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魔法学園編

第201話 意外な助っ人

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「退け、リンダ!!巻き添えを喰らうぞ!!」
「くぅっ!?その声は……やはりバルトですか!?」
「先輩……!?」
「どうしてここに……」


学生寮の屋根に待機していたのはバルトであり、彼の登場に驚いたのはマオ達も同様だった。バルトは杖を構えるとマオ達と生徒会の間の地面に再び魔法を放つ。


「スラッシュ!!」
「うわっ!?」
「これは……」
「くっ……バルト!!余計な真似はしないでください!!」


風の斬撃がマオ達と生徒会の間に割り込んだ事で再び土煙が舞い上がり、生徒会の人間だけが土煙に巻き込まれえる。一方でマオ達の方はお互いに肩を貸して立ち上がり、その場を離れる事に成功した。

バルトに対してマオとミイナは見上げると、彼は笑みを浮かべて親指を立てた。どうやら彼はマオ達に協力するつもりらしく、生徒会の人間に注意を促す。


「おい、お前等!!あいつらは校門の方に向かったぞ!!」
「な、何だって!?」
「くそ、余計な真似をしやがって……」
「副会長、向かいましょう!!」
「…………」


土煙が晴れる頃にはマオ達は建物の陰に隠れる事に成功し、二人を見失った生徒会にバルトは見当違いの方向に逃げた事を伝える。リンダ以外の生徒はバルトの言葉を信じて校門がある方角に向かおうとしたが、リンダはバルトに問い質す。


「バルト!!どうして貴方がここにいるのですか?夜間の外出は禁じられているはずです!!」
「うるせえな、別にいいだろ。そんな事より今は逃げた連中を追うのが先だろうが」
「くっ……本当に校門に逃げたのですね?」
「ああ、さっさと行けよ!!何だったら俺の力を貸してやろうか?」
「いいえ、結構です!!貴方はここに居なさい、規則を破った罰は後できっちり受けさせます!!」
「へいへい、分かりましたよ」


バルトを置いてリンダ達は彼が示した方角に駆け出し、それを確認したマオとミイナは安堵した。もしもバルトがいなければ二人とも捕まっていた可能性が高く、そんな二人に対してバルトは屋根の上から手を振る。


「お前等、今の内だ。さっさと行け、派手に騒ぎすぎたから学生寮の連中も起きちまうぞ」
「は、はい!!でも、先輩がどうして……」
「へへへ、お前等が何か企んでいるのは知っていたからな。だからこうして屋根に待機してたんだ」
「本当に助かった……ありがとう」
「ありがとうございます、先輩!!」


マオ達はバルトに礼を告げると後輩たちからの言葉に彼は少しだけ照れた表情を浮かべ、他の生徒が起きてくる前に逃げるように告げた。


「さあ、さっさと行け!!お前等外に出るつもりなんだろう?」
「先輩は一緒に行かないんですか?」
「俺はここに残る。流石にちょっとやり過ぎたからな、リンダの奴にこれ以上に恨みを買ったら面倒だしな……まあ、俺の事は気にするな」
「マオ、バルトの犠牲を無駄にしたら駄目。先に行こう」
「おいこら、勝手に人を死んだみたいに言うんじゃねえよ!?」
「先輩、恩に着ます!!」


バルトの助力もあって遂にマオ達は学園の外へ抜け出すために行動を開始する。生徒会と見回りの教師に見つからぬうちに二人はその場を離れ、残されたバルトは二人を見送った――





――遂に魔法学園を取り囲む防壁の前にマオ達は立つと、マオは周囲を確認して誰にも見られていない事を把握し、三又の杖を取り出す。彼は杖を地面に構えると同時に三つの氷塊を作り出し、それらを結合させて乗り物を作り出す。


「よし、できた!!」
「これは……何?」
「あ、そういえばまだ名前を付けてなかった。えっと、どうしようかな……氷板《スノボ》と名付けようかな」


マオは作り出したのは板状の氷塊とわっかを半分に割ったような形をした二つの氷塊を作り上げる。最初にマオは板状の氷の上に乗り込むと、バランスを保ちながら落ちないように気をつけて二つのわっかを足元に結合させる。

氷の板に二つのわっかで足元を固定させる事でマオは空中を浮かぶ氷塊に乗り込み、これらの魔法を「氷板《スノボ》」と名付けた。この状態ならば氷塊を浮上させてもマオは落ちる事はなく、場合によっては移動手段としても扱えた。


「これに乗れば空を飛ぶ事もできるようになるんだよ」
「へえっ……ちょっと面白そう」
「まだ慣れてないからそんなに早くは動けないけど……でも、これで防壁を飛び越えられる」


最初の頃は円盤型の氷の上に乗っていたマオだったが、魔力消費を収めるために円盤よりも面積が小さい板状に変化させた。氷板と名付けた氷塊の上に乗り込んだマオはミイナも自分と一緒に氷板に乗せ、しっかりと掴まるように促す。


「ほら、ミイナも一緒に乗って」
「私が乗っても大丈夫?」
「大丈夫、先輩にも協力して貰った時は平気だったから……」


氷板を作った際にマオはバルトにも協力して貰い、彼を乗せた状態でも移動できる事は確認済みだった。もしかしたら氷板を見せた時にバルトはマオが脱出を計画している事を悟ったのかもしれず、彼が助けてくれたのはこの魔法のお陰ともいえるかもしれない。
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