不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

緑影の妨害

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「よし、行こう!!」
「うん!!走るのは得意だよ!!」


レナはティナと共に街道を駆け出し、まずは地図を確認して目的地までの距離を確認した。アイリスに頼れば敵の配置や何処の道を通り抜ければ最短に辿り着けるか教えてくれるのは分かっているが、今回はティナと二人だけの力で挑むことにする。


(試練か……上等!!)


ティナとの結婚は成り行きだったとはいえ、レナとしても彼女が傍にいることは嫌だった。切っ掛けはどうであれレナはティナを手放すつもりはなく、彼女のためにも自分のためにも試練に挑む。


(気配感知と魔力感知、それと他にもいくつかの技能は使っておこう)


移動中もレナは敵を見逃さないように感知系の技能を発動させ、ついでに風の精霊の力を借りることにした。緑影は見隠しのマントなる厄介な魔道具を所有しており、決して油断できる相手ではない。

風の精霊を呼び寄せてレナは自分達の周囲に精霊を待機させ、もしも何者かが近寄ったら精霊に動きがあるはずだった。そして移動を開始してから30秒もしないうちに精霊に異変が起きる。


「ティナ!!頭を下げて!!」
「わわっ!?」
『っ!?』


ティナの周りに待機させていた精霊が不自然に動き、それに勘付いたレナはティナに頭を下げるように指示を出す。姿は見えないが確かに何かがいる気配を感じたレナは蹴りを繰り出す。


「そこかっ!!」
『きゃっ!?』


ティナの背後に何時の間にか緑色のマントを被った女性が迫っており、見隠しのマントを利用して姿を隠していたようだがレナの蹴りを受けて吹き飛ぶ。手加減はしたので死ぬことはないが邪魔者は一人いなくなった。


「だ、大丈夫かなあの人?」
「手加減したから平気だよ!!」


蹴り飛ばされた女性を見てティナは心配するが、レナは女性の緑影がティナを狙ったのを見てやはりアルンは男の緑影をティナに近づけさせないようにしていた。ティナは胸元に砂時計を挟んでいるので女の緑影でしか手を出せず、もしも男の緑影が手を出したらアルンが許すはずがない。

意外と胸の間に砂時計を挟む作戦は功を奏し、恐らくこれからは女性の緑影だけがティナを狙う。そして反対に男性の緑影はレナを狙うと思われた。レナとしては相手が男の方が都合が良く、女性相手だと手加減する必要はあるが男の場合は遠慮する必要はない。


「人が多い場所に出る!!しっかり付いてくるんだぞ!!」
「う、うん!!絶対に離さないからね!!」


ティナと手を繋いでレナは人通りの多い場所に出ると、北の城壁を確認した。もう既に目的地まで300メートルも離れておらず、後は大通りを真っ直ぐ進むだけで辿り着く。ティナは意外と足が速いのでここまで難なくこれたが、問題は人通りの多い場所で彼女にはぐれずに通過できるかだった。


(思っていた以上に人が多い。それに怪しい奴等もちらほらと見えるな……これは油断できないぞ)


大勢の人間が行き交う大通りを見てレナは観察眼を発動させ、怪しい人物がいないのかを確かめる。人込みに紛れて武装した森人族が何名か確認し、それを見てレナは正面から移動するのは無謀だと考えた。


(どうやって移動する?ティナを抱えて建物の屋根の上を跳躍して移動するか……いや、それだと狙い撃ちにされるな)


森人族は弓の名手ばかりなので下手に目立つ行動を取ると弓矢で狙われてしまう。レナだけならばなんとかなるがティナを抱えた状態では守り切れる自信はなく、他の方法を探した。


(ティナを安全な場所に避難させた後、俺が目的地に先に辿り着いて空間魔法でティナを連れ出す?いや、ティナと離れるのは危険過ぎる)


空間魔法を使用すればどんなに遠くにいても連れ出すことはできるが、安全な場所を確保すること自体が難しい。そもそも異空間に繋がる黒渦を開いたままではレナは他の魔法は一切扱えず、もしも集中力が途中で途切れれば黒渦が維持できない。

考えている間にも時間は過ぎていき、既に砂時計は半分まで落ちていた。レナは悩んだ末に最短距離で一直線に向かう方法を取る。かなり強引な手段になるが他に策は思いつかず、ティナに背中を向ける。


「ティナ!!俺の背中から離れるな!!」
「わわっ!?な、何するの!?」
「いいからしっかりしがみついてろ!!」
「わ、分かった!!信じるからね!!」


ティナは言われた通りにレナの背中に乗り込むと決して離れないように抱きつく。ティナが誤って落ちないようにレナは異空間から神器チェーンを取り出すと自分と彼女の身体を巻き付ける。傍から見るとレナがティナを鎖で拘束しているように見えるため、大通りの人間の注目を浴びてしまう。


「な、なんだあいつら……鎖で自分達を縛ってるぞ!?」
「どんなプレイだ!?」
「まさか誘拐犯じゃないよな……」
「レナたん……ちょ、ちょっと恥ずかしいよ」
「俺もだよ……でも、こうするしかないんだ」


流石のティナも周りの視線に恥ずかし気な表情を浮かべるがレナは時間を確認してこれ以外に方法はないと判断し、覚悟を固めて前を向いた。
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