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魔法学園編

第64話 他の教師との対立

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――マオが受ける試験の内容に関してはバルルには伝えられていないが、彼女はマリアとは昔からの付き合いであり、彼女が考えそうな事は既に予想していた。


「先生《マリア》はあんたに課す試験は魔物と戦わせる事だろうね」
「ま、魔物!?」
「……でも、魔法学園では生徒と魔物を戦わせる授業は三年生になってからのはず」
「そんな授業もあるんですか!?」


バルルの言葉に驚き、更にミイナの話を聞いてマオは唖然とする。魔法学園では魔物と生徒を戦わせる授業がある事も驚きだが、一年生に課す試験としては流石に危険が大き過ぎる。普通に考えれば有り得ない話なのだが、月の徽章の生徒の場合は話は別だという。


「月の徽章を持つ生徒の殆どは試験の時、魔物を倒して高評価を得てるんだよ。つまり、魔物ぐらい倒せる実力を持っていない生徒を月の徽章を持つに相応しくはないわけさ」
「そんな無茶苦茶な……」
「そう無茶でもない。学園の上級生なら魔物と戦う授業もたくさん受けている」
「そ、そうなんですか」


森の中で魔物に襲われたマオとしてはあんな恐ろしい存在と戦わされる事に不安を抱くが、あの頃と違って今のマオは戦う力を身に着けている。森の中ではリオンに守られてもらっていたが、今のマオならば彼の足手まといにならない自信もあった。

しかし、魔物と戦うと言ってもマリアがどの魔物をマオと戦わせようとしているのかまでは分からない。それに今回の試験は他の教師が選んだ魔物の中からマリアが選んで戦わせるため、この時点ではバルルもマオがどんな魔物と戦うのかは知る由もない。


「マオ、あんたは魔物を見た事はあるよね?」
「はい……でも、オークとファングだけです。僕が暮らしていた村は魔物は出なかったので……」
「平和で羨ましい。私の生まれた場所はそこら中に魔物が居て危険だった」
「オークとファングか……どっちも今のあんたなら対処できる相手だね」
「えっ!?そうなんですか?」


バルルの見立てではマオの実力ならばファングもオークも倒せない敵ではないらしく、その言葉にマオは驚く。前に遭遇した時は一方的に追い掛け回されていた相手だが、今のマオの下級魔法ならば勝ち目は十分にある。


「もっと自信を持ちな、あんたは強くなったんだよ。今のあんたの魔法なら魔物が相手でも十分に通用するさ」
「そ、そうなんですか?」
「自信を持っていい、それに魔物なら私も何度か倒した事がある。確かに厄介な相手だけど、マオならファング程度なら問題ない」
「は、はあっ……」


二人に言われてもマオは完全には納得できず、自分の実力を完全には信じ切れない。確かに最初の頃と比べたら魔法を扱う技術も身に着け、強くなったという自覚はある。

しかし、森の中でみっともなく魔物から逃げ回った記憶を思い出すだけでマオは不安を拭えず、そんな彼の気持ちを読んだようにバルルは頭を掻く。


「どうやらまだ自分の力に自信が付いていないようだね……仕方ない、それなら今から試験の予行演習を行おうか?」
「えっ!?今から?」
「何をするの?」
「あたしの知り合いに頼んで手ごろな魔物を用意させて戦わせるんだよ。安心しな、何かあってもあたしが守ってやるからさ。ほら、着いてきな」


バルルの言葉にマオとミイナは顔を見合わせ、彼女が何処に連れていくのかと不思議に思う――





――バルルがマオとミイナを連れて廊下に出ると、この時に一人の教師が彼女の前に立ちはだかる。その教師はマオも見知った顔であり、三年生の担当教師を勤める白髪の男性だった。


「むっ……バルル、今日は学校に来ておられたのでしたな。私はてっきり、本日も外で遊び惚けていたと思ってましたよ」
「あん?あんた……誰だい?悪いね、ここへ来たばかりでまだ教師全員の名前を憶えてないので」
「くっ……それが年配の人間を相手する態度か!!」
「ちょ、ちょっと師匠……」
「…………」


白髪の教師はバルルの態度に怒りを露わにするが、バルルは不貞腐れた態度を貫き、そんな彼女をマオは落ち着かせようとした。しかし、教師はマオの方を見てある事に気付く。


「む、君は……そうか、君が例の噂の少年か。通り魔をにも捕まえて学園長に気に入られたと聞いているぞ」
「偶然とはなんだい、こいつは実力で危険な殺人鬼を捕まえたんだよ」
「ふんっ……マカセ先生から話は聞いているぞ。この年齢で魔力操作の技術は中々らしいが、魔力量が少ないらしいな」
「あ、えっと……そうみたいです」


魔力量が少ないと言われてマオは眉をしかめるが、紛れもない事実なので教師の言葉は認めるしかない。そんな彼に白髪の教師は小馬鹿にした様に告げる。


「そういえばバルル先生も若い頃は魔力量が少なく、それが原因で魔法学園を退学したそうとか……全く、お似合いの教師と生徒ですな」
「……喧嘩を売ってるのかい?」
「いえいえ、そんな事は……では、授業をほったらかしにして遊び惚けるのはほどほどにした方がいいですぞ。それと……ミイナもあまり学園長には迷惑を掛けないように」
「……分かってる」


教師は最後にマオ達を小馬鹿にしたような態度を取る一方でミイナにだけは何故か視線すら合わせず、急ぎ足で廊下を立ち去っていく。そんな彼に対してマオは怒りを抱き、バルルは睨みつけ、ミイナも鼻を鳴らす。
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