不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

英雄色を好む

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「まあまあ、英雄色を好むと言いますし……それにレナさんだって世間では女の子ばかり連れて旅するから女好きだと思われてますよ」
「え!?そうなの!?」
「女好きなのは……否定できないわね。三人も結婚してるんだから」
「そ、そうですね……」
「ええっ!?」


レナはシズネとリンダの言葉にショックを受けるが、冷静に考えれば自分の周りには女の子しかいないことに気が付く。ダインやゴンゾウと旅をしていた時はそんな風に言われることはなかったが、現在は二人と行動を共にする機会も減ってしまった。

そもそもレナは三人の女性と結婚しており、それを考えれば世間で女好きなどというイメージを持たれるのは仕方がない。結婚した開いて以外にも複数人の女性に好かれているのも事実のため、女好きなどという不名誉な噂を立てられても仕方ない。


「ううっ、そんな噂をされていたなんて……こうなったら魔獣達だけで旅をしてやる」
「え~!?」
「そ、それはどうかと思いますが……」
「レナは女好きでも私は気にしない。一番愛されているのは私だから」
「ちょっと、それは聞き捨てならないわよ」
「「ぷるぷるっ(駆け落ちする?)」」


スラミンとヒトミンを抱き上げてレナは距離を取ると、そんな彼に慌てて女性陣は引き留めようとする。一方でホネミンの方はレナが興味を持った魔銃に視線を向け、リーリスに声を掛けた。


「この魔銃は私でも使えるんですか?」
「ええ、問題ありませんよ。なんなら使ってみますか?」
「そうですね、なら試しに撃ってみますか。レナさんそこを動かないでください。私がレナさんのハートを打ち抜きますから」
「死ぬわ!!物理的に!!」


冗談気味にホネミンはレナの胸元に魔銃を構えると、流石に撃たれるのは簡便なレナは彼女に突っ込みを入れる――





――魔銃を手にしたホネミンはリーリスが急遽作り出した射撃場に辿り着き、そこで魔銃の練習を行う。彼女は魔銃を構えて何度か練習を行い、事前に用意した木造人形に向けて発射した。


「よし、撃ちますよ」
「気を付けてくださいね」
「間違っても人に当てるなよ」
「ふふふ、私は命中の技能も持っているんです。狙撃なら自信はありますよ」


何だかんだでホネミンは英雄と称されるほどの能力を所持しており、彼女もレナと同様に複数のスキルを習得している。元々は彼女はアイリスと交信していたため、リヴァイアサンに飲み込まれて身体が溶ける前はホネミンの助言を受けて自分を強化していた。

命中の技能を発動させてホネミンは発砲すると、魔銃から弾丸が発射された。しかし、その弾丸の移動速度は遅く、木造人形に的中したがめり込んだだけで壊れもしなかった。


「あれ?意外と威力が弱いんですね」
「そりゃそうですよ。この弾丸は地球の拳銃程度の威力しかありませんから」
「え?どういう意味?」
「この世界の基準では地球の拳銃なんて玩具同然なんですよ」


レベルやスキルの概念があるこの世界では地球で造り出された拳銃などは脅威にはなり得ず、この世界の武人ならば拳銃の弾丸だって見切ることも可能だった。実際にレナも拳銃の弾丸が遅く感じられ、木造人形を壊す威力もない。

この世界の人間は地球人とは身体の構造も異なっており、仮に地球では脅威となる銃などの武器の類もこの世界では脅威にもならない。無論、核爆弾などの兵器ならば話は別だがそれらの兵器の類を作られることはない。


「その拳銃だと子供に撃っても痣ができる程度の威力ですね。魔物相手には通用しません」
「何だ……私も遂に銃を手に入れて無双ができる展開だと思ったのに」
「銃使いはカノンで十分だよ」
「いえいえ、その拳銃の本当の力はここからです」


リーリスは拳銃を返して貰うと新たらしい弾丸を装填し、彼女が用意した弾丸は緑色だとレナは気付く。正確には硝子製の弾丸に緑色の液体が満ちており、彼女はレナの腕を掴む。


「この拳銃の本当の使い方はこうですよ」
「え、何を……うわぁっ!?」
「レナさん!?」


躊躇なくレナの腕にリーリスは弾丸を撃ちこみ、いくら子供でも殺すことができない威力とはいえ、至近距離から撃ちこまれれば痛みはあった。レナはいきなり自分の身体に弾丸を撃ちこまれて痛みを覚えるが、すぐに痛みが引いていくことに気が付く。


「あれ、これって……」
「私特製の回復液が込められた弾丸です。これを撃ちこめば体内に回復液が流れ込んで怪我も治って体力も戻ります」
「そういうことは先に言いなさいよ!?」
「び、びっくりした……」


レナに撃ちこまれたのは回復液入りの弾丸だと判明し、こちらの弾丸は水晶製で標的に当たると回復液が噴き出す。そのお陰でレナは肉体が回復した。この拳銃ならば使い道によっては色々と役立ちそうだった。
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