種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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聖痕回収編

4年前の出来事

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――4年前、バルはレノ達と別れた後に他の青年たちと共に王国に莫大な財産を寄付するという「貴族」の屋敷に忍び込むため、王国の領土内に存在する3つの都市の内の1つである「城塞都市」と呼ばれる「大陸」の中でも2番目を誇る巨大な都市に潜り込んだらしい。

城塞都市は鳳凰学園がある「学園都市」と似ており、既に列車などの機関も存在する。また、城塞都市は王国の首都であり、名前の通りに周囲を巨大な城壁で覆われている。人口は300万人を超し、王国軍の兵士数十万(正確な人数は不明)が滞在しているという。

バルたちは地下の水路を通って地上の入場検査を通り抜け、内密に計画を立てていたという。標的である「貴族」の屋敷はバルの人生の中でも今まで盗みに入った屋敷の中でも屈指の警備であり、念入りに計画を立てなければならなかった。


――標的である御お金持ちの王国の貴族とは「ハナムラ」と呼ばれる侯爵の屋敷であり、元々は異世界人が大昔に王国に仕え、戦場に置いて「軍師」としての立場で功績を立て、同時の国王が直々に「侯爵」の爵位を賜ったという


その後、侯爵となった「ハナムラ」は100年以上もの間、戦場で功績を上げて金銭を蓄積させ、ついには「アトラス金貨(日本円にして約1000万)」数百枚分の財産を築いたという。

今回、理由は不明だが侯爵である「ハナムラ・カイ」という名の老人が全ての財産の半分を「バルトロス王国」に寄付することを宣言し、バルが到着した際には既に2日後に受け渡す準備は整っていた。



「流石に額も額だからね……王国の兵隊さんたちも躍起になって警備をしていたよ」



王国は現在財政難に陥っており、わざわざ自分たちに尽くしてくれた「ハナムラ侯爵家」を陥れ、無理やりに財産を搾取する手段を取ったという噂だった。

流石に規模が大きすぎるとバルの部下である青年たちが反対したが、それでも彼女は自分の盗賊団全員が一生を遊べるだけの金銭であり、今回の機を逃したら次に同じような機会が訪れるとは限らない。


「……散々、あんたに偉そうに言っておきながら、あたしはとんでもない失敗を犯したよ。大金に目が眩んで自分の力量を見誤ったよ……」
「バル……」


バルたちは即座に計画を立てると、「ハナムラ侯爵家」の財産が王国に引き渡される前日、バルは数人の青年たちと共に潜り込んだという。残りの人間は脱出経路と移動手段の確保であり、侯爵家には10人の部下と共に乗り込んだ。


「最初の内は警備を通り抜けて上手く言ってたさ……けど、肝心の金庫室に手間取っちまった」


豪勢な黄金の扉で封鎖された「地下金庫」には王国の「騎士」と「魔術師」が警備を行っており、幾らバルたちでも正面突破は不可能だった。そのためかなり力技だが、地下金庫の上の階から穴を作り出し、内密に金庫に侵入する予定だった。


「また、随分と無理やりだな……」
「仕方ないだろ!!まさか、こうも早く王国に引き渡すとは思ってなかったんだよ!!もっと時間があればマシな手を考えていたのにさ……」


地下金庫の上の階は、どうやら侯爵家の「客間」のようであり、複数の兵士が警備の巡回を行っていた。そのため、専用の穴掘り道具を使う隙も無く、バルは仕方なくある「秘策」を行う。

青年の1人が抜け出し、単独で侯爵家の屋根裏に侵入すると、バルから渡された運べるだけの貴重な「火属性の魔石」を使用し、侯爵家の裏庭に放火騒ぎを引き起こした。


「お前……そこまで堕ちたのか」
「だから時間が無いって言っただろ!!本気で燃やす気は無いよ!!」
「姉御……そんな人だったの?」
「こんな人に着いて行って大丈夫かな……」
「あんたらも悪乗りするんじゃないよ!!行き当たりばったりが私のやり方何だよ!!」


すぐにも裏庭で燃え盛る火災に対し、大勢の警備兵たちが慌てて裏庭に駆け付け、侯爵家の警備が薄くなった。即座にバルたちは穴掘り道具を使用し、警備兵が戻ってくる前に金庫への通路を開くために客間に戻る。

この「穴掘り道具」とは外見的には手動でドリルを動かす機器であり、魔石を装着させて「火」の魔力を利用して回転を行うという。バルの愛用する「七つ道具」の1つであり、特殊な魔法金属で出来ているため、頑丈な地面でもまるで豆腐のように削りだすという。


「豆腐のように切れる、という表現なら聞いたことがあるけど……削り出すって表現は無理があるんじゃないか……」
「仕方ないだろ……それ以外にどう表現したらいいんだい?」
「う~ん……それを言われるとなぁ……」
「……まあ、それはともかく、順調に穴掘りは進んだんだけどよ……ここからが本題さ」


客間の床を破壊し、そのまま木造の床を掘りだすと即座に金庫室を覆う部分まで到達する。流石に「穴掘り道具」だけで金庫室まで削り出すことは不可能だったが、バルは無属性の魔法の中でも特殊な魔方陣を書き込む。


――代々、盗賊の家系であるバルの家に伝わる特殊な「魔方陣」であり、彼女は自分の指を噛んで血を吹き出すと、金庫室を覆う金属に自分の「血」の魔方陣を書き写す。バル曰く「壁抜け」と呼ばれる特殊な魔方陣だという。



忍者や魔法使いが壁を通り過ぎる「壁抜け」という場面をテレビで見たことがあるが、バルの場合は「壁」以外にも床も通り抜けられるらしい。


「そんな便利な魔方陣があるなら、いつも使えよ」
「無茶言うんじゃないよ!!あたしの家に代々伝わる大切な術なんだからね!!第一、やたらと魔力を使うから使いたくなかったんだよ……」
「姉御~……私も覚えたい」
「何か便利そう」
「やかましい!!あんたらは黙ってな!!」


「壁抜け」の魔方陣は上手く金庫室の金属を突破し、魔方陣を書き込んだバルだけが金庫室に侵入に成功する。彼女は客間に青年たちを見張りとして残し、自分だけが収納用の魔石(異空間に物体を送り込む。かなり希少な魔石)を手に金庫室に先に侵入した。



――しかし、彼女の予想に反して「地下金庫室」の中は宝物など存在せず、あるのは見慣れぬ鉄製の筒が壁中に所狭しと並べられていたらしい。



バルは目を見開きながら、慌てて金貨が入った袋が無いかとと部屋中を探し回ったというが、見たことが無い鉄製の「武器」らしき物があるだけで、金貨が1つも落ちていなかったという。彼女が調べたところ、鉄で作り上げた筒には取っ手のようなものがあり、臭いを嗅ぐと僅かながらに「火薬」の臭いが残っていたという。すぐにバルはこの武器が「鉄砲」の類だと判断した。


――この世界にも「鉄砲」は存在するが、現実世界でいえば精々「火縄銃」と対して変わらぬ代物であり、とてもではないが大型の魔物やスライムなどの念身体性物には到底通用しない武器として扱われている。実際に拳銃よりも「魔法」で対処する方がより効率的で効果的と言われている。


しかし、バルの金庫室に隠されていた「拳銃」とは、現実世界でいう所の「ショットガン」や「ライフル」といった類の物であり、中には「手榴弾」らしき物まで置かれていたという。明らかに現在のこの世界の技術では生み出せないはずの武器がどうしてハナムラ侯爵家の金庫に隠されていたのかレノは気になった。



すぐに彼女はこの部屋が金庫室ではなく、武器保管庫にでも迷い込んだのかと思ったが、どう考えてもここが王国の騎士や魔術師たちが厳重に警備する部屋であり、間違いなく侯爵家の地下金庫室の中なのだ。どこを探しても目当ての金貨の類は無く、バルは嫌な予感に駆られて抜け出すことを決意した。



――しかし、既に金庫室の真上の客間では、地獄が広がっていたという
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