2,019 / 2,090
蛇足編
閑話 《父として娘の幸せのために……》
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――アルンがレナに敗れた後、彼は国王に報告を行う。国王はアルンが母親の形見を持ち出してまでレナに勝負を挑んだことには驚いたが、彼が妹のために圧倒的な実力差のあるレナに挑んだことを評価した。
「そうか……遂にアルンも奴を認めたか」
「お父様!!いい加減にしてください!!いつまでレナ様とティナに迷惑をかけるつもりですの!?」
「い、いや……今回の件は儂ではなくアルンがやったことだが」
事情を知ったノルは国王の元へ訪れてまたもやレナとティナに迷惑をかけたことを怒鳴る。国王としては今回の出来事はアルンの責任が大きいのだが、流石にノルの我慢の限界だった。
「これ以上にレナ様にちょっかいをかけるのは止めてください!!ティナも可哀想ですわ!!好きな殿方と結婚できたのに父親と兄が仲を引き裂こうとするなんて……」
「分かっておる!!もうこれ以上に奴に……いや、婿殿に迷惑はかけん」
「えっ!?お父様、今何とおっしゃったのですか!?」
ノルは国王の発言に驚きを隠せず、これまでに国王はレナのことを「婿殿」などと呼んだことはない。だが、アルンからの報告を受けて国王もようやくレナをティナの婿として相応しい相手だと認める。
「あの者は確かに強い、それに人を引き寄せる才能を持っている。命を狙った相手も許す度量も持ち合わせている……流石に儂も分かっておる」
「ようやくお父様もレナ様を認めてくれるのですね!?」
「いや……実力だけならば前々から儂は奴を認めていた」
「ど、どういう意味ですの?」
意外なことに国王はレナの実力は高く評価していたと聞いてノルは驚いたが、国王がレナを頑なに認めなかったのはティナの幸せを考えてのことだった。
「忘れたかノルよ?あの男は人間だ、いずれ時が経過すればティナよりも先に老けて死んでしまう。そうなった場合、ティナは夫が死んだあとも何百年も生き続けなければならん」
「あっ……!?」
「我々王族は普通のエルフよりも長寿であることは理解しているだろう。しかし、人間の場合はせいぜいが100年程度しか生きられん。もしもあの男が死ねばティナは何百年も一人で生き続けなければならん。そしてティナはあの男以外に誰かを好きになることは有り得ん」
「そ、それは……」
言われてみてノルはレナが人間であることを思い出し、いくら規格外の力を持っていたとしても彼は人間ならば数十年後には死んでしまう。しかし、ティナの場合はヨツバ王国の王族であるが故に普通のエルフよりも長寿であるため、下手をしたらレナが死んだ後も何百年も生き続けるかもしれない。
「ティナの魔力は儂を遥かに超える。魔力を多く持つエルフは長寿の傾向があるのは知っているな?きっと、お前やアルンよりもティナは長く生きるだろう」
「……お父様はティナが一人で生きていくことに不安を抱いていたんですのね」
「そうだ。あの男は死ねばティナはあまりにも不憫だ……寿命を伸ばす薬を飲ませたとしてもせいぜいが200年程度しか生きられん」
ヨツバ王国にはエルフ以外の種族の寿命を伸ばす秘薬が存在し、その薬を飲めば普通の人間でも倍近くの寿命を得られる。しかし、この秘薬を飲ませたとしてもレナがティナよりも先に死ぬのは間違いない。ティナはレナと共に過ごす時間よりも長い時を生き続けることになる。
娘の幸せを考えるのであれば国王はティナの結婚相手はエルフを選んでほしかった。ティナほどに長生きできるエルフは他にはいないだろうが、それでも人間であるレナよりも共に長い人生を歩むことができる。だから国王はレナとの結婚だけは認められなかったが、アルンの課した試練を乗り越えた以上はレナのことを認めるしかない。
「お父様の気持ちはよく分かります。ですけど、あの御二人なら大丈夫ですわ」
「どうしてそう言い切れる?ティナはあの男が死ねば……」
「お父様の考えに一つだけ誤りがありますわ。お母様が死んだとき、お父様は自分が一人になったと思ったのですか?」
「な、何を言い出す!?」
自分の妻が亡くなった時のことなど国王は思い出したくもないが、彼の娘としてノルは言わなければならなかった。
「お母様が死んだときは私も悲しかった……ですが、私にはお父様も兄様もティナも……そしてカレハお姉様もいました」
「あっ……」
「家族を失う悲しみは私も知っています。しかし、家族がいるからこそ手に入る幸せもたくさんありますわ。ティナだってレナ様と子供ができればその子供達がティナの悲しみを慰める存在になるでしょう。もちろん、私も兄様もティナを支えてみせます」
「……そうか、そうだったな」
レナが死んだとしてもティナとの間に子供ができればティナにとって生きる希望と成りえる。暗い未来ばかりを想像してきた国王にとってはノルの言葉は希望に満ち溢れていた。
「今度お父様がレナ様と出会ったら今までの非礼を詫びましょう。そしてレナ様の義理の父親として接するのです」
「うむ……ノルよ、いつの間にか成長したな。寝ぐせは相変わらず酷いままだが」
「そ、それは今は言わなくていいことでは!?」
「ははははっ!!」
国王はノルの話を聞いて今まで胸に秘めていた不安が解消された気がした。こうして国王はレナとティナの仲を認め、次に会う時は義理の父親としてレナに詫びを告げることを誓う――
※おまけ
デブリ「だが、ティナが第二王妃なのは気に喰わん!!必ず第一王妃にしなければ!!」
ノル「それは同感ですわ!!」
「そうか……遂にアルンも奴を認めたか」
「お父様!!いい加減にしてください!!いつまでレナ様とティナに迷惑をかけるつもりですの!?」
「い、いや……今回の件は儂ではなくアルンがやったことだが」
事情を知ったノルは国王の元へ訪れてまたもやレナとティナに迷惑をかけたことを怒鳴る。国王としては今回の出来事はアルンの責任が大きいのだが、流石にノルの我慢の限界だった。
「これ以上にレナ様にちょっかいをかけるのは止めてください!!ティナも可哀想ですわ!!好きな殿方と結婚できたのに父親と兄が仲を引き裂こうとするなんて……」
「分かっておる!!もうこれ以上に奴に……いや、婿殿に迷惑はかけん」
「えっ!?お父様、今何とおっしゃったのですか!?」
ノルは国王の発言に驚きを隠せず、これまでに国王はレナのことを「婿殿」などと呼んだことはない。だが、アルンからの報告を受けて国王もようやくレナをティナの婿として相応しい相手だと認める。
「あの者は確かに強い、それに人を引き寄せる才能を持っている。命を狙った相手も許す度量も持ち合わせている……流石に儂も分かっておる」
「ようやくお父様もレナ様を認めてくれるのですね!?」
「いや……実力だけならば前々から儂は奴を認めていた」
「ど、どういう意味ですの?」
意外なことに国王はレナの実力は高く評価していたと聞いてノルは驚いたが、国王がレナを頑なに認めなかったのはティナの幸せを考えてのことだった。
「忘れたかノルよ?あの男は人間だ、いずれ時が経過すればティナよりも先に老けて死んでしまう。そうなった場合、ティナは夫が死んだあとも何百年も生き続けなければならん」
「あっ……!?」
「我々王族は普通のエルフよりも長寿であることは理解しているだろう。しかし、人間の場合はせいぜいが100年程度しか生きられん。もしもあの男が死ねばティナは何百年も一人で生き続けなければならん。そしてティナはあの男以外に誰かを好きになることは有り得ん」
「そ、それは……」
言われてみてノルはレナが人間であることを思い出し、いくら規格外の力を持っていたとしても彼は人間ならば数十年後には死んでしまう。しかし、ティナの場合はヨツバ王国の王族であるが故に普通のエルフよりも長寿であるため、下手をしたらレナが死んだ後も何百年も生き続けるかもしれない。
「ティナの魔力は儂を遥かに超える。魔力を多く持つエルフは長寿の傾向があるのは知っているな?きっと、お前やアルンよりもティナは長く生きるだろう」
「……お父様はティナが一人で生きていくことに不安を抱いていたんですのね」
「そうだ。あの男は死ねばティナはあまりにも不憫だ……寿命を伸ばす薬を飲ませたとしてもせいぜいが200年程度しか生きられん」
ヨツバ王国にはエルフ以外の種族の寿命を伸ばす秘薬が存在し、その薬を飲めば普通の人間でも倍近くの寿命を得られる。しかし、この秘薬を飲ませたとしてもレナがティナよりも先に死ぬのは間違いない。ティナはレナと共に過ごす時間よりも長い時を生き続けることになる。
娘の幸せを考えるのであれば国王はティナの結婚相手はエルフを選んでほしかった。ティナほどに長生きできるエルフは他にはいないだろうが、それでも人間であるレナよりも共に長い人生を歩むことができる。だから国王はレナとの結婚だけは認められなかったが、アルンの課した試練を乗り越えた以上はレナのことを認めるしかない。
「お父様の気持ちはよく分かります。ですけど、あの御二人なら大丈夫ですわ」
「どうしてそう言い切れる?ティナはあの男が死ねば……」
「お父様の考えに一つだけ誤りがありますわ。お母様が死んだとき、お父様は自分が一人になったと思ったのですか?」
「な、何を言い出す!?」
自分の妻が亡くなった時のことなど国王は思い出したくもないが、彼の娘としてノルは言わなければならなかった。
「お母様が死んだときは私も悲しかった……ですが、私にはお父様も兄様もティナも……そしてカレハお姉様もいました」
「あっ……」
「家族を失う悲しみは私も知っています。しかし、家族がいるからこそ手に入る幸せもたくさんありますわ。ティナだってレナ様と子供ができればその子供達がティナの悲しみを慰める存在になるでしょう。もちろん、私も兄様もティナを支えてみせます」
「……そうか、そうだったな」
レナが死んだとしてもティナとの間に子供ができればティナにとって生きる希望と成りえる。暗い未来ばかりを想像してきた国王にとってはノルの言葉は希望に満ち溢れていた。
「今度お父様がレナ様と出会ったら今までの非礼を詫びましょう。そしてレナ様の義理の父親として接するのです」
「うむ……ノルよ、いつの間にか成長したな。寝ぐせは相変わらず酷いままだが」
「そ、それは今は言わなくていいことでは!?」
「ははははっ!!」
国王はノルの話を聞いて今まで胸に秘めていた不安が解消された気がした。こうして国王はレナとティナの仲を認め、次に会う時は義理の父親としてレナに詫びを告げることを誓う――
※おまけ
デブリ「だが、ティナが第二王妃なのは気に喰わん!!必ず第一王妃にしなければ!!」
ノル「それは同感ですわ!!」
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