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外伝 〈一人旅〉
アンデッド
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「うううっ……がああっ!!」
「うわ、何だ!?」
肉体が地面に埋もれているにも関わらず、囚人は歯を剥き出しにしてルノに威嚇するように怒鳴り声を上げる。その様子を見たリディアは冷や汗を流しながら囚人に近寄り、瞳の色を確認する。異様なまでに目が充血しており、瞳の色も赤色に変色している。それを確認したリディアは息を飲み、その場にへたり込む。
「こ、こいつ……もう死んでるわ」
「えっ?いや、でも……」
「アンデッドよ!!こいつはもう人間じゃない!!」
リディアの言葉にルノは囚人に視線を向け、最初に遭遇した時よりも顔色が悪く、目の焦点も合っていない。まるで映画に出てくるゾンビを想像させ、ルノはリディアを問い質す。
「アンデッドって……じゃあ、この人はもう人間じゃないの?」
「そうよ……身体は生きているけど、もう人としての意思はないわ。今のこいつは他人の魂に反応して行動しているだけよ!!」
「魂に反応……?」
「アンデッドは生物の生気を喰らう化物よ!!だからこいつは身体が朽ち果てるまで永久に生物を襲い続けるの!!」
「そんな……」
「ぐうううっ……!!」
必死に地面から抜け出そうとする囚人にルノは視線を向け、確かに普通の状態ではないがもう既に死亡しているとは思えない程に激しく動き、彼を救い出す方法は無いのかを問い質す。
「この人を助ける方法は……」
「そんなのあるわけないでしょ?こいつはもう死んでるの!!もう殺すしかないわ……ポチ!!」
「シャアアッ!!」
「あっ!?」
リディアから名前を呼ばれたガーゴイルが足を振り翳し、囚人の頭部を容赦なく踏みつぶす。ルノは止める暇もなく囚人の頭部が無惨に砕け散り、その光景にルノは吐き気を催す。
「何てことを……えっ!?」
しかし、頭部が砕け散ったにも関わらずに残された首の部分が激しく動き、血を噴き出しながらも止まる様子はない。その光景にリディアは顔色を悪くさせながら答える。
「……見てわかるでしょう。こいつはもう人間じゃない、化物よ!!頭を破壊されようが死ぬことはないの!!」
「……どうすればいい?」
「アンデッドを倒すには聖属性の魔法か、あるいは身体を焼き尽くすしかないわ……本当にこいつの事を可愛そうだと思うなら成仏させてやりなさいよ」
「分かった……」
リディアの言葉にルノは手の掌を翳し、首元に目掛けて火球の魔法を放つ。踏みつぶされた頭部から炎の塊が体内に侵入し、内側から焼き尽くす。その光景にルノは目を反らし、リディアですらも見ていられないのか顔を抑えた。
――アアアアッ……!!
頭を潰されて舌すらも残っていないにも関わらず、燃え尽きる間近に囚人の死体から呻き声のような音が鳴り響き、完全に焼き尽くされて灰となる。無事に「火葬」を終えたルノは吐き気を抑えきれず、遂に自分の魔法で人間の死体を焼却した事を自覚する。
「うぷっ……」
「あんた、大丈夫?」
「……平気とは言えない。けど、吐いている暇はない」
吐き気を抑えてルノは囚人に死体に両手を合わせ、すぐにリディアと向き直る。彼女の反応から囚人がアンデッドに変化させた存在に心当たりがあるのは間違いなく、何者がこの島に訪れたのかを問う。
「それで……さっき言いかけていた言葉は何?誰がこの人をアンデッドの変化させた?」
「それは……」
「ここまで来て隠し事は無しだよ」
言い淀むリディアにルノはきつい口調で問い質すと、彼女は怯えたように白状した。
「……わ、私も会った事はないわ。少し前に話したでしょ?最高幹部のイレアよ……この女は死霊使いだとクズノから聞いた事があるの」
「死霊……使い?」
「闇属性の魔法に特化した魔術師の職業よ。でも、こいつらの扱う魔法はあまりにも非人道過ぎて、初級魔術師よりも迫害されている職業よ……」
リディアによると人間をアンデッドに変異させる事が出来るのは「死霊使い」と呼ばれる職業の人間だけらしく、その能力のおぞまじさから人々に恐れられているという。
「死霊使いは人間の生物をアンデッドに変異させる魔法を扱えるの……しかも作り出したアンデッドは他の生物の生気に反応して襲い、死体が朽ち果てるまで活動を続けるわ。だから死霊使いは世界中の国から危険視されて、今では死霊使いとして生まれた人間は国の監視の元で生活するか、あるいは殺されるのよ」
「そんな……」
「酷いと思う?でも、私は適切な処置だと思うわ……死霊使いが危険視されるようになったのは過去に存在した魔王軍の一人が死霊使いでアンデッドの大軍を築いた事があるの。その時のアンデッドに殺された人間の数は数万を超えたらしいわ。だから死霊使いは危険視されるようになったの」
ルノはリディアの言葉に黙り込み、死霊使いがどれほど恐ろしい存在なのかを思い知る。
「うわ、何だ!?」
肉体が地面に埋もれているにも関わらず、囚人は歯を剥き出しにしてルノに威嚇するように怒鳴り声を上げる。その様子を見たリディアは冷や汗を流しながら囚人に近寄り、瞳の色を確認する。異様なまでに目が充血しており、瞳の色も赤色に変色している。それを確認したリディアは息を飲み、その場にへたり込む。
「こ、こいつ……もう死んでるわ」
「えっ?いや、でも……」
「アンデッドよ!!こいつはもう人間じゃない!!」
リディアの言葉にルノは囚人に視線を向け、最初に遭遇した時よりも顔色が悪く、目の焦点も合っていない。まるで映画に出てくるゾンビを想像させ、ルノはリディアを問い質す。
「アンデッドって……じゃあ、この人はもう人間じゃないの?」
「そうよ……身体は生きているけど、もう人としての意思はないわ。今のこいつは他人の魂に反応して行動しているだけよ!!」
「魂に反応……?」
「アンデッドは生物の生気を喰らう化物よ!!だからこいつは身体が朽ち果てるまで永久に生物を襲い続けるの!!」
「そんな……」
「ぐうううっ……!!」
必死に地面から抜け出そうとする囚人にルノは視線を向け、確かに普通の状態ではないがもう既に死亡しているとは思えない程に激しく動き、彼を救い出す方法は無いのかを問い質す。
「この人を助ける方法は……」
「そんなのあるわけないでしょ?こいつはもう死んでるの!!もう殺すしかないわ……ポチ!!」
「シャアアッ!!」
「あっ!?」
リディアから名前を呼ばれたガーゴイルが足を振り翳し、囚人の頭部を容赦なく踏みつぶす。ルノは止める暇もなく囚人の頭部が無惨に砕け散り、その光景にルノは吐き気を催す。
「何てことを……えっ!?」
しかし、頭部が砕け散ったにも関わらずに残された首の部分が激しく動き、血を噴き出しながらも止まる様子はない。その光景にリディアは顔色を悪くさせながら答える。
「……見てわかるでしょう。こいつはもう人間じゃない、化物よ!!頭を破壊されようが死ぬことはないの!!」
「……どうすればいい?」
「アンデッドを倒すには聖属性の魔法か、あるいは身体を焼き尽くすしかないわ……本当にこいつの事を可愛そうだと思うなら成仏させてやりなさいよ」
「分かった……」
リディアの言葉にルノは手の掌を翳し、首元に目掛けて火球の魔法を放つ。踏みつぶされた頭部から炎の塊が体内に侵入し、内側から焼き尽くす。その光景にルノは目を反らし、リディアですらも見ていられないのか顔を抑えた。
――アアアアッ……!!
頭を潰されて舌すらも残っていないにも関わらず、燃え尽きる間近に囚人の死体から呻き声のような音が鳴り響き、完全に焼き尽くされて灰となる。無事に「火葬」を終えたルノは吐き気を抑えきれず、遂に自分の魔法で人間の死体を焼却した事を自覚する。
「うぷっ……」
「あんた、大丈夫?」
「……平気とは言えない。けど、吐いている暇はない」
吐き気を抑えてルノは囚人に死体に両手を合わせ、すぐにリディアと向き直る。彼女の反応から囚人がアンデッドに変化させた存在に心当たりがあるのは間違いなく、何者がこの島に訪れたのかを問う。
「それで……さっき言いかけていた言葉は何?誰がこの人をアンデッドの変化させた?」
「それは……」
「ここまで来て隠し事は無しだよ」
言い淀むリディアにルノはきつい口調で問い質すと、彼女は怯えたように白状した。
「……わ、私も会った事はないわ。少し前に話したでしょ?最高幹部のイレアよ……この女は死霊使いだとクズノから聞いた事があるの」
「死霊……使い?」
「闇属性の魔法に特化した魔術師の職業よ。でも、こいつらの扱う魔法はあまりにも非人道過ぎて、初級魔術師よりも迫害されている職業よ……」
リディアによると人間をアンデッドに変異させる事が出来るのは「死霊使い」と呼ばれる職業の人間だけらしく、その能力のおぞまじさから人々に恐れられているという。
「死霊使いは人間の生物をアンデッドに変異させる魔法を扱えるの……しかも作り出したアンデッドは他の生物の生気に反応して襲い、死体が朽ち果てるまで活動を続けるわ。だから死霊使いは世界中の国から危険視されて、今では死霊使いとして生まれた人間は国の監視の元で生活するか、あるいは殺されるのよ」
「そんな……」
「酷いと思う?でも、私は適切な処置だと思うわ……死霊使いが危険視されるようになったのは過去に存在した魔王軍の一人が死霊使いでアンデッドの大軍を築いた事があるの。その時のアンデッドに殺された人間の数は数万を超えたらしいわ。だから死霊使いは危険視されるようになったの」
ルノはリディアの言葉に黙り込み、死霊使いがどれほど恐ろしい存在なのかを思い知る。
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