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二章

底なしの執着心※

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 3日ぶりの奥野のマンションに着いた頃には、花耶はすっかり疲労困憊だった。この部屋を出たのはほんの二日前だというのに、酷く長い期間離れていたような気がした。それだけ怒涛の二日間だったと言えるのだが…すっかりこの部屋に馴染んでしまった花耶は、奥野の部屋の匂いにすらも懐かしさを感じた。

「え…な…っん…」

 ドアが閉まって視界が暗くなったと思った途端、花耶は奥野に壁へと押し付けられて唇を奪われていた。抵抗らしい抵抗も出来ずにされるがまま、執拗なほどに口内を貪られた。急にどうしたのかと戸惑う花耶は何とか奥野を押し止めようとしたかったが、両手に持った荷物がそれを邪魔した。下手に手放すと奥野の足の上に落としてしまいそうだったからだ。

「…っ…」

 そうしている間にも、奥野の手は花耶の服の中に入り込んで無駄に存在感を主張する花耶の胸へとたどり着くと、口づけはそのままに胸の尖端をゆっくりと刺激し始めた。既にどうすれば花耶が反応するかを花耶よりも知り尽くしている奥野は、遠慮のない動きで花耶の熱を高めていった。花耶はさすがに玄関で事に及ぶのは…と戸惑いを露にして抵抗を示したが、奥野は急性に花耶の身体の奥にある官能の火を煽っていった。

「…ん…っ…はぁ…っ…」

 両手の荷物に気を取られていた花耶だったが、それも奥野の指がスカートを捲り上げてその蜜口に達するまでだった。骨ばった長くて太い指が花耶の足の間の茂みをゆるゆると撫で始めると、そこは早くも潤い始めていた。こんな場所では…と思うのに、口は奥野に塞がれ、手も荷物で封じられた花耶は、身体の奥から言い表しようのない疼きが湧き上がるのを止める術を持たなかった。奥野の指が暫く蜜口の入り口をやわやわと撫でていたが、その内その上にある花芽を、蜜を絡ませた指で刺激し始めると、花耶の熱は一層高まった。

「んっ」

 奥野の指が無遠慮に花耶の蜜壺に侵入して、花耶は背に甘い痺れが駆け上がるのを感じた。侵入した指は遠慮なく花耶が弱いところを的確に刺激したため、花耶は否応なしに追い詰められていく。ただ、指は花耶が達しそうになるとすっと動きを弱めるという暴挙に出ていた。口と胸、蜜口の三カ所を同時に責められながらも決定的なものを与えられない花耶のお腹の奥は、キュウキュウと切なく疼き、立っているのがやっとだった。

「…ん…ッあ…」

 ようやく唇が解放されると、互いの間に生まれた銀の糸が花耶の頬を濡らした。花耶が空気を求めて荒い息を繰り返す間も、奥野の指は花耶の胸と蜜壺を尚も責め、じっくりと花耶を追い詰めていた。

「ん…な…んで…」

 あまりにも急性な奥野の態度に花耶は戸惑いを感じたが、奥野に何かのスイッチが入ったのは感じた。奥野は息を整えながら放たれた花耶の問いには答えず、花耶のショーツを器用にも下ろしてしまうと、自身のズボンを緩め、花耶の片方の足をぐっと持ち上げた。

「え…待っ、んんっ…!」

 さすがの花耶も、奥野が何をしようとしているのかを察して抗議の声を上げようとしたが、その途端に奥野のモノが花耶の蜜壺に侵入してきた。一気に最奥まで侵された花耶は、その刺激に耐え切れず達してしまった。足がガクガクと震え、片足では立っているのもやっとだったが、奥野がしっかりと花耶を支えているせいで、崩れ落ちる事はなかった。
 未だに荷物を手にして片足を上げられた不自然な体勢で、しかも玄関という声が漏れてしまいそうな状況なのに、花耶は妙な昂りを感じた。自分にそんな嗜好があったとは思いたくないが、奥野に余裕なく激しく求められるのは女の性を酷く満たしていた。

「はぁ…花耶…やっと俺のものだ…」
「え?あ…っん…」

 感情を押し殺したような声でそう告げた奥野は、戸惑う花耶の片足を抱えながら背に手をまわして自身に引き寄せると、そのまま律動を開始した。余裕のない激しい動きに花耶は驚きながらも、否応なく与えられる刺激に成す術もなかった。体勢のせいか、激しさの割に最奥への痛みはなく、だがそれは花耶を追い詰めるには十分だった。両手を封じられた花耶は口を押える事も出来ず、必死に声が漏れ出ないようにするのに精いっぱいでだったが、逆にその不自由さが熱を一層昂らせていた。

「…やっ…こ、こえっ…」

 こんな場所であられもない声を上げる事に必死に抵抗すると、それを察した奥野はそのまま花耶を壁に押しつけて唇を自身のそれで塞いだ。奥野の舌が彼の動きそのままに花耶の口内を濃密に侵したが、それは彼の熱の昂りと激しい劣情を現していた。あげる嬌声すらも自分のものにしようとする様は、深く昏い奥野の独占欲と執着心を現していた。最近はすっかり鳴りを潜めていたその激しさに花耶は驚いたが、その理由を考える余裕は与えられなかった。

「ん、んんーっ!」

 その時は突然来た。奥野が花耶の弱いところを一層強く突くと、花耶は突然目の前に星が散るのを見た。短いながらも濃密で執拗な交わりに、花耶は果てのない水底に飲み込まれるような感覚を一瞬だけ感じた。奥野も達したのか、低く呻くと花耶の腰を一層強く引き寄せて自身の雄をぐりぐりと押し付けるように動き、花耶はその刺激にもビクビクと身体を震わせた。
 急に押し上げられた絶頂に呼吸が整わない上、足に力が入らず、気が付けば手にしていた荷物を手放して奥野に縋りついていた。急性な交わりにようやく息が整いかかったところで、奥野は花耶のもう片方の足に手をかけ、そのまま持ち上げたため、花耶は急な体勢の変化に驚いてしがみ付いた。未だに奥野のものは花耶の中にある事に、花耶は羞恥と焦りを感じたが、奥野は満足そうな笑みを浮かべたままだった。

「…な…ちょ…」
「ああ、花耶、じっとしてて。ほら、しっかり掴まって」
「え?あ、え…?」

 驚き慌てる花耶に構わず、奥野は花耶を抱えたまま器用にリビングに続くドアを開けると、そのまま花耶をソファまで運んでから覆いかぶさってきた。互いに服を着たままで、しかも自分の中に奥野のモノが入ったままだという状況に花耶が目を白黒させている間に、またしても奥野が動き出した。

「え?あ、ま…ぁあっ」

 一度は萎えたと思われた奥野の雄は、いつの間にか固さを取り戻して花耶の中を擦り上げた。休む間もなく再び与えられた甘い刺激に、花耶の中はまたしてもキュウキュウと締め付けながら奥野を受け入れていた。そんな自分の反応に戸惑いながらも、既に達した身体は容易に官能の海に沈められた。花耶は先ほどよりも体勢も場所も改善された事にホッとしているのを感じたが、別の事に思い至って焦りを見せた。

「ま、まっ…て…ま…」

 花耶が焦りを感じて奥野を押しとどめようと手を突っぱねて奥野の身体を押し返そうとしたが、奥野はそんな花耶を見下ろして軽く口の端を上げると、両手首を掴んでそのまま頭上へとやり、片方の手で花耶の両手を戒めてしまった。空いた片方の手で、よがりながらも抗議の視線を向ける花耶の唇に指を添えると、うっとりとした笑顔を浮かべた。その様に花耶は、奥野が確実に花耶の懸念を知りながらあえてそうしているのだと察した。

「花耶…早く…花耶との子が欲しい…」
「え…?あ、ひゃああっ…」

 花耶の懸念とは、避妊の事だった。うっとりと夢見るような表情と掠れた声で自分の目的を露にした奥野は、驚きの表情を浮かべた花耶の唇に軽くキスを落とすと、再び花耶を追い上げるための動きを早めた。その表情はこれまでにない程の欲情と色気を帯び、そんな表情に慣れつつあった花耶ですらも子宮が疼くのを感じて、より一層奥野の雄に吸い付くように絡みついた。

「ああ、花耶…こんなに締め付けて…花耶も…俺との子を求めてくれるんだな」
「え?あ、やぁ、ま…って…」
「ああ、益々絡みついて…嬉しいよ、花耶」
「あ、やぁ…違っ…んんっ」

 花耶の変化を感じた奥野は、花耶の抗議を確実に黙殺し、益々笑みを深めると花耶の弱いところを的確に攻めだした。花耶が流されやすく、また何だかんだ言って奥野に弱いのを知った上での所業だと花耶は気が付いていたが、身体を苛む蕩けそうな痺れを前に抵抗は無意味だった。両手を拘束され、がっしりした身体に抑え込まれては、花耶に逃げようはなかった。

「え?あっ…や、まっ…ぁあああっ」
「さぁ、花耶。もう一度受け止めてくれ…」

 二度目の絶頂を感じて抵抗を示した花耶だったが、それは無駄な努力に終わった。奥野に拓かれ、既に知り尽くされた身体は、本人の意思に関係なく奥野の与える甘く狂おしい劣情を欲していて、強請るように奥野の雄を締め付けた。入籍ですらまだ受け止め切れていない上、妊娠の可能性まで加わったせいで益々混乱している花耶に、奥野は躊躇する事なく再び自身の精を吐き出した。奥野が達するのを感じた花耶の子宮がキュッと疼き、それがまた新たな官能を呼び冷まして花耶の身を震わせた。
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