【R18】爽やか系イケメン御曹司は塩対応にもめげない

四葉るり猫

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触れ合う身体と溶け合う心

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 小林との再会を、美緒は大きな変化として受け止めた。直接話をした事で、心配していた事、気になっていた事の殆どが解消され、小林の気持ちを直に聞いた事でようやく現実を真っすぐ見る事が出来たからだ。それまでは想像や推測で考えるしかなく、それが美緒の心を余計に消耗させていた。

 小林は近くに宿をとったと言い、もし美緒がよければ二人で過ごしたいと言われた。美緒が戸惑っていると、買い物から帰って来た母親に、つべこべ言わず行ってきなさい!と追い出す様に送り出されてしまった。ちゃんと話をするまでは家に入れないからね!とまで言われてしまえば、未だ抵抗する気力も湧かない美緒はそれに従うしかなかった。何だか母親に見捨てられたように感じたが、母親は無理だと思ったら夜中でも気にせず帰ってくればいいから、と笑いながら告げた。屈託のない笑顔と強制的な言い方が実は母親なりの気遣いだと感じた美緒は、不安を抱えながらもそれに従った。



 小林が泊まっていたのは、旅館の中でも離れの様な建物だった。十二畳と六畳の和室に、立派なお風呂とトイレがついていた。庭に囲まれた静かな佇まいで、完全に独立しているから周りを気にせずに済む。ホテルのスイートルームしか泊まらないんじゃないかと思っていた美緒は意外に思ったが、こういう方が今の美緒にはいいだろう?と言われてしまった。確かにスイートルームは豪華だろうが、今の美緒は気後れしてしまうだろう。この部屋を小林は、次の日曜日まで丸一週間借りたのだという。

 部屋から見える日本庭園は静かで綺麗で、美緒の不安を癒してくれるようだった。小林と一緒にいる緊張感はまだあるが、小林は以前と変わらず優しくて、まるでこの一か月がなかった様な気さえしてくる。それでも、以前のように一方的にべたべたする事はなく、二人の間に微妙な間があるのを感じた。



 翌日の月曜日、美緒は小林の怪我の痕を見せて貰った。美緒の怪我は昨日のうちに小林に見せていたが、その時の美緒はまだ見る勇気が持てなかった。だが、一晩一緒に過ごした美緒は、怪我の原因になった自分は見ておかないといけないような気がして、思い切って見せて欲しいとお願いした。小林はまだいいと言ったが、美緒はそうしないと先に進めない気がするからと言うと、小林は散々ためらった後、そういう事なら…と了承した。
 傷跡は思ったほど大きくなかった。見た目の傷の大きさなら美緒の方が大きかっただろう。小林の方は刺し傷だったから、傷跡は小さかったけれどその分深かった。滑らかな肌の上にある赤く残る傷跡を見た瞬間、あの時の事が思いだされて美緒は恐怖を感じたが、事前に飲んでいた薬と小林の存在のお陰で取り乱すことはなかった。それでも、その日の夜は小林がいなくなってしまう様な不安を感じて眠れなかったが。
 一晩中美緒は不安の中にいたが、それでも目覚めた時に小林が側にいた事で、その不安が軽くなるのを感じた。眠れなかったせいでその日は一日眠かったが、小林も久しぶりに会えて気が昂って眠れなかった、今日は昼寝でもして過ごそうと言われて、二人はその日を微睡ながら過ごした。

 こんな感じで、二人は離れていた間を埋めるように同じ時間を共有した。目が覚めた時に小林がいる状況は、思った以上に美緒の気持ちを落ち着かせた。これまでは頻繁に小林がいなくなる夢を見て、その度に不安に陥っていたからだ。目が覚めても小林がいる状況は、美緒の嫌な記憶を少しずつ、でも確実に塗り替えていた。



「なぁ…」
「…なに?」
「…好きだ」
「……」

 あんな事があって、二人の関係も変わってしまったと思っていたが、こうしていると何も変わっていないようにも感じられた。実際には二人を取り巻く環境は変わったし、それはアパートを引き払った美緒の方が顕著だろう。それに、以前はこんな風に過ごした事はなかったように思う。

「…私…」
「ん?」
「外に…出られなくなって…」
「うん」
「まだ…近くの公園とかコンビニしか、行けないし…」
「うん」
「…仕事も、行けそうになくて…」
「うん」
「だから…戻れる、気、しない…」
「うん…でも、それでいい」

 そんな事ないと言われるだろうかと思ったが、小林はそんな美緒をそのまま受け止めてくれた。それでいいと言われたら、それでいいんだ…と何だかすごく腑に落ちた。

「…それで、いいの?」
「うん」
「でも…何も出来ないし…」
「うん」
「…足手まといになるし…」
「うん」
「一緒にいるの…無理、だと思う」
「……そ、っか…」

 大丈夫だとは言ってくれないのか…と思うと、事実とは言え寂しく感じた。それでも、ありのまま受け入れて貰えるのは不思議と心が凪いだ。




「…一緒にいるの、無理か?」
「…うん」
「何もしなくていいし…」
「…」
「仕事も家事も、しなくていいし…」
「…」
「寝てばっかりでもいいから…」
「…」
「それでも、側にいて欲しい」
「…」

 どう考えても自分にだけ都合のいい話に、美緒は戸惑った。それじゃただの居候でお荷物でしかない…と思ったからだ。

「ここがいいなら、俺がこっちに引っ越す」
「…それは…」
「親父も兄貴も賛成してるから大丈夫」
「でも…」
「金の心配もない。学生時代から投資してて、それでそれなりの生活は出来る」
「…でも…」
「美緒と一緒にいられるなら、他の事はどうでもいい」
「…」



 その後も二人は、何をするでもなく過ごした。小林もまだ本調子ではないようで、長い入院ですっかり体力も筋力も落ちてしまったのだとぼやいた。その為、美緒の調子に合わせながら、二人は庭に出て散策したり近くの大きな公園を散歩したりして過ごした。
 時には小林の膝の間に座り込み、後ろから抱きかかえられながら、ぼんやりと庭を眺めて過ごす事もあった。小林の体温を感じながら、会話もせずただ時間が過ぎるだけの一時は、不思議と美緒の心から不安を取り除いた。



「…ねぇ…」
「うん?」
「…その…」
「…ずっと…」
「え…?」
「…こうしていたいな…」
「…うん」

 後ろから抱きしめられて、静かに互いの体温と心音を感じるのは心地よかった。嫌な事がゆっくりと氷が解けるように消えていくのを感じて、美緒はその腕の中に身をゆだねた。ぽつりぽつりと、脈絡なく互いに感じた事や思った事を口に出し合っていると、二人の間にある垣根がなくなって溶け合う様な気がした。互いに顔を見ずに話をしているせいか見た目に惑わされる事がなくて、むき出しの素の小林に触れている気がした。

「…もっと、早く…」
「うん?」
「こんな風に、話せたらよかったのに…」
「これから話せばいいだろう」
「…まだ…間に合うのかな…」
「何で、間に合わないと思うんだ?」
「だって…」
「付き合うって言って、まだ二ヶ月だぞ?」
「…そ、っか…」
「まだ、これからだ」
「…そう、だね…」

 二ヶ月と言われて、美緒は驚いてしまった。色々な事があり過ぎて、半年くらいは経っているような感覚だったからだ。でも、確かに言われてみれば付き合うという話になったのは七月に入ってからで、あれから二ヶ月ちょっとしか経っていない。しかもその半分は顔を合わせる事もなかったのだ…



「なぁ…」
「何?」
「…やっぱり、好きだ」
「…うん。…私も…」
「……」
「…な、何?」
「…ヤバイ…嬉し過ぎて死にそう…」

 好きだとストレートに言われて恥ずかしく思いながらも、今度はそれを否定する事も、拒否する事も出来なかった。そして、初めて自分もだと意識もせずに口からするりと出てしまった。言ってから美緒はとんでもなく恥ずかしくなって固まったが、自分が収まるところにピタッと収まったのを感じた。ああ、とっくに捕まってたんだな…と、そんな風に思った自分に驚いた。


「…ずっと…考えてた…」
「…何?」
「俺と関わらなきゃ…こんな風に傷つける事もなかったんだろうか、って…」
「…」
「だから…もう、会わない方が、いいのかって…」
「…」
「だから、連絡しなかったんだけど…」
「…そう…」
「やっぱ、無理」
「は…?」
「…会えないと…犯罪に走る自信がある…」
「…は…?」
「会社辞めさせて、マンションに閉じ込めて、ずっと愛でたい…」
「いや…さすがに…それ、は…」
「だから…助けて」
「た、助け…?」

 庭を前に小林の足の間で後ろから包み込まれるようにして座っていた美緒は、何だか物騒極まりない事を言い出した小林に面食らった。いや、独占欲の度が過ぎるのは小林家の特徴だとは聞いていたし、小林の母親からは、小林の気性は父親や兄よりも激しくて、思い詰めたら何をするかわからないと聞かされていた。小林と同類だという朱里も、大石を誰の目にも触れないように閉じ込めて独り占めしたい、なんて言っていたから、冗談ではないのだろう…

「…た…助けるって…何すれば、いいの?」
「…美緒が…」
「うん?」
「結婚してくれたら」
「…」
「多分、大丈夫」
「…」

 ある意味、想定内の答えだったから、そこは驚かなかった。ただ、どう答えていいのか、返す言葉に困って何も言えなかったが…ただ、この状況でプロポーズするのか…そりゃあ、その手の言葉は今までなかったけれど…

「…ねぇ…今のって…」
「…」
「…」
「…ごめん…」
「…何?」
「やり直すから…」
「何を?」
「プロポーズ」
「…」
「本当は、もっと、ちゃんと言う予定だったから…」
「…」

 そうか、ちゃんと言ってくれる気はあったのかと美緒は安堵した。今まで散々外堀を埋めまくっていたのに、肝心の言葉がなかった事が引っかかっていたのだ。でも、考えてくれていたのだとわかっただけでも、今は嬉しかった。

「…やっぱ無理…」
「…え?」

 たった今、プロポーズをちゃんとしてくれると聞いて、じんわりと心が温まるのを感じていた美緒だったが、急に無理と言われて戸惑った。それは…プロポーズが無理という事なのだろうか?やっぱりこんな風になってしまった自分では無理と言う意味なのだろうかと、美緒は急速に気持ちが沈んでいくのを感じた。

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