最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

牙竜の捕獲

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――その夜、3頭の大型魔獣を引き連れて戻ってきたルノに街の住民達は腰を抜かすが、魔物を彼等に任せてルノはミルの元へ訪れてリディアの元へ向かう。ちなみにワン子達に関しては今でも街に残っており、村に戻っても農作物や家畜の類は兵士に奪われたので食う事も困るため、しばらくは13番街で住まわせてもらう。しかし、あくまでも一時的に住むだけでいずれ帰る目途が立てば村に戻るという。

丁度ミルの方もリディアの手伝いは必要なくなり、彼女を解放してくれたので二人は寝泊まりしている街長の屋敷に向かう。屋敷に向かう途中、ルノは夕方に起きた出来事を話して自分の考えた提案をリディアに告げると、彼女は心底呆れた表情を浮かべた。


「はあっ!?あんた、自分が何を言っているのか理解しているの?」
「何か問題ある?」
「問題も何も……あたしにその牙竜を従わせる事自体がおかしいでしょ!?」
『シャアアッ?』
「ブモォッ?」


ガーゴイルが引率するマダラパイソンの背中に乗りながらルノの考えを聞いたリディアは呆気に取られるが、ルノ本人は至って真面目に考えた作戦であり、リディアが牙竜を従えられたらルノとしても都合が良かった。


「リディアが前に牙竜を従えていたでしょ?だからこの地方の牙竜を捕まえて契約を交わせば従えさせられるんじゃない?」
「それはまあ、あんたなら牙竜程度なら簡単に捕まえられるでしょうけど……言っている意味わかってるの?あんたは私に竜種を与えようとしているのよ?」
「何か問題ある?」
「はあっ……私がその牙竜を利用してあんたを殺そうと考えないと思ってるの?」
「リディアが俺の事を殺そうと思う訳ないじゃん」
「えっ……」


あっさりとルノはリディアが裏切る事はないと断言し、逆にリディアの方が返答に困る。まさかそれほど自分の事を信頼しているのかと戸惑いを隠せない。


(こいつ……私の事をそんなに信用しているの?どれだけお人よしなのよ……まあ、裏切る理由もないんだけどね)
(正直、牙竜ぐらいなら今の俺なら普通の初級魔法でも倒せそうだしな……)


リディアはルノが自分の事をそれほど信頼しているのか考えたが、実際の所はルノにとって牙竜という存在など今となっては最弱の魔物であるゴブリンと大差はなく、仮にリディアが牙竜を利用して襲い掛かっても迎撃出来る自信はあった。実際に過去に二頭の牙竜を氷竜の爪で叩き潰した実績もあるため、ルノがリディアが裏切らないと断言した理由は裏切ったところで対処出来るという考えからだった。


(まあ、俺以外の人に迷惑を掛けないようにしっかりと見張らないといけないけど、これから兵士の人たちを同行させて街の外に出向くならやっぱりある程度の戦力は必要なんだよな……)


ルノも考え無しにリディアに牙竜と契約させようとしているわけではなく、今後ルノ達はガオンの部隊を引き連れて13番街を立ち去り、各地で未だに暴れているガオンの配下を捕縛して第一王子が占拠している港に向かう予定だった。

ガオンの直属の配下は13番街に滞在していた人間だけでも数百名は存在し、更に各地に派遣された兵士たちを集めると数千は超える。そんな人数を統率して港に向かうのはルノでも難しく、もしも途中で彼等が反旗を翻してルノに襲い掛かったとしても返り討ちに出来る自信はあるが、出来れば人殺しを行うような真似は避けたい。


(俺一人だと兵士の人達全員の相手は出来ないし……リディアが牙竜を従えてくれたら少しは楽になるんだよな)


下位とはいえ竜種である牙竜をリディアに従えさせて彼女が手伝ってくれた場合、ガオンの部隊を移送する際に色々とルノも助かる。ルノの一人の場合だと常に兵士を見張り続けなければならずに気苦労が絶えず、寝込みを襲われる可能性も高い。だが、二人存在すれば負担は半分に減らし、更に交代制で眠る事が出来る。

当初は街の住民に協力を仰ぐ事も考えたが、鍛え上げられた兵士と多少武術を教えてもらった街の住民では本来ならば相手にもならず、そもそも住民を救うために動いているのにその住民を危険に侵すような真似は出来ない。また、牙竜の嗅覚ならば荒野で移動中に隠れている獲物を見つけ出して捕獲する事も出来る可能性があるため、牙竜の存在は必要不可欠だった。


「リディアが一緒だと心強いし、それに前に俺のせいで牙竜を失ったって怒ってたでしょ?だから牙竜の捕獲を手伝うから契約してよ」
「し、仕方ないわね……でも、今の私でも牙竜を完全に従えさせるのは時間が掛かるわよ」
「大丈夫だよ。調教のためならいくらでも協力するから」
「……つくづくあんたが敵じゃなくて良かったと思うわ」
「じゃあ、手伝ってくれる?」
「はあっ……分かったわよ。こうなったら一蓮托生よ、あんたに最後まで付いていくわ」


観念したようにリディアはルノの提案を承諾し、二人は無意識に握手を行う。紆余曲折はあったが、何だかんだで二人の距離も縮まっていた――
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