な龍の正体は「白銀龍」と呼ばれる白竜の成体種であり、その大きさは炎龍にも匹敵した。白銀龍は世界中を駆け巡り、その姿は滅多に見られないと言われている。だから白銀龍を見た人間は幸運が訪れると言われる程の有難い存在だった。


「わわわっ!?あれってもしかして白銀龍!?」
「まさかこの目で見られる日が訪れるなんて……」
「あれが白銀龍か……リーリスの飼っているペットと比べて随分と大きいな」


白銀龍は竜種の中でも珍しく好戦的ではなく、人間に対して危害を加えた事は一度もない。しかし、その強さは計り知れず炎龍や大地龍にも匹敵する存在である事は間違いない。



――オオオオオオッ!!



鳴き声を上げながら白銀龍は砂漠の空を駆け抜け、凄まじい速度で去って行った。レナ達はそれを見送る事しかできず、白銀龍の姿が完全に見えなくなるまで見届けようとした時、レナは白銀龍が移動の際中に何かを落とした事に気が付く――






――白銀龍が姿を消した後、レナは飛翔術を利用して砂漠を移動する。彼の目的は白銀龍が落とした何かを見つけるためであり、アイリスにも協力してもらって白銀龍の落とし物を見つけ出す。


「あった!!これが白銀龍の……」
『鱗です。良かったですね、滅多に手に入る代物じゃありませんよ』


白銀龍が落としたのは鱗である事が判明し、運良く鱗は砂海に飲み込まれる前に回収する事ができた。鱗の大きさは1メートルを超えており、全身が銀色に輝いていた。


「これは高く売れそうだな」
『売らないでください。滅多に手に入る代物じゃないんですから……ちなみに反鏡剣の素材でもあるんですよ』
「え、そうなの!?」


レナが所有する鏡刀は元々は「反鏡剣」と呼ばれる武器であり、あらゆる魔法を跳ね返す性質を持つ。その反鏡剣の原材料は白銀龍の鱗である事が判明し、滅多に手に入る代物ではないのでアイリスは保管する事を勧めた。


『何かに使えるかもしれませんし、ちゃんと大切に保管しておいてください』
「分かったよ。皆のお土産として持って帰ろう」


白銀龍の鱗を空間魔法で異空間にしまうと、レナは砂船へと戻ろうとした。最後にレナは白銀龍が去った方角に視線を向けるが、既にその姿は見えなかった。巨体でありながら白銀龍の移動速度は凄まじく、もしかしたら炎龍よりも早く動けるかもしれない。

炎龍に匹敵する力を持ちながら白銀龍は温厚な性格で人間に危害を加えた記録は残されておらず、そんな偉大な生物にレナは敬意を抱く。最後に彼は白銀龍が去った方向に敬礼を行い、砂船へと帰還する事にした――





※ちなみに白銀龍は最弱職の初級魔術師にも出てきた白銀龍と同一個体です。
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