上 下
69 / 261
魔法学園編

第68話 協力の条件

しおりを挟む
「このまま試験を受けるとなるとこいつはぶっつけ本番で魔物と戦う事になる。それだけは避けたいから、今のうちにこいつに魔物とのをさせておきたい」
「……言いたい事は分かった。だが、魔物と戦う以上は危険を伴うぞ」
「それは知っている。だけど、このまま何もしなくてもこいつが魔物と戦う事に変わりはないんだ」
「…………」


ランファはバルルの話を聞いて黙り込み、このまま自分が協力しなければマオは試験の時に魔物と戦う事になる。魔物と遭遇したのは以前にもあったが、あの時はリオンに守られていてマオ自身は先頭には参加していない。

バルルとしては試験の前にマオに少しでも魔物との戦闘経験を積ませ、試験本番の時に彼が少しでも緊張しないように挑ませてやりたかった。試験で初めて魔物と戦うとなればどんな人間でも緊張してしまい、本来の実力を発揮できない。

相手がただの人間ならばともかく、魔物との戦闘となると命の危機に晒される。勿論、試験の時は教師も監視するので本当にマオが危ない目に遭いそうならば教師も助けてくれるだろう。だが、が起きないとも限らない。


「姐さん、こんな事を頼めるのはあんたしかいないんだ」
「……私にどうしてほしいというんだ」
「別に難しい事じゃないよ、このギルドでは新人の冒険者の訓練用に危険度が低い魔物を飼育しているだろう?そいつをマオと戦わせてほしいんだよ」
「つまり、訓練用の魔物をその子と戦わせたいという事か?」


冒険者ギルドにバルルが来た目的はマオに訓練用の魔物と戦わせ、この場所ならば腕利きの冒険者も勢揃いしているので訓練中にマオが危険な目に遭ってもすぐに助け出せる。そう考えた上でバルルは冒険者ギルドに訪れたのだが、ギルドマスターとしてランファは一般人を魔物と戦わせる事に賛成はできない。


「駄目だ、ギルドが管理する魔物はあくまでも冒険者の育成のために飼育している。部外者に魔物と戦わせる事はできない」
「そこを何とかできないのかい!?」
「無理だ。もしも一般人に魔物と戦わせたと知られればギルドの沽券に関わる。すまないが訓練用の魔物を戦わせる事はできない」
「……はあっ、やっぱりそういうと思ったよ」


バルルはランファの返答を予想していたのか彼女は落胆した表情を浮かべ、その様子を見てマオは不安を抱く。このままでは自分は試験本番の時に魔物と初めて戦う事になると思いかけた時、ランファは顔を上げてある提案を行う。


「だが、その子が魔物と戦う方法は他にもある」
「本当かい!?」
「ああ、但しこの方法は危険が大きい。絶対に安全とは言い切れない……それでもやるか?」


ランファの言葉にバルルは顔を上げるが、対面に座るランファは今までにないほどに真剣な表情を浮かべていた。そんな彼女の気迫に気圧されながらもバルルは話を聞く。


「まずは話を聞かせてくれるかい?その後に判断するからさ」
「そうか、なら方法を教えよう。お前がその子を魔物が生息する地域まで連れて行き、冒険者を護衛として雇う」
「あっ……なるほど、その手があったね!!」
「え、どういう意味ですか?」
「……?」


話を聞いたバルルは意表を突かれた表情を浮かべ、二人の話を聞いていたマオとミイナは具体的にどうするつもりなのかを尋ねる。するとランファの代わりにバルルが説明を行う。


「要するに冒険者を護衛として雇って、あんたを魔物が現れる地域まで連れて行くんだよ。そうすれば魔物が襲ってきた時はあたしや冒険者があんたを守る事ができるし、あんた自身も魔物と戦う事ができる。姐さんはそう言いたいんだろう?」
「ああ、だがこの方法は非常に危険を伴う。いつどこで魔物が現れるかもしれず、最悪の場合は魔物の群れに襲われる可能性もある。絶対に冒険者がそれでもやる覚悟はあるか?」
「……あたしを誰だと思ってるんだい?こう見えても金級まで上り詰めた冒険者だよ。ガキの一人や二人、冒険者なんか居なくても守り切れるさ」
「大した自信だな……だが、冒険者は必ず同行させてもらう。そんな話を聞いた以上、私も放ってはおけないからな」


ランファはバルルの言葉を聞いて早速手続きを行い、彼女を依頼人にさせて冒険者の護衛依頼を行うように促す。バルルはランファの言う通りに従い、自分が護衛を依頼するという名目で冒険者ギルドに仕事を頼む。

色々と手続きや依頼を引き受けてくれる冒険者を探すのは時間が掛かるらしく、今日の所はバルル達は学園に戻る事になった。依頼を引き受けてくれる冒険者が決まるまではマオ達は大人しく待つ事しかできなかった――





――翌日、バルルの元に連絡が届いた。但し、連絡と言っても冒険者ギルドからではなく、学園長から試験の日程が決まった事を伝えられる。試験を開始する日は三日後と決まった。

三日後までにバルルはマオに何としても魔物との実戦経験を積ませなければならなくり、冒険者ギルドからの連絡を待っていられずにマオとミイナを連れて乗り込む。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

暗殺者は王子に溺愛される

BL / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:1,564

クラッシュゼリー

BL / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:857

常闇の魔女は森の中

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:285

女装人間

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:12

【R18】だって、あなたが下手だから。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:112

処理中です...