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王都編

第15話 王都

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――リオンが立ち去った後、マオは宿屋の主人の元に訪れると宿代に関しての話を聞く。リオンは立ち去る前にマオが眠っていた部屋の宿代を支払っていたらしく、しかも三日分も支払っていたらしい。


「宿の代金なら受け取っているよ。三日間三食食事つきで銀貨3枚だよ」
「えっ!?そんなにするんですか!?」
「あんたね、ここは普通の宿屋じゃないんだよ。王都の中でも一番の宿屋なんだよは?普通ならあんたみたいな子供が一人で泊まれる場所じゃないんだよ。あの銀髪の貴族様に感謝しな」
「貴族?リオンが……?」


宿屋の主人は女性であり、年齢は30代前半ぐらいの赤髪が特徴的な女性だった。美人ではあるが身長は180センチ近くはあり、彼女に見下ろされるだけでマオは女性の迫力に気圧される。

女主人の名前は「バルル」というらしく、宿屋を経営する前は料理人だったらしい。彼女はマオが宿屋に泊まるまでの経緯を説明してくれた。


「昨日の夜、急にあの貴族のお坊ちゃんが来てあんたを休ませるように言ってきたんだよ。それで仕方なく急遽部屋を用意してやったのさ。全く、あんたがあのお坊ちゃんとどういう関係なのか知らないけど、友達のために宿代を三日分も支払ってくれるなんて優しい子だね」
「そんな……」
「何だい、変な顔をして……お坊ちゃんにお礼はちゃんと言ったのかい?」


マオはバルルの言葉を聞いて言われてみれば自分がリオンに助けてもらいながら、ちゃんとお礼を言うのを忘れていた事を思い出す。彼には宿代まで支払ってもらったのに感謝を伝える事もせず、あのような形で別れた事を心苦しく思う。


(今度会ったら謝らないと……それにこの小杖も返さないと)


リオンから受け取った小杖を見てマオはなし崩しで受け取ってしまったが、やはり今度再会したらリオンに返す事にした。命を助けてもらってしかも宿代まで払ってもらい、更には小杖を受け取ったままではリオンに合わせる顔がない。

小杖に関してはリオンがマオに命を助けてもらったお礼として渡した物だが、元々マオがリオンと出会わなければ彼もファングの群れに狙われる事はなかった。しかし、今のマオは路銀も大して持ち合わせておらず、まずは魔法学園に入学する必要があった。


「あの、魔法学園はどこにあるのか分かりますか?」
「魔法学園?あんた、魔法学園に何の用だい?」
「えっと、実は入学する予定なんですけど……」
「何だって!?じゃあ、あんたは魔術師なのかい!?」
「いや、僕はまだ魔術師ではないです!!魔術師の適性があるだけで……」


バルルはマオが魔術師の素質がある事を知って驚き、彼女は考えた末に受付に移動して羊皮紙を取り出す。彼女が取り出したのはこの王都の地図であり、それをマオに渡すと彼女は笑みを浮かべる。


「これを持って行きな観光客用に販売している王都の地図だよ。金はいらない、その代わりにあんたがもしも魔術師に慣れた時はこの宿の常連になってくれるかい?魔術師様が常連客となればうちの宿も箔がつくからね」
「え、でも……」
「気にしなくていいよ、売れ残った余り物だからね」
「わ、分かりました。なら遠慮なく……」


女主人から羊皮紙を渡されたマオは有難く受け取り、魔術師になれたら彼女の言う通りにこの宿屋の常連客になる事を心の中で誓う。しかし、まずは魔法学園に入学して魔術師を目指す必要があった。


(地図によると……魔法学園はここか)


地図を確認した所、魔法学園は運がいい事にマオが宿泊している宿屋からそれほど離れてはおらず、徒歩でも移動できる距離だった。地図を確認した限りでは王都はかなり広く、マオが暮らしていた村とは比べ物にならない広さを誇る。


(さ、流石は王都、凄く広いんだな。それとも僕の村が田舎なだけだったりして……)


王都の広さに圧倒されながらもマオは外に出向こうとした時、バルルが思い出したように彼の背中に声をかけた。


「おっと、あんた外に出るのなら気を付けな。ちゃんと武器は身に着けて置くんだよ」
「え?」
「最近、この王都で通り魔が現れてね。特にあんたのような子供が狙われるらしいよ。遅くなる前に早く帰ってくるんだね」
「あ、はい……」


出かける前に通り魔の話を聞かされたマオは背筋が震え、つい先日に死にかけたばかりだというのに通り魔に襲われるなどたまったものではない。念のためにマオは小杖を身に着け、外に出向く事にした――




――王都の街並みはマオが想像していたよりも立派であり、しかも人が多かった。事前に話は聞いていたがマオの想像以上に王都には人が集まり、そして中には人間ではない種族もいた。

この世界では人間以外にも多数の種族が存在し、獣と人間の特徴を併せ持つ「獣人族」人間の倍近くの体躯を誇る「巨人族」魔法の力に優れて容姿も整った者が多い「エルフ」他にも「ドワーフ」や「人魚族」などが存在する。

王都には獣人族や巨人族やドワーフの姿がちらほらと見えるが、エルフや人魚族は全く見かけない。マオが呼んだ絵本ではエルフや人魚族は人間が暮らす街には滅多に姿を現さないらしい。
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