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襲撃
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「ぐわぁああ!」
「襲撃だ!」
「辺境伯様とルイ様をお守りしろ!」
「死ねぇ…!」
突然響いた怒鳴り声と、馬の嘶く声と複数の蹄の音に、理緒は咄嗟に身を竦めた。ちょうど森に入って五分ほど進んだ頃、理緒たちの一行は何者かに襲われたのだ。
最初に理緒の頭に浮かんだのはルイ達の事だった。あちらの馬車にはルイとエルシー一家しか乗っていないのだ。もちろん護衛も側には付いているが、女子供だけでは心許なさ過ぎた。やはりルイの我儘を止めてエルシー一家は同行させなかった方がよかったかと思ったが、後の祭りだ。
「馬車から出るな!」
理緒がルイ達の馬車に駆けつけようと腰を浮かしたが、辺境伯はそう言い残すと飛ぶように馬車から降り、外から鍵をかけてルイの馬車の元に行ってしまった。あまりの早業に理緒は動けずにいたが、窓からは辺境伯がルイ達の乗る馬車に駆けつける様子が見えた。襲撃犯らしい破落戸と思われる男達と護衛の騎士が戦っているが、破落戸と思われる男たちは中々に強く、ただの破落戸には思えなかった。
ルイ達の乗った馬車に破落戸が群がっていたが、それを護衛が必死で退けていた。一度だけエルシーの悲鳴が聞こえたが、子供達の声は聞こえてこなかった。もしかしたら恐怖で声も出せないのかもしれない。
「おい、こっちにガキが残ってるぞ!」
窓から外の様子を伺っていた理緒に気付いたのか、男たちの声がした。咄嗟に内側から鍵をかけて侵入を拒んだが、男たちは力任せに鍵を開けようとしてきた。騎士たちはルイ達の馬車を守って戦っていて、気配からも理緒の乗る馬車の近くには誰もいないように感じられた。こっちにも人が乗っていると知って、ルイ達の乗る馬車の男たちの視線がこちらを向いた。それに気付いた理緒は、彼らの目的がルイなのだろうと判断した。そういう事であれば…
「ルイ様、僕の後ろに隠れて!必ずお守りします!」
「な…!おい、あっちだ!」
「くそっ!」
男たちが鍵を壊そうとしている中、理緒が大声で叫ぶと、ルイの乗る馬車の周りの男たちの意識が一斉にこちらに向いたのを感じた。
「逃げろ!街まで走り抜け!」
作った隙はたった一瞬だったが、有難い事に辺境伯は理緒の意図を汲み取ってくれたらしい。護衛と馬車は一気に来た道を戻って疾走を始めた。ここからなら辺境伯の屋敷よりも理緒が住んでいたオークスの街が近い。そこまで行けば自警団もいるから何とかなるだろう。
「な…!」
「に、逃がすな!」
「行かせるか!」
走り出した馬車に破落戸たちが追いすがろうとしたが、それを辺境伯は許さず、数人が切りつけられて馬から落ちるのが見えた。幸いにもルイの乗った馬車は護衛と共に遠ざかっていく。破落戸が五、六人ほど地面に転がっているのが見えたが、既に傷を負っているのか馬車を追おうとする者はいなかった。何とかルイとエルシー一家を逃がす事が出来て、理緒の目的は達した。後は残っている破落戸がルイ達の乗った馬車を追わないようにするだけだった。
「ルイ様、ここに入ってください!」
男たちが鍵を壊そうとしている側の窓のカーテンを閉めると、そう言って理緒は馬車のシートの下の物入れをわざと開閉させた。破落戸が開けようとしているドアの反対側の窓に寄り周囲を見ると幸いにもこちら側には誰もいなかった。理緒はルイのために持ってきた着替えなどが入った大きめの袋を持って馬車とは反対の方に走り出すと、破落戸たちは数秒遅れて理緒に気がつき、案の定追いかけてきた。どうやら抱きしめるように持った荷物をルイだと勘違いしたのだろう。だが、それは理緒の狙い通りだった。今はルイ達を追わせない方が大事だと思ったからだ。
追ってくる男は二人だったが、手にはナイフや弓矢を持っているのがみえて、理緒は舌打ちをしながら逃げた。どうやら辺境伯側の者は誰もいないらしい。自分一人が残されたのかと思ったが、相手が二人なら何とでも逃げようもあった。今までだって小型の魔獣や魔蟲から逃げ回った事は何度もあるし、小柄ですばしっこい理緒は逃げるのだけは得意だった。。
「…っぐ!」
ヒュン!と風を切る音を耳にした理緒は、次の瞬間、左肩に強烈な熱を感じた。視線を向けると、そこには見慣れない細い物があって、それが自身に刺さった矢だと気付くのに数歩を有した。しくじったと思ったが、今更止まる事も出来ない。走る度に刺さった矢が揺れて肩の熱がジクジクと伝わってきたが、夢中なせいか不思議と痛みは感じなかった。
ただ、このままでは追い付かれるのは時間の問題だし、次の矢を避ける自信もない。今日はルイの母親との面会だったため、武器になるような物は小型のナイフであれ持ってくる事が出来なかったのだ。
「捕まえた!」
「っ!」
「このクソが!手間かけさせやがって!」
森の木々をかき分けながら破落戸たちを巻くように走っていた理緒だったが、体力差はどうしようもなかった。相手の動きを確認している余裕がなかったせいで、いつの間にか挟み撃ちにされていたのだ。これはもしかすると、地形を知っていた相手に利があったのかもしれない。
「ほら、辺境伯んとこのガキを寄こせ!」
そういうと男は理緒の手から大きな袋を奪おうとしたため、理緒はその袋を逆に押し付けるようにすると、男がバランスを崩した。
「な…!ガキじゃねぇ!」
「何だとっ?」
「このガキ、騙したな!」
袋を押し付けたその隙に逃げようとした理緒だったが、しまったと思った時には遅かった。もう一人の男に腕を取られて、理緒は逃げるタイミングを失っていた。
「襲撃だ!」
「辺境伯様とルイ様をお守りしろ!」
「死ねぇ…!」
突然響いた怒鳴り声と、馬の嘶く声と複数の蹄の音に、理緒は咄嗟に身を竦めた。ちょうど森に入って五分ほど進んだ頃、理緒たちの一行は何者かに襲われたのだ。
最初に理緒の頭に浮かんだのはルイ達の事だった。あちらの馬車にはルイとエルシー一家しか乗っていないのだ。もちろん護衛も側には付いているが、女子供だけでは心許なさ過ぎた。やはりルイの我儘を止めてエルシー一家は同行させなかった方がよかったかと思ったが、後の祭りだ。
「馬車から出るな!」
理緒がルイ達の馬車に駆けつけようと腰を浮かしたが、辺境伯はそう言い残すと飛ぶように馬車から降り、外から鍵をかけてルイの馬車の元に行ってしまった。あまりの早業に理緒は動けずにいたが、窓からは辺境伯がルイ達の乗る馬車に駆けつける様子が見えた。襲撃犯らしい破落戸と思われる男達と護衛の騎士が戦っているが、破落戸と思われる男たちは中々に強く、ただの破落戸には思えなかった。
ルイ達の乗った馬車に破落戸が群がっていたが、それを護衛が必死で退けていた。一度だけエルシーの悲鳴が聞こえたが、子供達の声は聞こえてこなかった。もしかしたら恐怖で声も出せないのかもしれない。
「おい、こっちにガキが残ってるぞ!」
窓から外の様子を伺っていた理緒に気付いたのか、男たちの声がした。咄嗟に内側から鍵をかけて侵入を拒んだが、男たちは力任せに鍵を開けようとしてきた。騎士たちはルイ達の馬車を守って戦っていて、気配からも理緒の乗る馬車の近くには誰もいないように感じられた。こっちにも人が乗っていると知って、ルイ達の乗る馬車の男たちの視線がこちらを向いた。それに気付いた理緒は、彼らの目的がルイなのだろうと判断した。そういう事であれば…
「ルイ様、僕の後ろに隠れて!必ずお守りします!」
「な…!おい、あっちだ!」
「くそっ!」
男たちが鍵を壊そうとしている中、理緒が大声で叫ぶと、ルイの乗る馬車の周りの男たちの意識が一斉にこちらに向いたのを感じた。
「逃げろ!街まで走り抜け!」
作った隙はたった一瞬だったが、有難い事に辺境伯は理緒の意図を汲み取ってくれたらしい。護衛と馬車は一気に来た道を戻って疾走を始めた。ここからなら辺境伯の屋敷よりも理緒が住んでいたオークスの街が近い。そこまで行けば自警団もいるから何とかなるだろう。
「な…!」
「に、逃がすな!」
「行かせるか!」
走り出した馬車に破落戸たちが追いすがろうとしたが、それを辺境伯は許さず、数人が切りつけられて馬から落ちるのが見えた。幸いにもルイの乗った馬車は護衛と共に遠ざかっていく。破落戸が五、六人ほど地面に転がっているのが見えたが、既に傷を負っているのか馬車を追おうとする者はいなかった。何とかルイとエルシー一家を逃がす事が出来て、理緒の目的は達した。後は残っている破落戸がルイ達の乗った馬車を追わないようにするだけだった。
「ルイ様、ここに入ってください!」
男たちが鍵を壊そうとしている側の窓のカーテンを閉めると、そう言って理緒は馬車のシートの下の物入れをわざと開閉させた。破落戸が開けようとしているドアの反対側の窓に寄り周囲を見ると幸いにもこちら側には誰もいなかった。理緒はルイのために持ってきた着替えなどが入った大きめの袋を持って馬車とは反対の方に走り出すと、破落戸たちは数秒遅れて理緒に気がつき、案の定追いかけてきた。どうやら抱きしめるように持った荷物をルイだと勘違いしたのだろう。だが、それは理緒の狙い通りだった。今はルイ達を追わせない方が大事だと思ったからだ。
追ってくる男は二人だったが、手にはナイフや弓矢を持っているのがみえて、理緒は舌打ちをしながら逃げた。どうやら辺境伯側の者は誰もいないらしい。自分一人が残されたのかと思ったが、相手が二人なら何とでも逃げようもあった。今までだって小型の魔獣や魔蟲から逃げ回った事は何度もあるし、小柄ですばしっこい理緒は逃げるのだけは得意だった。。
「…っぐ!」
ヒュン!と風を切る音を耳にした理緒は、次の瞬間、左肩に強烈な熱を感じた。視線を向けると、そこには見慣れない細い物があって、それが自身に刺さった矢だと気付くのに数歩を有した。しくじったと思ったが、今更止まる事も出来ない。走る度に刺さった矢が揺れて肩の熱がジクジクと伝わってきたが、夢中なせいか不思議と痛みは感じなかった。
ただ、このままでは追い付かれるのは時間の問題だし、次の矢を避ける自信もない。今日はルイの母親との面会だったため、武器になるような物は小型のナイフであれ持ってくる事が出来なかったのだ。
「捕まえた!」
「っ!」
「このクソが!手間かけさせやがって!」
森の木々をかき分けながら破落戸たちを巻くように走っていた理緒だったが、体力差はどうしようもなかった。相手の動きを確認している余裕がなかったせいで、いつの間にか挟み撃ちにされていたのだ。これはもしかすると、地形を知っていた相手に利があったのかもしれない。
「ほら、辺境伯んとこのガキを寄こせ!」
そういうと男は理緒の手から大きな袋を奪おうとしたため、理緒はその袋を逆に押し付けるようにすると、男がバランスを崩した。
「な…!ガキじゃねぇ!」
「何だとっ?」
「このガキ、騙したな!」
袋を押し付けたその隙に逃げようとした理緒だったが、しまったと思った時には遅かった。もう一人の男に腕を取られて、理緒は逃げるタイミングを失っていた。
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