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魔法学園編

第67話 ギルドマスター

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バルルが白銀級冒険者のバッジを見せると受付嬢は急いでギルドマスターに報告を行い、すぐにマオ達はギルドマスターのいる部屋へ案内された。中に入るとそこには筋骨隆々の巨人族のが立っており、それを見たバルルは笑みを浮かべる。


「よう、久しぶりだね姐さん。元気にしているかい?」
「バルルか、久しぶりだな」
「ど、どうも……初めまして」
「……どうも」


この巨人族の女性が王都の冒険者ギルドのギルドマスターを勤め、彼女とバルルは昔馴染みだった。久しぶりの再会ではあるがギルドマスターは無表情のままソファに座るように促す。


「そこに座れ、すぐにお茶を用意させよう」
「ついでにお茶菓子も頼むよ。安い奴じゃなくて高い奴ね」
「相変わらずだな、用意させよう」
「あ、あの……僕はいいです」
「私もさっき食べたばかりだからいらない」


バルルはソファに座ると両隣にマオとミイナも座り、ギルドマスターはベルを鳴らす。するとすぐに部屋の中にギルドの職員が駆けつけ、彼女は人数分のお茶とバルルが頼んだ分の茶菓子を用意するように促す。

職員がすぐに机の上にお茶と御茶菓子を並べると、改めてマオ達はギルドマスターと向かい合う形で座り込む。巨人族の女性を見るのはマオは初めてだが、その圧倒的な威圧感は男性の巨人族にも勝る。


「相変わらずあんたは怖い顔してるね、うちのガキどもが怖がってるじゃないかい」
「余計なお世話だ。それよりもその二人は……まさか、お前の子供か?」
「違うに決まってるだろ!!弟子だよ、弟子!!ほら、名前を名乗りな!!」
「ど、どうも……マオと申します」
「ミイナ、です」


ギルドマスターの言葉にバルルは憤慨し、二人に自己紹介を行わせる。二人の名前を聞いたギルドマスターは子供が相手でも礼儀正しく頭を下げて自分も自己紹介を行う。


「この王都の冒険者ギルド「白虎」のギルドマスターを務めているランファだ」
「ランファはあたしと幼馴染でね、こう見えても同い年なんだよ」
「え、そうだったんですか!?」
「おおうっ……」


バルルの言葉にマオとミイナは二人を見比べ、年齢はどちらも30代だと思われるが、ランファは体格が大きいせいで迫力を感じさせる。ずっと無表情のままなので感情が読み取りにくく、そのせいで余計に近寄りがたい。


「こう見えてもこいつは子供好きだからね、だからそう怖がることはないよ」
「は、はあっ……」
「それでバルル、急に来た用件はなんだ?まさか冒険者に戻るつもりに……」
「よしてくれよ、あたしはもう引退したんだ」


ランファが言葉を言い終える前にバルルは否定し、自分は冒険者に戻るつもりはない事を伝えた。そんな彼女の返答にランファは少しだけ寂しそうな表情を浮かべたが、すぐに元の無表情に戻ってしまう。


「そうか、それなら今日は何しに来た?ただ顔を店に来たわけじゃないんだろう?」
「まあね、単刀直入に言うけどうちの弟子達を魔物と戦わせたいから協力してほしい」
「……どういう意味だ?」


バルルの言葉にランファは一瞬だけ驚いた表情を浮かべ、すぐに目つきを鋭くさせる。彼女の気迫が増したせいでマオは無意識に震え、ミイナも猫耳と尻尾を伏せて怯えた猫のように縮こまる。


「見た所、その二人はまだ12か13ぐらいだろう。お前の弟子というぐらいなのだから鍛えてはいるんだろうが、それでも魔物と戦わせるのは危険過ぎる」
「それがどうしたんだい。あたしらだってこいつらと大して変わらない年齢で魔物と戦っていただろう?」
「私達は15才の時に冒険者になった時だ。その二人は若すぎる、強力はできない」
「ああ、だけどあんたが協力しようとしなかろうとこっちのマオは近いうちに魔物と戦う事になってるんだよ」
「……その少年が?」
「こっちも色々と事情があってね……一から話すよ」


どうしてもランファの協力を得たいバルルは包み隠さずに自分達の状況を伝える。バルルは自分が魔法学園の教師として雇われている事、学園長からマオとミイナの面倒を見る事を頼まれた事、そして現在は他の教師に目を付けれてマオがどうしても試験を受けなければならない事を伝えた。

話を最後まで聞き終えるまでランファは黙っていたが、事情を知ると彼女は心底呆れた表情を浮かべる。バルルが自分の元に訪れた理由を知った彼女は少し怒った様子で口を開く。


「つまり、お前は自分の不始末を弟子に解決させようというのか」
「人聞きが悪いね……でも、その通りだね。今回の一件はあたしの責任だ」
「そんな、別に師匠のせいじゃ……」
「私が逃げ回ったせいでもある……だから私も少し責任がある」
「いや、あたしのせいさ。もうちょっと周りと上手くやっていればこんな事にはならなかったのにね……」


他の教師にバルルが目を付けられたのは彼女は授業を行わずにミイナを追い掛け回していたためであり、その辺の事情を他の教師に上手く伝えていれば問題は起きなかったかもしれない。しかし、今更後悔しても遅く、バルルは自分のために試験を受ける事を決めたマオのためにランファに協力を求める。
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