最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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崩壊地球編

最終話 〈老いても彼は英雄だった〉

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「ナオ君!!」
「分かってる!!」
「皆さん、ルノさんたちを全力で援護してください!!」
「……戦う、これがきっと最後」
「うおおおおっ!!」


ルノは飛翔術を利用して飛び立つと、ナオは千里眼を発動させる。リーリスも援護のために魔導大砲を用意すると、コトネとデブリも彼女の手伝いを行う。他の者達も動きだし、まずは巨大生物の落下を食い止めるために行動を移す。


「氷塊!!」


最初にルノは巨大生物の真下に接近すると、ありったけの魔力を注ぎ込む事で巨大な氷塊を生み出す。今回は形にこだわる暇はなく、円盤状に展開させると巨大生物の落下を食い止めようとした。その光景を確認したナオは完全に巨大生物が出現するまで待機を行い、他の者達は魔導大砲の設置を行う。



『オオオオオッ……!!』
「ぐうっ!?」



巨大生物が遂に完全に亀裂から出現すると、氷塊に強烈な衝撃が走り、全体に亀裂が走った。あまりの超重量に氷塊が砕けかけるが、どうにかそれを抑えるためにルノは強化スキルを発動させて抑え込む。絶対零度を発動させて罅割れた氷塊に冷気を纏わせ、更に重力を内側に加える事で落下の勢いを殺す。


「このぉおおおっ!!」
「今だ!!吸い込めぇっ!!」


紅色の魔力を纏った氷塊が巨大生物の落下を食い止め、その隙にナオは空間魔法を発動させると、宇宙空間と繋げた黒渦が出現し、上空から巨大生物を吸い込む。しかし、それでも小さな島は存在するのではないかと思う程に巨大な生物は怯む様子もなく、氷塊を破壊するために足を叩きつける。


『オアアアアッ……!!』
「駄目です!!自衛隊の皆さん、早く攻撃してください!!」
「そ、それが……上空に出現した穴に吸い込まれる可能性があるので戦闘機が近づけません!!」
「地上の兵器も巨大な氷によって妨げられ、攻撃できません!!」


リーリスの言葉に自衛隊員はルノとナオの魔法によって現時点では攻撃できない事を伝え、現在の状態ではどんな兵器も使えなかった。だが、魔法を解除させれば巨大生物の落下によって東京は大きな被害を生み出し、リーリス達も無事では済まない。

やがて亀裂が全体に走った氷塊に限界が訪れ始め、徐々に高度が落ちていく。必死にルノは氷塊を抑えつけようとするが、巨大生物が攻撃を繰り出すたびに衝撃が走り、落下していく。それを確認したリーリスは全員に伝える。


「魔導大砲を氷塊に向けて発射して下さい!!全ての大砲を使いますよ!!」
「え!?だが、そんな事をして大丈夫なのか!?あの氷が壊れるんじゃ……」
「だからこそ水属性の砲弾だけを使用してください!!この砲弾は元々はルノさんの水属性の魔力で作り出した吸魔石です!!だから氷塊に着弾すれば魔力が解放されて氷塊を修復するはずです!!」
「なるほど……それならば儂等でも手伝えるな」
「ほら、あんた達も手伝いなさいよ!!」
「キュロロッ!!」
「ブモォッ!!」


全員がビルの上に配置した魔導大砲を構えると、ルノの作り出した氷塊へ向けて次々と発射を行う。その結果、大量の冷気の砲弾が氷塊へ衝突すると、亀裂の上に更に氷が誕生して破壊を防ぐ。それを見ていた自衛隊員も手伝いを行う。


「我々も手伝います!!」
「お願いします!!あるだけ全部撃ち込んでください!!」


魔導大砲を扱うだけならば一般人でも可能のため、自衛隊員も使い方を教わると次々と氷塊へ向けて発射を行う。これで少しは余裕が出来たのでルノは氷塊を上昇させてナオが作り出した黒渦へ巨大生物を接近させる。


「いっけぇえええっ!!」
『オオッ……アァアアアアッ!!』


しかし、危険を察したのか巨大生物は咆哮を放つと巨体を跳躍させ、今度は落下速度を加速させて氷塊へ全体重を叩きつける。その結果、一気に氷塊の亀裂が広がり、魔導大砲だけでは修復不可能な状態まで追い込まれた。


「あぐっ!?」
「ルノ君!!くそ、いい加減にしろ!!」
『オオオオッ!!』


何度も跳躍を行って氷塊の破壊を試みる巨大生物に対し、ナオは空間魔法の規模を拡大化させようとするが、今のナオの力量ではせいぜい数十メートル程度の黒渦しか生み出せない。このままでは氷塊が破壊され、東京が破壊されると思われた時、地上に控えていたスラミンが何かに気付いたように声を上げる。


「ぷるんっ?」
「ウォンッ?」


スラミンを頭に乗せたルウも隔離されて誰も存在するはずがない地上から臭いを感じ取り、不思議そうに振り返ると、そこには人影が存在した。どうやらまだ人間が残っていたらしく、その「老人」はスラミンとルウの元へ近寄る。


「おおっ……久しぶりだな、スラミン、ルウ」
「ぷるぷるっ……?」
「ウォンッ……?」


自分達に怯えもせずに近寄ってきた老人にスラミンとルウは首をかしげるが、そんな彼等を見て老人は笑みを浮かべ、そして上空へ視線を向ける。既に氷塊は限界を迎え、あと少しで崩壊を起こしそうな状態だったが、老人はそれを見て上空へ掌を翳す。


「この魔法を使うのも久しぶりだな……お前達は危険だから下がっていなさい」
「ぷるん……?」
「クンクンッ……ウォンッ!?」


老人から放たれる魔力を感知したスラミンは驚愕の表情を浮かべ、ルウの方も臭いを嗅ぎ取ると驚いたように目を見開く。何しろ老人から放たれる魔力も臭いも自分達の主人と全く同じである事に気付く。そして老人は頭に被っていた帽子を脱ぎ去ると、彼は両手を広げて魔法を発動させる。




「螺旋氷弾!!」





老人の両手から巨大な螺旋状の氷の砲弾が放たれ、しかも十数本の氷弾が同時に発射された。その結果、崩壊を仕掛けていた氷塊に複数の螺旋氷弾がめり込み、更に夥しい冷気が氷塊を包み込むと、亀裂の上を更に氷漬けにする事で罅割れを抑えた。

唐突な地上からの援護に上空を浮かぶルノは驚いたが、異変はそれだけではなく上空の方に新たな黒渦が出現し、しかも今回は数百メートル級の大きな黒渦が出現する。その結果、巨大生物は一気に吸い込まれ、徐々に降下していた氷塊も高度を上昇させる。


『オアアアアッ……!?』
「な、なんだ!?何が起きてるんだ!?」
「情けないな……この程度の相手、苦戦するようじゃ友達を守る事も出来ないぞ?」


ビルの上に立っていたナオの背後から声が掛けられ、驚いたナオは振り返ると、そこには自分の祖父と顔が似ている老人が存在した。彼は上空へ向けて掌を伸ばし、その行為の意図を察してナオは老人の正体に気付く。


「あなた、まさか……!?」
「余所見をするな、さあ世界を救うぞ貧弱の勇者!!」
「……うおおおっ!!」


老人の言葉を聞いてナオも負けずに黒渦を拡大化させると、二つの黒渦に徐々に巨大生物が吸い込まれていき、それを確認したルノは巨大生物を支える氷塊を変形させる。


「これで最後だぁあああっ!!」
『アアアアアッ!?』


空中に展開されていた氷塊が巨大な「螺旋氷弾」へ変形を果たすと、巨大生物の胸元に衝突し、串刺しのように貫通する。その結果、胸元を中心に巨大生物の肉体に亀裂が走り、崩壊を引き起こす。全ての瓦礫は上空へ誕生した黒渦によって吸い込まれていき、内側から氷漬けにされた巨大生物は血液さえも凍り付き、やがて力を失っていく。




――ウオオオオオオッ……!?




最後に慟哭のような断末魔の悲鳴をあげると、巨大生物は完全に宇宙空間へ姿を消し、やがて東京の上空に広がっていた壊裂が完全に消失した。その光景を確認したルノは地上へ降り立つと、やがて二つの黒渦は消え去り、青空を取り戻した。


「や、やった……のか?」
「ああ、やったんだ」
「え?」


ルノは振り返ると、そこには見知らぬ老人が存在し、彼はルノに微笑むと腕時計の形をした腕輪を確認して頷く。


「おっと、私はここまでのようだ。お別れの時間だな、ルノ」
「その腕輪……まさか、貴方は……!?」
「ふふふ……コトネとリーリスによろしく伝えておいてくれ」


老人は意味深な表情を浮かべると、そのまま腕輪が光り輝き、やがて光の粒子と化して消え去る。その光景を確認したルノは慌てて消えた老人が立っていた場所に赴くと、自分の装着した腕輪を確認する。


「そっか……そういう事だったのか」


ルノは老人の正体を悟ると、笑顔を浮かべて上空を見上げ、そして自分を待ち構えているであろう仲間達の元へ急いだ――






※これにて本当に最弱職は完結となります!!今までのお付き合い、誠にありがとうございました。OTL
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