不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

閑話 《アイラの企み》

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「私のビキニアーマーをどうにか改造してシズネちゃんに着せたいのだけど……」
「止めて!!そんな事を私に相談しないで!!」
「あ、あたしに話されても困るんだけどね……」


アイラはある日にマリアとバルを呼び出し、いつになく神妙な表情で二人に自分が装着していたビキニアーマーを見せつける。年代物だが素材は良いので現在も使えなくはないが、アイラ以外の人間が身に着ける場合は問題があった。

ハヅキ家では戦士として育てられた者はビキニアーマーを装着する習慣が存在し、実はアイラとマリアの母親のハヅキも装着している。彼女の場合は当主になる前の時代に装着しており、実を言えばアイラのビキニアーマーはアイラの装着していた代物を参考にして作られている。


「マリア、どうしてビキニアーマーをそんなに否定するの?貴女だって魔術師じゃなかったら装着していたのよ」
「いや!!私はそんな物は身に付けないわ!!だいたいなんでそんなに露出度が高いのよ!?鎧の性能としておかしいわ!!」
「あたしも昔は装着した事もあったけど、どうもそういうのは苦手でね」


バルもアイラに憧れてビキニアーマーを装着していた時代はあったが、流石に年齢を重ねるとビキニアーマーを身に着ける事に抵抗感が生まれて装着していない。二人の反応にアイラは困った表情を浮かべる。


「はあっ……シズネちゃんなら私の気持ちを分かってくれると思うの。でも、彼女は胸がその……ちょっと小さいでしょう?」
「そ、そうね」
「うん、まあ……そうだね」


珍しくマリアもバルもアイラの言葉を聞いて何とも言えない表情を浮かべ、もしもシズネがビキニアーマーを装着した場合、彼女だと胸当ての部分が悲惨な事になってしまう。そこでアイラは自分のビキニアーマーを辞めてシズネ専用のビキニアーマーを装着する計画を立てた。


「そこで二人にお願いがあるの。ギルドと専属契約している鍛冶職人さんがいるでしょう?その人たちにシズネちゃんのサイズに合わせたビキニアーマーを……」
「ちょっと用事を思い出したわ。私はこれで失礼するわね」
「あ、こら!!一人で逃げるんじゃないよ!!」


マリアは水晶札を取り出して転移魔法で逃げ出そうとしたが、それを見たバルは慌てて引き留めた。そんな二人にアイラは困った表情を浮かべた。


「もう、しょうがないわね。二人が協力してくれないならこの間に仲良くなったガジンという小髭族さんに頼むしかないわ」
「伝説の鍛冶師に何を作らせようとしているの!?」
「何時の間に仲良くなったんだい!?」


ガジンは小髭族の間でも伝説的な存在として扱われており、この大陸では彼を越える鍛冶師は存在しない。レナの退魔刀も打ち直してくれたのが彼であり、もしも彼との出会いが無ければレナの退魔刀は聖剣に匹敵する武器にはならなかった。

どうにかアイラを止めようとバルとマリアは視線で会話を行い、話題を変えようとレナの話へと切り替える。彼が旅立ってからそれなりに時が経過しており、母親として心配ではないか尋ねた。


「そ、そういえばレナの奴はどうしたんだろうね?あいつは元気にしてるか心配じゃないのかい?」
「そうね、姉さんも気になるでしょう?」
「いいえ、別に?」
「「え?」」


今までのアイラは一人息子であるレナと離れていたら彼の身を案じていたが、今の彼女はレナが何をしていようと気にする事はなかった。母親としてレナが大人になるまでは育てる事を決めていたが、もうすっかり彼は大人になっていた。


「レナなら何処に行っても大丈夫よ。あの子は私の子供だけど……もうすっかり私を越えてしまった」


レナとの別れの際にアイラは全力で彼に挑んだ。その結果、今の自分ではレナの足元にも及ばない事を自覚する。仮に全盛期のアイラでさえもレナに挑んだとしても勝てる見込みはなく、もう彼は完全にアイラを越えていた。

不思議な事にアイラは昔にレナと似たような人物と戦い、手も足も出ずに敗れた事を思い出す。あの人物が何者だったのかは分からないが、レナと似た雰囲気を発していた気がする。


「レナはもう立派な大人よ。あの子が何をしようと私にはもう関係ない……だって、もう子供じゃないんだからどんな問題事も自分で解決できるわ」
「姉さん……」
「アイラさん……」


彼女の言葉にマリアとバルは感動し、目の前の彼女は母親としての役目を全うした立派な人物に見えた。だが、そんな二人にアイラは自分で描いたビキニアーマーの計画書を渡す。


「でも母親としてやっぱりレナの奥さんにはハヅキ家の習慣を継いでほしいの。ということで二人にはこの私が考えた特製ビキニアーマーの製作の手伝いを……」
「マリア!!早く転移を!!」
「ええ、もう発動しているわ!!」
「あ、こら!!待ちなさ~い!!」


話を戻そうとしてきたアイラにバルは急いでマリアと共に逃げ出し、そんな二人をアイラは追い掛け回す。



※10分後

マリア「最上級魔法!!」
バル「撃剣!!」
アイラ「回し受け!!」

壮絶な死闘の果てにアイラが勝利し、特製ビキニアーマーの製作は開始されました(恐怖)
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