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王都編

第16話 通り魔

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「うわぁっ……やっぱり、都会は人が多いな。うわっ!?」
「おっと、悪いな坊主」


街道を渡り歩く人々の姿にマオは圧倒されていると、後ろから何者かとぶつかる。慌ててマオは振り返ると、そこには身長が3メートルを軽く超える巨大な男性が立っていた。

男性の姿を見てマオは人目で「巨人族」だと見抜き、男性は倒れたマオに手を伸ばすと彼を立たせる。マオは巨人族を見るのは初めてというわけではないが、こうして直に見るのは初めてだった。


(小さい頃に巨人族を遠目で見た事はあったけど……本当に大きいな)


巨人族の体躯は人間の倍は存在し、中には5、6メートルを超える巨人族もいると噂されている。巨人族の男性はマオに謝ると、立ち去っていく。


(やっぱり、王都は凄い所なんだな……いや、それよりも魔法学園に移動して入学の手続きをしないと!!)


マオは地図を確認して魔法学園の位置を確かめると、まずは魔法学園の入学手続きを行うために向かう。魔法学園に入れば寮で暮らせるため、衣食住は保証される。

街道を移動する途中、マオは女主人《バルル》に言われた通り魔の話を思い出す。なんでも子供を狙った通り魔が王都に現れたらしく、マオは自分も襲われないように気を付けようと考える。


(まあ、子供といってもいっぱいいるし、僕が狙われる事なんて早々ないよね)


王都にはたくさんの子供が住んでいるはずなので自分が狙われる可能性は低いと思いながらマオは街道を歩いていると、不意に彼は路地裏を発見する。別に路地裏など珍しく思ないが、奥の方から誰かの声が聞こえたような気がした。


(何だ?今、誰か叫んだような……)


路地裏の奥が気になったマオは立ち止まり、考えた末に様子を伺う事にした。路地裏の奥に向けてマオは移動すると、建物に取り囲まれた空き地に繋がっていたらしく、そこには異様な光景が広がっていた。


「ひ、ひひっ……ひひひっ……」
「かはっ……!?」
「……えっ?」



――空き地には黒色のローブを身に着けた男性が存在し、その手には血塗れの短剣が握りしめられていた。そして男性の足元にはマオと同じぐらいの年齢の男の子が倒れており、その光景を見たマオは呆気に取られる。

男の子は腹部から血を流しており、まだ辛うじて生きているのか身体を痙攣させていた。一方で男性の方は短剣にこびりついた血を舐め取り、子供を見下ろしたまま笑みを浮かべていた。



(と、通り魔……!?)


状況的に考えて男性が子供を襲ったのは間違いなく、マオは偶然にも通り魔を発見してしまった。恐らく彼が路地裏から聞こえてきた声は倒れている子供の悲鳴であり、マオは男性が子供を襲う現場を目撃してしまう。


(た、助けなきゃ……でも、どうやって!?)


幸運な事に男性はローブで顔を覆い隠しているせいで視界が悪いのか、まだマオに気づいた様子はない。だが、このままマオが何もしなければ倒れている子供は男性に殺されてしまう。

咄嗟にマオは街道を渡り歩く人々に助けを求めるべきか考えたが、今から助けを求めに行けば確実に子供が殺されてしまう。そうなると子供を助けられるのはマオだけだが、人を殴った事もないマオは男性を止められる自信はない。


(ど、どうすれば……どうすればいいんだ!?)


マオは必死に考えるが、男性は彼が考えている間に短剣を両手で掴み、今度は子供の頭に目掛けて振り下ろそうとした。その光景を見てマオは反射的に小杖を取り出して叫び声をあげる。


「止めろぉっ!!」
「っ……!?」
「うあっ……!?」


男性はマオに声を掛けられて振り返ると、そこには自分に向けて杖を構える少年が立っている事に気付く。しかし、男性はマオの姿を見ても取り乱した様子はなく、むしろ怒りの表情を抱く。


「じゃ、邪魔するなっ……ガ、ガキが!!」
「くっ……」


呂律がおかしい男性を見てマオは冷や汗を流し、ローブで隠されていた男性の顔には「蛇」のような入れ墨が刻まれていた。明らかに普通の人間ではなく、マオは恐怖のあまりに身体が震えてしまう。

しかし、小杖をしっかりと掴んだままマオは男性に狙いを定め、もしも男性が動けば魔法を放つ準備は整っていた。人を相手に魔法を放つ事は初めてではなく、先ほどもリオンに対してマオは魔法を放った。


(た、戦うしかない!!やるんだ……やれ!!)


子供を救うため、そして自分自身を守るためにマオは恐怖を抱きながらも魔法を発動させるために呪文を言い放つ。


「アイス!!」
「なっ……!?」


マオが呪文を唱えた瞬間、杖先から青色の光が灯る。その光景を見て男性はマオが魔法を使おうとしている事に気付き、慌てて両腕を交差して顔面を覆う。


「喰らえっ!!」
「ぐぅっ……!?」


杖先からが誕生すると、男性の元に目掛けて放たれる。それを見た男性は身構えるが、氷の欠片は男性の腕に衝突すると粉々に砕け散ってしまう。男性は驚いた表情を浮かべ、その一方でマオは唖然とした。
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