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魔法学園編
第206話 十字架の杖
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「まあ、お前等がどう動こうと俺には関係ないがな……俺が知っている限りの情報はここまでだ。次からは情報が知りたい時は金を用意するんだな。俺に会いたければ夜にここへ来な。次来る時までに新しい情報を仕入れておいてやるよ」
「……どうも」
「マオ、こいつの言う事を信じるの?」
ミイナはマオだけに聞こえるように小声で語り掛けると、正直に言えばマオとしても男の言葉を全て鵜呑みにするのはどうかと思う。冒険者狩りを操る組織がある事を教えてくれたが、冷静に考えれば目の前の男が真実を話しているのかは分からない。
彼によれば弟を逮捕した事を感謝しているそうだが、仮にも自分の弟を警備兵に突き出した相手に情報を提供するなどあまりにも怪しい。しかし、現状ではマオとミイナが情報を集めるのは難しく、情報屋の男の言葉が真実であれば冒険者狩りの足取りを掴める可能性もある。
(この男を信じるべきかどうか……)
マオは頭を悩ませ、一先ずの所はこの場を早々に立ち去る事にした。男がまだ信じられるかどうかは判断しかねるが、とりあえずは学園に戻る事にした。
「ミイナ、もう帰ろう。学園の方も気になるし……」
「分かった。なら……危ないっ!?」
「うわっ!?」
「なっ!?」
ミイナは唐突に大声を上げるとマオに抱きつき、彼を押し倒す形で地面に伏せる。ミイナの行動にマオも情報屋の男も呆気に取られるが、直後に倒れた二人の真上に強烈な突風が通り過ぎた。
「うわっ!?」
「にゃうっ!?」
突風が二人の真上を通り過ぎると、路地裏に大量の血が噴き出す。何事が起きたのかとマオは情報屋の男に視線を向けると、そこには胸元に「十字」のような傷跡を受けた男が立ち尽くし、傷口から血を噴き出しながら膝をつく。
「あっ……な、何だよ、これ……」
「なっ……!?」
「まさか……」
情報屋の男は呆然とした表情を浮かべながら自分の胸元から流れる血を抑えようとするが、傷口が深すぎて血は一向に止まらず、やがて致死量に達したのか膝をついた状態のまま動かなくなった。
マオとミイナは男が死んだ事を確信すると、すぐに起き上がって先ほどの突風が放たれた方角に視線を向けた。そこには何時の間にか全身をフードで覆い隠した人物が立っており、それを見た瞬間にマオは背筋が凍り付く。
(この感覚、殺気!?)
魔物と相対した時のようにマオは謎の人物から強烈な殺気を感じ取る。まるで赤毛熊と対峙した時と同じような威圧感を感じ取り、彼は反射的に杖を取り出す。
「ミイナ、下がって!!」
「マオ!?気をつけて!!」
「……標的」
フードの人物はマオ達に腕を伸ばすとその手には杖が握りしめられていた。形状は小杖だが、普通の小杖と違う点は杖の先端部が「十字架」のような形をしており、それぞれの端に風属性の魔石が嵌め込まれていた。
極小の四つの魔石を取りつけられた杖を見てマオは嫌な予感を抱き、無詠唱で彼は魔法を発動させた。三又の杖から三つの氷塊を同時に誕生させると、氷塊同士を結合させて大きな氷の盾を作り出す。しかし、それを見てもフードの人物は躊躇なく魔法を繰り出す。
「スラッシュ」
「くっ……うわぁっ!?」
「マオ!?」
先端が十字架の形をした杖から風属性の中級魔法が発動し、この時に杖から「十字」の形をした風の斬撃が繰り出される。マオの先輩であるバルトも得意とするスラッシュは風の斬撃を敵に放つが、彼の放つスラッシュは「三日月」のような形をしている。しかし、フードの人物の場合はまるで二つの斬撃を組み合わせたかのように十字の形をした風の斬撃を打ち込む。
三つの氷塊を合体させる事で造り出した氷盾さえもフードの人物が繰り出した十字型の風の斬撃を受けた瞬間、氷塊の結合部分から崩壊して吹き飛ぶ。マオの氷塊は短発ならばバルトのスラッシュも防ぐ事ができるが、フードの人物はバルト以上の風の斬撃を放つ。
(何だ、この攻撃力……それにあの杖、見た事ないぞ!?)
これまでにマオは魔法学園の授業で他の魔術師が扱う杖を見てきたが、先端部分が十字架のような形をした杖など見た事がない。しかも杖には極小ではあるが4つの魔石が嵌め込まれ、それを利用して敵は上下左右の魔石から生成される魔力を利用して同時に2回分のスラッシュを繰り出していた。
敵はどうやら中級魔法を2回分も同時に放つ事ができるらしく、十字型の風の斬撃の正体はスラッシュ同士を組み合わせた攻撃魔法である。マオが前に所持していた二又の杖と同じく2回分の攻撃ができるが、今回の相手は極小の魔石を利用して威力も強化しており、バルトの魔法を越える威力を誇る。
(こいつ、まさか……冒険者狩り!?)
先ほど情報屋の男が殺された際、胸元に十字のような形をした傷跡を残して死んだ。その事から考えられるのは敵の正体が冒険者狩りの可能性が高い。
「……どうも」
「マオ、こいつの言う事を信じるの?」
ミイナはマオだけに聞こえるように小声で語り掛けると、正直に言えばマオとしても男の言葉を全て鵜呑みにするのはどうかと思う。冒険者狩りを操る組織がある事を教えてくれたが、冷静に考えれば目の前の男が真実を話しているのかは分からない。
彼によれば弟を逮捕した事を感謝しているそうだが、仮にも自分の弟を警備兵に突き出した相手に情報を提供するなどあまりにも怪しい。しかし、現状ではマオとミイナが情報を集めるのは難しく、情報屋の男の言葉が真実であれば冒険者狩りの足取りを掴める可能性もある。
(この男を信じるべきかどうか……)
マオは頭を悩ませ、一先ずの所はこの場を早々に立ち去る事にした。男がまだ信じられるかどうかは判断しかねるが、とりあえずは学園に戻る事にした。
「ミイナ、もう帰ろう。学園の方も気になるし……」
「分かった。なら……危ないっ!?」
「うわっ!?」
「なっ!?」
ミイナは唐突に大声を上げるとマオに抱きつき、彼を押し倒す形で地面に伏せる。ミイナの行動にマオも情報屋の男も呆気に取られるが、直後に倒れた二人の真上に強烈な突風が通り過ぎた。
「うわっ!?」
「にゃうっ!?」
突風が二人の真上を通り過ぎると、路地裏に大量の血が噴き出す。何事が起きたのかとマオは情報屋の男に視線を向けると、そこには胸元に「十字」のような傷跡を受けた男が立ち尽くし、傷口から血を噴き出しながら膝をつく。
「あっ……な、何だよ、これ……」
「なっ……!?」
「まさか……」
情報屋の男は呆然とした表情を浮かべながら自分の胸元から流れる血を抑えようとするが、傷口が深すぎて血は一向に止まらず、やがて致死量に達したのか膝をついた状態のまま動かなくなった。
マオとミイナは男が死んだ事を確信すると、すぐに起き上がって先ほどの突風が放たれた方角に視線を向けた。そこには何時の間にか全身をフードで覆い隠した人物が立っており、それを見た瞬間にマオは背筋が凍り付く。
(この感覚、殺気!?)
魔物と相対した時のようにマオは謎の人物から強烈な殺気を感じ取る。まるで赤毛熊と対峙した時と同じような威圧感を感じ取り、彼は反射的に杖を取り出す。
「ミイナ、下がって!!」
「マオ!?気をつけて!!」
「……標的」
フードの人物はマオ達に腕を伸ばすとその手には杖が握りしめられていた。形状は小杖だが、普通の小杖と違う点は杖の先端部が「十字架」のような形をしており、それぞれの端に風属性の魔石が嵌め込まれていた。
極小の四つの魔石を取りつけられた杖を見てマオは嫌な予感を抱き、無詠唱で彼は魔法を発動させた。三又の杖から三つの氷塊を同時に誕生させると、氷塊同士を結合させて大きな氷の盾を作り出す。しかし、それを見てもフードの人物は躊躇なく魔法を繰り出す。
「スラッシュ」
「くっ……うわぁっ!?」
「マオ!?」
先端が十字架の形をした杖から風属性の中級魔法が発動し、この時に杖から「十字」の形をした風の斬撃が繰り出される。マオの先輩であるバルトも得意とするスラッシュは風の斬撃を敵に放つが、彼の放つスラッシュは「三日月」のような形をしている。しかし、フードの人物の場合はまるで二つの斬撃を組み合わせたかのように十字の形をした風の斬撃を打ち込む。
三つの氷塊を合体させる事で造り出した氷盾さえもフードの人物が繰り出した十字型の風の斬撃を受けた瞬間、氷塊の結合部分から崩壊して吹き飛ぶ。マオの氷塊は短発ならばバルトのスラッシュも防ぐ事ができるが、フードの人物はバルト以上の風の斬撃を放つ。
(何だ、この攻撃力……それにあの杖、見た事ないぞ!?)
これまでにマオは魔法学園の授業で他の魔術師が扱う杖を見てきたが、先端部分が十字架のような形をした杖など見た事がない。しかも杖には極小ではあるが4つの魔石が嵌め込まれ、それを利用して敵は上下左右の魔石から生成される魔力を利用して同時に2回分のスラッシュを繰り出していた。
敵はどうやら中級魔法を2回分も同時に放つ事ができるらしく、十字型の風の斬撃の正体はスラッシュ同士を組み合わせた攻撃魔法である。マオが前に所持していた二又の杖と同じく2回分の攻撃ができるが、今回の相手は極小の魔石を利用して威力も強化しており、バルトの魔法を越える威力を誇る。
(こいつ、まさか……冒険者狩り!?)
先ほど情報屋の男が殺された際、胸元に十字のような形をした傷跡を残して死んだ。その事から考えられるのは敵の正体が冒険者狩りの可能性が高い。
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