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廃墟編

ロボ・ゴーレム

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「まさか生きている間に本物のロボットに触れられるなんて……よしよし」
『ゴロゴロッ……』
「おお、意外と可愛い声を出すんだな」
「女性や子供を怯えさせないように声だけでも女の子の声に近づけたそうです」
「もっと他にやる事があるだろ」


レアがロボ・ゴーレムの頭の部分を撫でてやると眼球部分のレンズを点滅させながら鳴き声のような駆動音を鳴らし、シルフィアが説明を行う。本来の目的は整備用のロボットなのらしいが、時には戦闘でも利用できるらしい。


「変わった生き物ですね……これがシルフィアさんの世界とやらの魔物なんですか?」
「いえ、生物という訳では……」
「ところでシルフィア、このロボ・ゴーレムはシルフィアが操作しているの?」
「現在は私の指揮下に入っていますが、高度なAIが搭載されているので自立しています」
『ゴロォッ』


シルフィアの言葉に相槌を打ちようにロボ・ゴーレムは頷き、人間らしい動作を行う事から確かにAIを所有している事が伺える。


「でも、この子がどうやって建物の修復とか行うの?こんな大きな手じゃトンカチもノコギリも握れないんじゃない?」
「大丈夫です。ロボ・ゴーレム、貴方の能力を見せなさい」
『ゴロッ!!』


4人の元から離れたロボ・ゴーレムは両手を広げる動作を行うと、身体の各所が分解し、別の形に変形を行う。部品が取り外され、最終的にはレア達とそれほど変わらない大きさにまで縮小化を果たし、分解された部品同士が集まって様々な形状の修理器具へと変化を果たした。


『ゴオオッ!!』
「うわ、変形した!?」
「ロボ・ゴーレムの人間形態です。元々ロボ・ゴーレムは神人が作り出される前の時代から設計された機械人形ですが、このように身体を分解させ、様々な形態へと変化します。身体の全ての部品が取り外しが可能であり、緊急時は身体を分解させて避難します」
「ちょ、何なんですかこれ!?いい加減に説明して欲しいんですけど!!」
「あ、有り得ん……こんな魔物が存在したとは」


ロボ・ゴーレムの変形を目撃した3人は驚愕し、特に事情を知らないイリスとマカセの動揺は激しい。その一方でロボ・ゴーレムは自分の部品から作り出した器具を手に取り、まずは近くに存在した建物に向かう。


『ゴロロロッ!!』
「あ、ちょっと!?」
「大丈夫です。見ていてください」


半壊した木造製の建物に到着したロボ・ゴーレムは鋸を握りしめた両手を振り翳し、その場で建物を切り刻む。その速度は尋常ではなく、次々と壊れた建物から木材を切り取り、建物の外へ放り投げる。


「……ねえ、あれ何してるの?どう見ても直しているようには見えないけど」
「確かに解体しているように見えますが、ロボ・ゴーレムは建物の修復は不可能だと判断し、一から作り直すために素材の回収を行っているのです」
「一から作り出す?」
『ゴオオッ!!』


今度は床の一部を切り裂いて持ち上げたロボ・ゴーレムは事前に切り取った木材に置き、そのまま建物を解体を行いながら必要性のある素材だけを回収する。その後、回収した大量の素材の前に移動すると、今度は切り取った木材同士をつなぎ合わせ、指先から接着剤のような物を取り付ける。


『ゴゴッ♪ゴゴッ♪ゴロロロッ♪』
「なんか鼻歌みたいな声を出してるんだけど」
「建物の建設作業に移りました」
「建設って……まさか一から作り直すの?」
「はい」


自分自身で解体して回収した素材を再利用し、ロボ・ゴーレムは凄まじい速度で建物の建設を行う。残像を生み出す程の速度でロボ・ゴーレムは木材同士を指先の接着剤で接合し、不要な部分を切り取り、見る見るうちに新しい建物を作り出す。


『ゴロロロッ!!』
「完成しました」
「これは……凄いな!!」
「ええっ……本当に家を作り出したんですか?」
「何という……!?」


ロボ・ゴーレムが動き出してから数分後、レア達の目の前には「ログハウス」を想像させる木造製の建物が完成していた。たった一人で建物を解体し、回収した素材だけで作り出したロボ・ゴーレムの性能に皆が驚きを隠せず、シルフィアは誇らしげに語る。


「これが私達の世界の誇る機械人形です。マスターの口からお褒め頂ければ喜びますよ」
『ゴロロッ……』
「おお、よしよし」


縮小化されたロボ・ゴーレムが子供のようにレアの前に近づき、頭を差し出す。高度なAIを持っているようだが子供のように頭を撫でられる事を求めるロボ・ゴーレムに愛着を抱き、レアは頭を撫でながらログハウスに視線を向ける。


「それにしても凄いな。よくこれだけの建物を一人で……そういえば木材を繋ぎ合わせるときに何か塗り込んでいたけど、あれは何?」
「特殊な樹木の樹脂で構成された接着剤です。最も粘着力は非常に強く、高温や低温の環境でも問題ありません。場合によっては戦闘の際にも利用できる優れものです」
「なるほどね。それを聞いて安心した」


ロボ・ゴーレムは木材を繋ぎ合わせるときに釘のような道具を使っていなかった事に不安を覚えたが、強力な瞬間接着剤のような物で素材を接合させているらしく、一先ずはレア達はログハウスの中に入ることにした。
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