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蛇足編
閑話 《イレアビトの遺産》
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「ようやくここまで辿り着いたわね……今度こそ本当に王妃の遺産があるのよね!?」
「騒ぐな、もうこの場所以外に手掛かりはない」
「……ここが母さんが居た孤児院」
ミレトはかつて自分の母親が子供の頃に育った孤児院に訪れていた。この孤児院は旧帝国が経営しており、表向きは孤児を育てるための施設だが、実際は子供達を暗殺者に教育するための施設として作られていた。
イレアビトは他の子供と共に旧帝国の暗殺者として育て上げられた。彼女が帝族であろうと関係なく、厳しい訓練を受けていたらしい。これまで王妃の遺産があると思われた場所は全て探索したが、結局は何もなかった。最後の希望は王妃が育った孤児院だけとなった。
「さっさと入りましょう」
「ミレト、行くぞ」
「……はい」
二人に付いて行き、ミレトは母が育った孤児院へと入る。長年放置されていた割には孤児院は意外と綺麗であり、今でも人が住んでいるかのような清潔感はあった。
「おかしいわね、まるで今も誰か住んでいるようだけど……」
「そんなはずはない。ここには誰も出入りしていないはずだ」
「……待ってください。何か聞こえませんか?」
ミレトが耳を澄ますと上の階から誰かが下りて来る足音が鳴り響く。それを聞いてミレト達は身構えると、現れたのは予想外の人物だった。
「え、ええっ!?」
「まさか!?」
「……は、母上!?」
「…………?」
階段を下りてきたのはイレアビトに瓜二つの女性だった。死んだはずのイレアビトと全く同じ姿をした女性の登場にミレト達は戸惑い、最初は誰かがイレアビトに変装でもしているのかと思ったが、女性は虚ろな瞳でミレト達のいる方向を見下ろす。
「そこに誰かいるのかしら?この建物は立入禁止よ」
「え!?」
「声が……違う」
「……母上じゃない」
イレアビトに瓜二つの女性だが声音は違い、本物のイレアビトよりも優しくて穏やかな声をしていた――
――孤児院に暮らしていた女性に招かれ、ミレト達は客室へと案内された。女性はこの孤児院で一人で暮らしているらしく、彼女が用意した紅茶を味わう。そして自分の正体を話した。
「そう、姉はやはり死んでいたのね」
「姉って……まさか、あんたイレアビトの妹!?それも双子なの!?」
「ええ、そうよ」
「嘘だ!!あの方に妹が居たなんて聞いていない!!」
「でも……この人、母上にそっくりです」
「そうかしら?」
母親に瓜二つの女性にミレトは戸惑いを隠せず、イレアビトの妹を名乗る女性の名前は「サクラ」だという。サクラという名前はイレアビトが偽名で使っていた名前であり、イレアビトとサクラはかつて共に力を合わせて生きてきた。
「姉さんと私はこの場所で暗殺者として育てられたわ。だけど、ある時に姉さんは私以外の家族を殺して旧帝国を支配した。私が生き残れたのは姉さんに服従を誓ったからよ」
「殺した!?どうしてそんなことを……」
「そうしなければ姉さんが殺されていた。優れ過ぎた能力を持つ姉さんを疎ましく思う人間は多かった。当時の旧帝国の支配者も姉さんがいずれ自分を殺そうとするかもしれないと考えて暗殺の計画を立てていた。だけど、その前に姉さんが手を打った……私は姉さんの指示で旧帝国の幹部を殺した」
「あ、あんたが……」
「……思い出した。私達が仕える前に凄腕の暗殺者を抱えていたとミドル大将軍が言っていた。でも、それがあの方の妹だったなんて……」
サクラはイレアビトの命令で彼女の敵を始末してきた。そのお陰でイレアビトはサクラは優秀な駒として認め、家族の中でサクラだけは殺さないで自分に使えさせた。しかし、イレアビトはサクラのことを妹として愛したわけではないらしい。
「姉さんは一度も私のことを妹として接したことはない。所詮は私はただの使い勝手の良い道具……敵の暗殺者に毒を仕掛けられて視力が低下した私はもう暗殺者として使い物にならなくなった。だから姉さんはこの場所に私を押し込めた」
「そ、そんな……あんた妹なんでしょ!?しかも姉のために邪魔者を何人も始末したのに……」
「姉さんは血の繋がりなど信じない。きっと自分の子供が生まれたとしても愛そうとはしないでしょう。あの人にとっては優秀な手駒だけが家族と認められるのよ」
「…………」
ミレトはサクラの言葉を否定できず、彼はイレアビトから愛されていたとは思えない。カゲマルに誘拐された時もイレアビトは彼の安否など気にせず、結局は見捨てられてしまった。サクラも生かされたのはイレアビトにとっては都合の良い手駒だったに過ぎず、暗殺者としての能力が失われると孤児院に閉じ込められた。
「私が生き延びられたのは暗殺者の技術を他の人間に授けるぐらいの利用価値があっただけ……最も、私の技術を完璧に受け継いだのはエルフ一人だけだけどね」
「エルフ?」
サクラが生み出した暗殺技術はとあるエルフだけが受け継いだらしく、その他の人間は彼女の技術を継承できなかった。
「騒ぐな、もうこの場所以外に手掛かりはない」
「……ここが母さんが居た孤児院」
ミレトはかつて自分の母親が子供の頃に育った孤児院に訪れていた。この孤児院は旧帝国が経営しており、表向きは孤児を育てるための施設だが、実際は子供達を暗殺者に教育するための施設として作られていた。
イレアビトは他の子供と共に旧帝国の暗殺者として育て上げられた。彼女が帝族であろうと関係なく、厳しい訓練を受けていたらしい。これまで王妃の遺産があると思われた場所は全て探索したが、結局は何もなかった。最後の希望は王妃が育った孤児院だけとなった。
「さっさと入りましょう」
「ミレト、行くぞ」
「……はい」
二人に付いて行き、ミレトは母が育った孤児院へと入る。長年放置されていた割には孤児院は意外と綺麗であり、今でも人が住んでいるかのような清潔感はあった。
「おかしいわね、まるで今も誰か住んでいるようだけど……」
「そんなはずはない。ここには誰も出入りしていないはずだ」
「……待ってください。何か聞こえませんか?」
ミレトが耳を澄ますと上の階から誰かが下りて来る足音が鳴り響く。それを聞いてミレト達は身構えると、現れたのは予想外の人物だった。
「え、ええっ!?」
「まさか!?」
「……は、母上!?」
「…………?」
階段を下りてきたのはイレアビトに瓜二つの女性だった。死んだはずのイレアビトと全く同じ姿をした女性の登場にミレト達は戸惑い、最初は誰かがイレアビトに変装でもしているのかと思ったが、女性は虚ろな瞳でミレト達のいる方向を見下ろす。
「そこに誰かいるのかしら?この建物は立入禁止よ」
「え!?」
「声が……違う」
「……母上じゃない」
イレアビトに瓜二つの女性だが声音は違い、本物のイレアビトよりも優しくて穏やかな声をしていた――
――孤児院に暮らしていた女性に招かれ、ミレト達は客室へと案内された。女性はこの孤児院で一人で暮らしているらしく、彼女が用意した紅茶を味わう。そして自分の正体を話した。
「そう、姉はやはり死んでいたのね」
「姉って……まさか、あんたイレアビトの妹!?それも双子なの!?」
「ええ、そうよ」
「嘘だ!!あの方に妹が居たなんて聞いていない!!」
「でも……この人、母上にそっくりです」
「そうかしら?」
母親に瓜二つの女性にミレトは戸惑いを隠せず、イレアビトの妹を名乗る女性の名前は「サクラ」だという。サクラという名前はイレアビトが偽名で使っていた名前であり、イレアビトとサクラはかつて共に力を合わせて生きてきた。
「姉さんと私はこの場所で暗殺者として育てられたわ。だけど、ある時に姉さんは私以外の家族を殺して旧帝国を支配した。私が生き残れたのは姉さんに服従を誓ったからよ」
「殺した!?どうしてそんなことを……」
「そうしなければ姉さんが殺されていた。優れ過ぎた能力を持つ姉さんを疎ましく思う人間は多かった。当時の旧帝国の支配者も姉さんがいずれ自分を殺そうとするかもしれないと考えて暗殺の計画を立てていた。だけど、その前に姉さんが手を打った……私は姉さんの指示で旧帝国の幹部を殺した」
「あ、あんたが……」
「……思い出した。私達が仕える前に凄腕の暗殺者を抱えていたとミドル大将軍が言っていた。でも、それがあの方の妹だったなんて……」
サクラはイレアビトの命令で彼女の敵を始末してきた。そのお陰でイレアビトはサクラは優秀な駒として認め、家族の中でサクラだけは殺さないで自分に使えさせた。しかし、イレアビトはサクラのことを妹として愛したわけではないらしい。
「姉さんは一度も私のことを妹として接したことはない。所詮は私はただの使い勝手の良い道具……敵の暗殺者に毒を仕掛けられて視力が低下した私はもう暗殺者として使い物にならなくなった。だから姉さんはこの場所に私を押し込めた」
「そ、そんな……あんた妹なんでしょ!?しかも姉のために邪魔者を何人も始末したのに……」
「姉さんは血の繋がりなど信じない。きっと自分の子供が生まれたとしても愛そうとはしないでしょう。あの人にとっては優秀な手駒だけが家族と認められるのよ」
「…………」
ミレトはサクラの言葉を否定できず、彼はイレアビトから愛されていたとは思えない。カゲマルに誘拐された時もイレアビトは彼の安否など気にせず、結局は見捨てられてしまった。サクラも生かされたのはイレアビトにとっては都合の良い手駒だったに過ぎず、暗殺者としての能力が失われると孤児院に閉じ込められた。
「私が生き延びられたのは暗殺者の技術を他の人間に授けるぐらいの利用価値があっただけ……最も、私の技術を完璧に受け継いだのはエルフ一人だけだけどね」
「エルフ?」
サクラが生み出した暗殺技術はとあるエルフだけが受け継いだらしく、その他の人間は彼女の技術を継承できなかった。
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