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前線基地1
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全員で前線基地の出入口である場所に降り立った。念の為、アトラには大き目のストールを頭から被ってもらい、俺の後ろに常に居てもらうようにした。
門番の騎士は数刻前と変わらず不審がっている眼差しを俺達に向けてきているが、彼等はそれがお仕事なのだ。少し怖いけれども文句は言えない。それにきっと彼等は長い期間ここに滞在している者達なのだろう。涼を見ても警戒を解くことをしないからだ。彼女が言うには少し前に、王子殿下主催の聖女のお披露目会を王宮にて行ったことがあるらしく、そこに参加出来る騎士団の皆さんも参加しされたらしい。参加していない方々は恐らくここの人達くらいだろう、との事だった。顔を見ていないのだ、知る由もない。
「許可証を。」
「はいよ。あと、これも。」
「……お、王宮指令書、だと?!」
【王宮指令書】
これもダニエル様から預かってきた書類の一つである。【冒険者の証】が世界を飛び回るな必要不可欠な書類であるが、これに至っては聖女業を行うに当たって必要不可欠な書類の部類となる。
聖女は基本的に王宮預りの人物である。国王陛下の指示の元各地へと派遣される形を取っているのだ。そしてその国王陛下は当然ながら誰にも逆らわれる事は無い、絶対的存在。それはこの様な局地にも通じる。
「早馬で伝えられていたが……お前達がそうなのか。」
「どの様に、伝えられていたのかお聞かせ願いたい。」
「せ、聖女様が再度ここに来られると。前回もいらっしゃったが、お顔を見せられる事が無かったので。誰も分からなかったのです。」
「……何でだ?」
ヨハンの隣にいた涼が気まずそうに答えた。ちょっと照れている。
「あー……。大業を成すまで顔を晒さないように、ってダニエル様が。」
「皆に見せたくない、みたいな?」
「結局お披露目会で見せたのにか?」
『人間はむずかしいんだな。』
「「だなぁ。」」
ダニエル様の頭の中ではきっと、君の笑顔は私だけのもの。独り占め☆ぐらいに思っているのだろうが、政情的にはそうもいかない。出さなければ進まない事もあったという訳だ。こうしたちょっとした壁も出てくる。
「ゴホンッ、書状の確認も取れた。これを正式なる指令書であると我等は判断する。グリーンヴァルド郵便局御一行、及び聖女様御一行さまどうぞお入りくださいませ。」
二人いた門番の騎士の片割れが、何やら装置を使い書類を調べていたがそれが終わったらしい。ヨハンに書状一式を返却して、もう片方の騎士が先ほどの事を述べ伝えてきた。
態度もガラッと変わり、随分と礼儀正しくなっている。これが所謂手のひら返し、頭の中にそう思い浮かんだ。
「……これが、前線基地。」
「随分と、中央街とは違うんだね。」
「俺も初めてだ。言葉を失うとはこのことだ。」
『いろんな血のにおいがする。』
「……私が。」
「…………涼。」
ゲートを潜り、そこからグッと彼女の口数画減っていたのは知っていた。大体の頭の中の思考も予想はつく。
「わ、私が前回配属された時にもう少しだけでも魔獣達を追い払っていたらこんな事にはならなかったのに……。」
俺達はの目の前に広がるは、悲惨な現場とは一言では言えない状況であった。多くの白いテントが立っており、そこへ騎士団員や看護する者が絶えず出入りをしている。傷を負ったものが多いのだろう、噎せ返るような血の香りが俺達を襲う。フェリシアさんとの戦闘でもここまでの香りを嗅ぐことは無かった。
きっとまだここが後方支援区域だから、フラフラとした負傷した騎士団兵達が歩いている程度で、済んでいるのだろう。
最前線ではどうなっているかだなんて、想像もしたくなかった。
「と、取りあえず俺達の一番の用事を済ますぞ。」
「……そうですね。アレンくんのお父さんに会わなきゃ。」
アルフレッドが近くの兵士さんに声をかけた。怪しんではいたが情報を聞き出すことが出来たようである。
「こっちみたい。行くだけ行ってみよう。」
後方支援の基地内の外れにポツンと一つ、テントが立っていた。
本来であればまっしろなテントなはずなのだが、内側から滲む何かが表に表出しているらしい。黒っぽいシミが幾つか見受けられた。
その様に全員が二の足を踏んでいたのだが、涼が先頭に立っていた。
「こんにちは、アレンくんのお父さんはいらっしゃいますか?」
「……………………だれ……ですか?」
か細い声が、テントの中から聞こえた。荒っぽい息遣いが複数聴こえる。数人がここの中に収容されて居るらしい。テント自体大きめであるとは言え、成人男性が数人横たわるには手狭では無かろうか。嫌な予感がするが、涼自身が対面で渡したいと願っていたのだ。願いを叶えてやるのが兄魂である。
隣にたち、テントの出入口であるファスナーを開けていったのだった。
門番の騎士は数刻前と変わらず不審がっている眼差しを俺達に向けてきているが、彼等はそれがお仕事なのだ。少し怖いけれども文句は言えない。それにきっと彼等は長い期間ここに滞在している者達なのだろう。涼を見ても警戒を解くことをしないからだ。彼女が言うには少し前に、王子殿下主催の聖女のお披露目会を王宮にて行ったことがあるらしく、そこに参加出来る騎士団の皆さんも参加しされたらしい。参加していない方々は恐らくここの人達くらいだろう、との事だった。顔を見ていないのだ、知る由もない。
「許可証を。」
「はいよ。あと、これも。」
「……お、王宮指令書、だと?!」
【王宮指令書】
これもダニエル様から預かってきた書類の一つである。【冒険者の証】が世界を飛び回るな必要不可欠な書類であるが、これに至っては聖女業を行うに当たって必要不可欠な書類の部類となる。
聖女は基本的に王宮預りの人物である。国王陛下の指示の元各地へと派遣される形を取っているのだ。そしてその国王陛下は当然ながら誰にも逆らわれる事は無い、絶対的存在。それはこの様な局地にも通じる。
「早馬で伝えられていたが……お前達がそうなのか。」
「どの様に、伝えられていたのかお聞かせ願いたい。」
「せ、聖女様が再度ここに来られると。前回もいらっしゃったが、お顔を見せられる事が無かったので。誰も分からなかったのです。」
「……何でだ?」
ヨハンの隣にいた涼が気まずそうに答えた。ちょっと照れている。
「あー……。大業を成すまで顔を晒さないように、ってダニエル様が。」
「皆に見せたくない、みたいな?」
「結局お披露目会で見せたのにか?」
『人間はむずかしいんだな。』
「「だなぁ。」」
ダニエル様の頭の中ではきっと、君の笑顔は私だけのもの。独り占め☆ぐらいに思っているのだろうが、政情的にはそうもいかない。出さなければ進まない事もあったという訳だ。こうしたちょっとした壁も出てくる。
「ゴホンッ、書状の確認も取れた。これを正式なる指令書であると我等は判断する。グリーンヴァルド郵便局御一行、及び聖女様御一行さまどうぞお入りくださいませ。」
二人いた門番の騎士の片割れが、何やら装置を使い書類を調べていたがそれが終わったらしい。ヨハンに書状一式を返却して、もう片方の騎士が先ほどの事を述べ伝えてきた。
態度もガラッと変わり、随分と礼儀正しくなっている。これが所謂手のひら返し、頭の中にそう思い浮かんだ。
「……これが、前線基地。」
「随分と、中央街とは違うんだね。」
「俺も初めてだ。言葉を失うとはこのことだ。」
『いろんな血のにおいがする。』
「……私が。」
「…………涼。」
ゲートを潜り、そこからグッと彼女の口数画減っていたのは知っていた。大体の頭の中の思考も予想はつく。
「わ、私が前回配属された時にもう少しだけでも魔獣達を追い払っていたらこんな事にはならなかったのに……。」
俺達はの目の前に広がるは、悲惨な現場とは一言では言えない状況であった。多くの白いテントが立っており、そこへ騎士団員や看護する者が絶えず出入りをしている。傷を負ったものが多いのだろう、噎せ返るような血の香りが俺達を襲う。フェリシアさんとの戦闘でもここまでの香りを嗅ぐことは無かった。
きっとまだここが後方支援区域だから、フラフラとした負傷した騎士団兵達が歩いている程度で、済んでいるのだろう。
最前線ではどうなっているかだなんて、想像もしたくなかった。
「と、取りあえず俺達の一番の用事を済ますぞ。」
「……そうですね。アレンくんのお父さんに会わなきゃ。」
アルフレッドが近くの兵士さんに声をかけた。怪しんではいたが情報を聞き出すことが出来たようである。
「こっちみたい。行くだけ行ってみよう。」
後方支援の基地内の外れにポツンと一つ、テントが立っていた。
本来であればまっしろなテントなはずなのだが、内側から滲む何かが表に表出しているらしい。黒っぽいシミが幾つか見受けられた。
その様に全員が二の足を踏んでいたのだが、涼が先頭に立っていた。
「こんにちは、アレンくんのお父さんはいらっしゃいますか?」
「……………………だれ……ですか?」
か細い声が、テントの中から聞こえた。荒っぽい息遣いが複数聴こえる。数人がここの中に収容されて居るらしい。テント自体大きめであるとは言え、成人男性が数人横たわるには手狭では無かろうか。嫌な予感がするが、涼自身が対面で渡したいと願っていたのだ。願いを叶えてやるのが兄魂である。
隣にたち、テントの出入口であるファスナーを開けていったのだった。
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