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冒険者編

トシゾウとの決闘

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「へっ……やる気になったか。だが、丸腰の相手とは戦わねえ。隊長、こいつに刀を貸してくれ」
「馬鹿かお前は?貸すわけないだろうが……第一に青空組に所属している人間は私闘は禁じられているだろうが」
「固い事を言うなよ。あんただって色々とやらかしてんだろうが。それに殺し合いをするつもりはねえよ。鞘を付けたまま戦えば文句ないだろ?」
「そういう問題じゃ……ああ、仕方ないな。それなら迷惑の掛からない場所に移動するぞ」
「あ、はい」
「やれやれ……ヒカゲさんにはルノさんの方から謝って下さいよ」


流石に街中で堂々と決闘を行うわけにはいかず、イサムの案内の元でルノ達は鰻屋から移動する。そして彼等が案内されたのは空き地であり、人気がないというわけではないがここでなら戦っても迷惑はかけないと判断したのかイサムは自分の刀をルノに差し出す。


「どうぞ、自由に使ってくれ。だけど言っておくが、このトシゾウは本当に強いぞ」
「はあ……どうも」
「よし、やっと邪魔が居なくなったな……来やがれっ!!」


トシゾウは鞘を付けたまま刀を構え、ルノはイサムから渡された刀を掴み、別に武器など必要ないのだが一応は受け取る。二人はお互いに向き合い、イサムが決闘の合図を行う。


「準備はいいか?では……始めっ!!」
「うおおっ!!」
「わわっ!?」


合図の直後にトシゾウが踏み込み、刀を上段から振り下ろす。その光景にルノは刀で受けようとするが、直前でトシゾウは攻撃の軌道を変えて突き刺す。


「刺突!!」
「おっと」
「避けた!?」


直前で相手の動作を見切ったルノは突き出された刀を顔を反らすだけで回避すると、イサムが驚いた声を上げる。しかし、最も衝撃を受けたのはトシゾウであり、あっさりと自分の戦技が避けられた事に動揺を隠せず、追撃が出来なかった。


「えっと……握りはこうだっけ?」
「はあ?おい、何だその構えは……素人の真似か?」


一方でルノはギリョウとの戦闘を思い返し、彼のように刀を握りしめる。武器を扱う事自体が少ないのでトシゾウには剣の素人と見破られるが、レベル90台を迎えた驚異的な身体能力でルノは剣を振り払う。


「こんな感じかな?」
「うおおっ!?」
「な、なんだ!?」
「あ、惜しい」


ルノはギリョウの「居合」を思い出しながら剣を横薙ぎに振り払うと、彼のように動作は上手くできないが、尋常ではない速度でトシゾウの胴体を狙う。素人同然の構え方から予想も出来ない速度の攻撃にトシゾウは危うく衝突しかけたが、どうにか上体を反らして回避に成功する。


「あ、避けられた。それなら……ていっ!!」
「おわぁっ!?」
「は、早い!?」


動作は素人同然だが、ルノが繰り出す身体能力任せの攻撃は凄まじく、真面に受ければ鞘を取り付けた状態でも耐えきれない程の威力を誇る。先程のトシゾウを真似てルノも刀を突き出すと、トシゾウは慌てて上体を更に反らして回避する。



「ま、待て!!何だお前……!?」
「当たらないな~……このっ、このっ!!」
「くそぉっ!?」


トシゾウに向けてルノは子供のチャンバラごっこのように無茶苦茶に刀を振り回すが、子供と違って彼の振り抜く刀の速度は常人には捕えきれず、トシゾウも事前に動作を見抜いて回避行動に移らなければ避けきれない。避ける事だけに集中すれば何とか対応は出来るが、回避が限界で反撃に転じる事が出来ない。


「な、何なんだよてめえはっ!?こんな剣技、見たことないぞ!!」
「もうちょっとだと思うんだけどな……うりゃっ!!」
「ぐあっ!!」
「トシゾウ!?」


剣を振り回す度にコツを掴んできたのかルノの一撃がトシゾウの刀に衝突し、彼は身体ごと吹き飛ばされる。その光景に慌ててイサムが彼の元に駆け付けようとするが、砂煙を舞い上げながらもトシゾウは地面に踏ん張り、何とか転倒を免れる。


「あぢちっ!?そ、草履が……!?」
「大丈夫か!?」
「凄い!!今のに耐えたんですか?」


ルノの攻撃を耐えようと地面に踏ん張っていた事でトシゾウの草履が摩擦熱で焼き切れる。地面にはまるでタイヤのブレーキ痕のような痕跡が出来てしまい、トシゾウは慌てて草履を吐き捨てた。


「ぐうっ……!?う、腕が……」
「おい!!もういいだろ!!早く降参しろ!!」
「う、うるせえっ!!こんな訳の分からない剣技で負けてたまるか……いだだだっ!?」
「あ~……完全にいっちゃってますねあれは」


攻撃を防ぐことには成功したが、刀を支えていたトシゾウの両腕には大きな負担が掛かったらしく、特に右手首はあらぬ方向に折れ曲がってしまう。慌ててイサムが駆けつけて彼の右手を確認し、眉を顰めてルノに声を掛ける。


「ここまでだ!!兄さん、あんたの勝ちだ。もうこいつを許してやってくれ!!」
「え?もう?」
「な、なにを言ってやがる。俺はまだ戦え……」
「とりゃっ」
「ぎゃああっ!?」
「お嬢さん!?」


まだ戦意を衰えていないトシゾウにリーリスが容赦なく右手首を掴むと、空き地に情けない悲鳴が響き渡る。



※管理画面を見て「あれ( ゚Д゚)」となりました。どうやら予約投稿をミスってこんな時間に投稿してしまいました……(´ω`)ヤレヤレ

ちなみに明日も普通に投稿します。
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