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指定大都市アクア4
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次の地区ではゴンドラから降りて、三人とも水路沿いのカフェに行くようにと聖女様…基夜桐さんに指示された。
この場合明らかに彼女の指示に従った方が身の安全が保証されているのは見てあきらがだ。
目的地のカフェはこじんまりとしており、骨董品が沢山陳列してある良い意味で雰囲気のある店内だった。場所自体も奥まっており、知る人ぞ知る隠れ家的な感じだ。
四人テーブルに俺と夜桐さん。
その真横のテーブルにヨハンとアルフレッドとダニエル王子。
「その、強引にここまで連れてきてしまってすみません...。あれ以上表で騒ぐ訳にはいかないので。」
「いや、賢明な判断だ。それで...何か話したいこととかあるのかな?」
「...そりゃもう。話したいというか。」
「というか?」
「出来れば一緒にいて欲しいなって思ってるんです。」
「...スズ?!」
「えっと、え?」
「モテるなぁ奏多。」
「まぁ、イキり王子よりかはマシですよね。」
「おい!!そこ!!!!」
真隣に座っていた夜桐さんは折角止められていた涙を、再び流し始めていた。これはもう、相当きているのではないだろうか。俺たちのいた世界での診療所に連れていけば、それなりの診断名が付いていたのではないかと思ってしまう程に。きっと参っている、と思わざるおえない。
「落ち着いて、夜桐さん。同郷同士だから一緒に居て欲しいってことなのかな?一緒にいるのならダニエル様でも問題無いと思うんだけど...。」
「ひ、一目見て、分かりました。私とは真逆の時を過ごしていたのだと。」
「わかった?」
「はい。朝桐さんの纏う空気と、そんな朝桐さんを見る二人の空気が...とてもほわほわしてて。朝桐さんが朝桐さんとして大切にされてるんだなって、そう分かったんです。私と真逆。」
「夜桐さん...。」
「きっと、朝桐さんはとても良い人なんだなって、私は思ったんです。だから貴方の周りの人達もほわほわしてて。私もその中に入りたいなって。そうすればきっと...きっと...私の魔法も...ちゃんと発動できるって!!」
「.........ん?」
魔法、発動?
なんの事だ...。
「ヨハン、アルフレッド...、何の話だ?」
「あー...なんつーか。その、な。」
「簡単な話だよ。魔法の発動には精神面も関わっているってこと。発動者のメンタルが不安定だと、発動できた魔法も発動できないし、効果も発揮しない。」
「そ、そうなのか。」
「つまりは、その聖女様は精神的に不安定だから、奏多と一緒にいて安心してぇって事なんじゃねぇの?このダニエル様じゃなくて。」
「んぐっぅ!!!」
精神的に不安定って。
俺が魔法を普通に発動できたというのは、俺自身が安定していたということ、らしい。確かに、元の世界は恋しいがそこまで寂しいというのは無かった。それもこれも一重にグリーンヴァルトのみんなのおかげだ。それは納得出来る。
だが、彼女は違ったらしい。
「俺は、その。構わないが...。王宮預かりなのだろう?」
「そう、です。でも...でも...私は朝桐さんと一緒がいい...。」
俺の胸元に大きなシミを作る。
前髪がぐちゃぐちゃになるほどに胸元に額を擦り付けていて。号泣しているからか、身体全体の体温が上昇しているのがわかった。背に回る細い腕が制服を力強く握り締める。決して離すことはしないと、そう言っている気がした。
「だってさ、どうしますー?ダニエル様。」
「......私の元では駄目なのか。」
「ごめん、なさい。」
「...いや、スズは何も悪くない。」
長い睫毛を下げた。
微かにそれが震えているように見えたのは、俺だけだろうか。
この場合明らかに彼女の指示に従った方が身の安全が保証されているのは見てあきらがだ。
目的地のカフェはこじんまりとしており、骨董品が沢山陳列してある良い意味で雰囲気のある店内だった。場所自体も奥まっており、知る人ぞ知る隠れ家的な感じだ。
四人テーブルに俺と夜桐さん。
その真横のテーブルにヨハンとアルフレッドとダニエル王子。
「その、強引にここまで連れてきてしまってすみません...。あれ以上表で騒ぐ訳にはいかないので。」
「いや、賢明な判断だ。それで...何か話したいこととかあるのかな?」
「...そりゃもう。話したいというか。」
「というか?」
「出来れば一緒にいて欲しいなって思ってるんです。」
「...スズ?!」
「えっと、え?」
「モテるなぁ奏多。」
「まぁ、イキり王子よりかはマシですよね。」
「おい!!そこ!!!!」
真隣に座っていた夜桐さんは折角止められていた涙を、再び流し始めていた。これはもう、相当きているのではないだろうか。俺たちのいた世界での診療所に連れていけば、それなりの診断名が付いていたのではないかと思ってしまう程に。きっと参っている、と思わざるおえない。
「落ち着いて、夜桐さん。同郷同士だから一緒に居て欲しいってことなのかな?一緒にいるのならダニエル様でも問題無いと思うんだけど...。」
「ひ、一目見て、分かりました。私とは真逆の時を過ごしていたのだと。」
「わかった?」
「はい。朝桐さんの纏う空気と、そんな朝桐さんを見る二人の空気が...とてもほわほわしてて。朝桐さんが朝桐さんとして大切にされてるんだなって、そう分かったんです。私と真逆。」
「夜桐さん...。」
「きっと、朝桐さんはとても良い人なんだなって、私は思ったんです。だから貴方の周りの人達もほわほわしてて。私もその中に入りたいなって。そうすればきっと...きっと...私の魔法も...ちゃんと発動できるって!!」
「.........ん?」
魔法、発動?
なんの事だ...。
「ヨハン、アルフレッド...、何の話だ?」
「あー...なんつーか。その、な。」
「簡単な話だよ。魔法の発動には精神面も関わっているってこと。発動者のメンタルが不安定だと、発動できた魔法も発動できないし、効果も発揮しない。」
「そ、そうなのか。」
「つまりは、その聖女様は精神的に不安定だから、奏多と一緒にいて安心してぇって事なんじゃねぇの?このダニエル様じゃなくて。」
「んぐっぅ!!!」
精神的に不安定って。
俺が魔法を普通に発動できたというのは、俺自身が安定していたということ、らしい。確かに、元の世界は恋しいがそこまで寂しいというのは無かった。それもこれも一重にグリーンヴァルトのみんなのおかげだ。それは納得出来る。
だが、彼女は違ったらしい。
「俺は、その。構わないが...。王宮預かりなのだろう?」
「そう、です。でも...でも...私は朝桐さんと一緒がいい...。」
俺の胸元に大きなシミを作る。
前髪がぐちゃぐちゃになるほどに胸元に額を擦り付けていて。号泣しているからか、身体全体の体温が上昇しているのがわかった。背に回る細い腕が制服を力強く握り締める。決して離すことはしないと、そう言っている気がした。
「だってさ、どうしますー?ダニエル様。」
「......私の元では駄目なのか。」
「ごめん、なさい。」
「...いや、スズは何も悪くない。」
長い睫毛を下げた。
微かにそれが震えているように見えたのは、俺だけだろうか。
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