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帝国の危機

千里眼と空間移動

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「やった!!リーリスさんの言う通りにしたら「千里眼」を覚えたよ!!」
「ほほう、という事は私の予想通り、強化スキルを覚えるにはやっぱり条件があるんですね。それで、どういう能力なんですか?」
「えっと……ちょっと待って下さい。早速使ってみます」


千里眼を習得した直央はステータス画面を確認し、内容を確認してスキルを発動させる。使用方法は瞼を閉じる事で視界を封じる事が絶対条件らしく、直央は瞼を閉じて能力を発動させた。


(こんな感じかな……おおっ?)


瞼の裏にモニターでも取り付けられたように直央の視界に別の視点から確認された風景が表示され、感覚的には直央は自分が鳥のような生物に変身し、上空から自分達が休んでいる光景を目にする。驚いた直央は瞼を開いて上空を見上げるが、特に何も見当たらない。


「どうかしました?」
「いや……もう一度試します」


驚いて能力を解除してしまったが、直央は再び千里眼を発動させ、別視点からの光景を確認する。ドロ-ンを操作してカメラ映像を確認するというよりは直央自身が鳥のように変化して自由自在に空を飛び、周囲の光景を確認しているような感覚に近い。しかも移動範囲はかなり広く、現在の森からかなり離れた場所に存在する白原の風景まで確認できた。


「おおっ……凄い、こんな能力なのか……」
「あの、瞼を閉じた状態で両手をわきわきしながら動くて少し怖いんですけど……その様子を見る限り、伝説通りにあらゆる風景を確認出来るんですね」
「あ、でも……かなり体力を使うようです」


スキルを発動させて数十秒後、直央は異様な疲労感に襲われて能力を解除してしまう。どうやら遠方の距離の光景を確認する程に体力を消耗するらしく、しかも一定の範囲内しか確認する事は出来ない。今の直央の限界は300キロ程度であり、それ以上に離れた場所を千里眼で見通そうとしても頭痛が生じて自動的に能力が解除されるらしい。


「今の俺だとここから白原ぐらいの距離しか見通す事が出来ないみたいですけど……」
「それだけ見えれば十分ですよ。重要なのはここからです……千里眼を発動した状態で空間移動が行えるかどうかですよ」
「なるほど……やってみます」


リーリスの言葉に直央は理解し、千里眼と空間移動を組み合わせる事が出来れば時間も掛けずに長距離の移動が可能となり、獣人国の領地まで短時間で移動できる事が出来る。それどころか帝国や王国に安全に引き返す事も可能となり、使い道によっては強力な能力として利用出来るかもしれない。


「よし!!やってみます……タイ〇ストーンを守らないと!!」
「今更映画のドクタース〇レンジネタですか」


右手をぐるぐると回しながら直央は空間魔法の黒渦を発動させ、まずは出入口を作り出す。そして千里眼の能力を発動させ、試しに白原の風景を映し出し、空間魔法を発動させる。


(能力の条件が「視界」の範囲内なら……千里眼で見えた景色でも空間魔法は発動するはず!!)


直央の予想通り、人ひとり存在しない美しい草原に突如として黒渦が誕生し、それを視界に収めたまま直央は前方に作り出した黒渦の中に飛び込む。次の瞬間、柔らかな大地の感触が足元に広がり、直央は眼を開くと彼は数時間前まで存在した白原に立っていた。


「やった……成功したんだ!!」
「おめでとうございます」
「うわっ!!びっくりした!!顔だけ覗かないで下さい!?」


移動に利用した黒渦の中からリーリスが顔だけを出したので傍目から見れば生首が浮かんでいるようにしか見えず、直央は驚いて危うく空間魔法を解除する所だったが、リーリスは気にせずに自分も白原に降り立つ。


「いやはや、まさか本当に成功するとは……でも、これで移動手段に困る事はなくなりましたね。それに斥候を出して情報収集を行う必要もなくなりました。ここから帝都の様子とかも確認できません?」
「えっと……やってみます」


帝国と白原は大分離れているが、ぎりぎり千里眼の射程距離内だったのか直央は帝都の風景を確認する事に成功した。だが、帝都の周囲に待機していた帝国の討伐軍の姿が見えず、疑問を抱く。


「あれ……?おかしいな、あんなに居た討伐軍の姿が確認できません」
「もうそろそろ夜明けですからね。皇帝陛下が急かして朝を迎える前に出陣したんじゃないんですか?」
「なるほど……あ、本当だ。少し離れた所で討伐軍が動いています!!」


直央は視点を変更させて帝都の近辺を探ると、エルフ王国の救援のために結成された討伐軍が移動している光景を確認し、ここで直央は千里眼の特徴を掴む。


「あっ……それとどうやら千里眼では風景は確認できても音は捕えられないみたいです。誰かが話している姿は見えても何をしゃべっているのか分かりません」
「まあ、当然ですよね。音まで捕らえる事が出来たら本当に何でもありですからね。そうなったら暗殺者や忍者の職業の人なんてお役御免ですよ」


流石に千里眼の能力も万能とは言えず、それでも遠方の景色を自分が直に訪れたように確認出来るという点では非常に優れた能力だった。
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