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テンペスト騎士団編
精霊魔法
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地下室から抜け出して通路内で見張りを行っていたゴンゾウと合流し、本格的に脱出の方法を考える事にする。この通路から聖導に繋がる扉には既に聖導教会側の人間が待ち構えているだろう。だが、他に脱出する方法を考えようにもこの通路は一本道であり、最初の扉以外には出入口らしき場所はは見当たらない。
仕方なく、口論の末にレノが考え出した強硬策を実行する事になった。リノンとポチ子とヨウカを安全な場所まで下がらせ、ゴンゾウとレノはお互いに顔を見合わせると、
「頼むよゴンちゃん」
「任せろ……はぁああああああっ……!!」
ビキィイイッ……!!
ゴンゾウの右腕に血管が浮き上がり、徐々に肌が赤黒く変色する。一時的に身体能力を強化する鬼人化を行い、レノも同様に右腕に雷を迸らせ、
「雷撃……!!」
バチィィイイイッ!!
電撃を右腕に覆い、紋様の力で最大限に強化させるとゴンゾウに頷き、二人は同時に通路の壁に目掛けて拳を振り上げ、
「「おぉおおおおおおおおおおっ!!」」
ドゴォォオオオオンッ!!
壁に2人の拳がめり込み、ゴンゾウの一撃で激しい亀裂が生まれ、続けざまにレノの電流が迸り、内側から破壊する。
ドガァアアアアアンッ!!
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
破壊した壁の向こう側は聖堂から少し離れた通路へと繋がっていたようであり、巡回をしていた兵士たちは突然に破壊された壁に驚愕する。その直後に瓦礫を押しのけて現れたレノ達に驚愕し、慌てて兵士たちは武器を構える。
「全く……本当に他に方法は無かったのか?」
「うわ~……少しやり過ぎじゃないかな……ま、いっか」
「わうっ……」
「仕方ない」
「喋ってないで行くぞ!!」
「ま、待て!!」
流石にリノン達も崩壊した壁を見て罪悪感を抱くが、今は脱出する事が最優先であり手段を選ぶ余裕はない。レノを先頭にして全員が兵士たちを振り切ってその場を移動し、転移魔方陣が設置されている儀式の間と呼ばれる広間に向けて急ぐ。
別行動中のコトミの事も気がかりだが、テンがいる限りは彼女も安全だと判断し、レノ達は通路を駆けだす。
「貴様ら!!止まれ!!」
「動くな!!」
「止まりなさい!!」
前方から兵士と魔術師が出現し、彼等は武具を構えたり、魔法を発動させて足止めをしようとするが、レノが先に無詠唱で魔法を発動させる。
「嵐弾!!」
「「なっ……うわぁああああっ!?」」
殺傷能力が高い通常の「乱刃」ではなく、一段階前の嵐の魔力で形成された弾丸を放ち、前方の人間達を吹き飛ばす(殺さない程度に威力は調整しているが)。
「すまない!!」
「ぐはっ!?」
「ごめんなさい!!」
「うげっ!?」
「御免っ!!」
「いぎゃっ!?」
「ごめんね!!」
「みこっ……ふげっ!!」
廊下に倒れ込んだ者たちを押し退け、そして「儀式の間」に繋がる扉を発見した時、
「……ちっ……」
――予想通りというべきか、扉の前には無数のワルキューレ騎士団の女騎士と共に不気味に笑みを浮かべる「教皇」が立ち尽くしており、何よりも彼らの前には青く光り輝く水晶を取り付けた杖を構える老婆が立っていた。
「せ、センリさん!?」
「……巫女姫様、お久しぶりです」
老婆を見てヨウカが驚きの声を上げ、彼女は深々と頭を下げる。レノがリノン達に顔を向けると、全員が驚いた表情を浮かべており、どうやらレノ以外は彼女の事を知っているようだ。
「千(サウザント)の形態の魔術師(マジシャン)……!?」
「み、ミキさんと同じ聖天魔導士です……!!」
「……不味い」
「せ、センリさんまで……」
「……なるほど」
彼女達の呟く言葉でだいたいの状況を把握し、目の前に立っている「センリ」という老婆はミキと同じ聖天魔導士に就く人間であり、正確に言うならば現在(いま)の「聖天魔導士」の称号を誇る聖導教会の最高位魔術師なのだろう。
また、雰囲気はミキと若干似ており、実力の方も彼女に匹敵すると考えるのが妥当だろう。センリはこちらに杖先を向けて警戒行動を行う一方、教皇だけは余裕の態度で笑みを不気味な浮かべるだけだった。
「……これはこれは巫女姫様……そんなに急いでどうかしましたか?」
「教皇様……あなたの正体は分かっている」
「はて?何のことでしょうかね」
リノンの言葉に教皇はわざとらしく首を傾げ、センリに指示を与える。
「センリよ!!あの者達を拘束しなさい」
「はっ……しかし、巫女姫様は……」
「彼女も操られているのです。すぐに私達の力で元に戻してあげましょう」
「……御意」
センリは眉を顰めながらも前に出ると、杖先を向けたまま近付いてくる。全員が身構える中、レノだけは彼等と対峙している間にも後方から新手の兵士たちが現れないかを確認し、このままでは強行突破も難しい。前方には無数の兵士とワルキューレ騎士団、さらには聖天魔導士の「センリ」が立ちはだかる。
だが、この聖導教会から抜け出すには前方の「儀式の間」を使用するしかないく、ここは覚悟を決めて戦闘に入ろうとした時、
「精霊よ!!」
ボウッ……!!
センリが上空に杖を掲げた瞬間、先端の水晶から青い光が輝きと、周囲に青色の光を放つ球体が複数形成され、リノンが驚きの声を上げる。
「精霊魔法……!?まさか、そんな馬鹿な!!」
精霊魔法とはこの世界でも非常に希少な魔法であり、この世界に実在する精霊と呼ばれる存在から力を借りて魔法を発動させる魔法である。基本的には森人族や人魚族がだけが扱える魔法と言われており、人間では普通ならば決して扱えない魔法だが、レノは彼女が掲げる杖に違和感を覚える
(あの杖……まさか森人族の「神木」か?)
以前に見たことがあるアルファも使用していた神木製の木刀を思いだし、もしかしたらセンリが装備している杖も同じ素材で作られたものかもしれない。恐らく、彼女は神木の杖を媒介にして「精霊」と呼ばれる存在を呼び出しているのだ。
「行きなさい!!」
チュドドドドッ!!
周囲に作り出された青色の「光球」が形状を変化し、まるで弓矢の「鏃」のように形を変えるとレノ達に向かって放たれた。
仕方なく、口論の末にレノが考え出した強硬策を実行する事になった。リノンとポチ子とヨウカを安全な場所まで下がらせ、ゴンゾウとレノはお互いに顔を見合わせると、
「頼むよゴンちゃん」
「任せろ……はぁああああああっ……!!」
ビキィイイッ……!!
ゴンゾウの右腕に血管が浮き上がり、徐々に肌が赤黒く変色する。一時的に身体能力を強化する鬼人化を行い、レノも同様に右腕に雷を迸らせ、
「雷撃……!!」
バチィィイイイッ!!
電撃を右腕に覆い、紋様の力で最大限に強化させるとゴンゾウに頷き、二人は同時に通路の壁に目掛けて拳を振り上げ、
「「おぉおおおおおおおおおおっ!!」」
ドゴォォオオオオンッ!!
壁に2人の拳がめり込み、ゴンゾウの一撃で激しい亀裂が生まれ、続けざまにレノの電流が迸り、内側から破壊する。
ドガァアアアアアンッ!!
「うわっ!?」
「な、何だ!?」
破壊した壁の向こう側は聖堂から少し離れた通路へと繋がっていたようであり、巡回をしていた兵士たちは突然に破壊された壁に驚愕する。その直後に瓦礫を押しのけて現れたレノ達に驚愕し、慌てて兵士たちは武器を構える。
「全く……本当に他に方法は無かったのか?」
「うわ~……少しやり過ぎじゃないかな……ま、いっか」
「わうっ……」
「仕方ない」
「喋ってないで行くぞ!!」
「ま、待て!!」
流石にリノン達も崩壊した壁を見て罪悪感を抱くが、今は脱出する事が最優先であり手段を選ぶ余裕はない。レノを先頭にして全員が兵士たちを振り切ってその場を移動し、転移魔方陣が設置されている儀式の間と呼ばれる広間に向けて急ぐ。
別行動中のコトミの事も気がかりだが、テンがいる限りは彼女も安全だと判断し、レノ達は通路を駆けだす。
「貴様ら!!止まれ!!」
「動くな!!」
「止まりなさい!!」
前方から兵士と魔術師が出現し、彼等は武具を構えたり、魔法を発動させて足止めをしようとするが、レノが先に無詠唱で魔法を発動させる。
「嵐弾!!」
「「なっ……うわぁああああっ!?」」
殺傷能力が高い通常の「乱刃」ではなく、一段階前の嵐の魔力で形成された弾丸を放ち、前方の人間達を吹き飛ばす(殺さない程度に威力は調整しているが)。
「すまない!!」
「ぐはっ!?」
「ごめんなさい!!」
「うげっ!?」
「御免っ!!」
「いぎゃっ!?」
「ごめんね!!」
「みこっ……ふげっ!!」
廊下に倒れ込んだ者たちを押し退け、そして「儀式の間」に繋がる扉を発見した時、
「……ちっ……」
――予想通りというべきか、扉の前には無数のワルキューレ騎士団の女騎士と共に不気味に笑みを浮かべる「教皇」が立ち尽くしており、何よりも彼らの前には青く光り輝く水晶を取り付けた杖を構える老婆が立っていた。
「せ、センリさん!?」
「……巫女姫様、お久しぶりです」
老婆を見てヨウカが驚きの声を上げ、彼女は深々と頭を下げる。レノがリノン達に顔を向けると、全員が驚いた表情を浮かべており、どうやらレノ以外は彼女の事を知っているようだ。
「千(サウザント)の形態の魔術師(マジシャン)……!?」
「み、ミキさんと同じ聖天魔導士です……!!」
「……不味い」
「せ、センリさんまで……」
「……なるほど」
彼女達の呟く言葉でだいたいの状況を把握し、目の前に立っている「センリ」という老婆はミキと同じ聖天魔導士に就く人間であり、正確に言うならば現在(いま)の「聖天魔導士」の称号を誇る聖導教会の最高位魔術師なのだろう。
また、雰囲気はミキと若干似ており、実力の方も彼女に匹敵すると考えるのが妥当だろう。センリはこちらに杖先を向けて警戒行動を行う一方、教皇だけは余裕の態度で笑みを不気味な浮かべるだけだった。
「……これはこれは巫女姫様……そんなに急いでどうかしましたか?」
「教皇様……あなたの正体は分かっている」
「はて?何のことでしょうかね」
リノンの言葉に教皇はわざとらしく首を傾げ、センリに指示を与える。
「センリよ!!あの者達を拘束しなさい」
「はっ……しかし、巫女姫様は……」
「彼女も操られているのです。すぐに私達の力で元に戻してあげましょう」
「……御意」
センリは眉を顰めながらも前に出ると、杖先を向けたまま近付いてくる。全員が身構える中、レノだけは彼等と対峙している間にも後方から新手の兵士たちが現れないかを確認し、このままでは強行突破も難しい。前方には無数の兵士とワルキューレ騎士団、さらには聖天魔導士の「センリ」が立ちはだかる。
だが、この聖導教会から抜け出すには前方の「儀式の間」を使用するしかないく、ここは覚悟を決めて戦闘に入ろうとした時、
「精霊よ!!」
ボウッ……!!
センリが上空に杖を掲げた瞬間、先端の水晶から青い光が輝きと、周囲に青色の光を放つ球体が複数形成され、リノンが驚きの声を上げる。
「精霊魔法……!?まさか、そんな馬鹿な!!」
精霊魔法とはこの世界でも非常に希少な魔法であり、この世界に実在する精霊と呼ばれる存在から力を借りて魔法を発動させる魔法である。基本的には森人族や人魚族がだけが扱える魔法と言われており、人間では普通ならば決して扱えない魔法だが、レノは彼女が掲げる杖に違和感を覚える
(あの杖……まさか森人族の「神木」か?)
以前に見たことがあるアルファも使用していた神木製の木刀を思いだし、もしかしたらセンリが装備している杖も同じ素材で作られたものかもしれない。恐らく、彼女は神木の杖を媒介にして「精霊」と呼ばれる存在を呼び出しているのだ。
「行きなさい!!」
チュドドドドッ!!
周囲に作り出された青色の「光球」が形状を変化し、まるで弓矢の「鏃」のように形を変えるとレノ達に向かって放たれた。
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