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五章、眠れる火竜と獅子王の剣
92、この騎士は貴殿の異母兄である。
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ワゥランの屋敷につくと、驚いた様子でもてなされた。
即日会いに来るとは思っていなかったらしい。気持ちはとてもわかる。
「ネコ族のワゥランと申します」
ソファをすすめてくれるワゥランのキトンブルーの猫目が透明度の高い宝石みたいで、美しい。その眼差しを深海のような隻眼で受け止めたノウファムは、ネイフェンの腕を引っ掴んで前に出した。
「この騎士は貴殿の異母兄である。ワゥラン殿が即位なされた後は貴国との外交役となるだろう」
「殿下っ!?」
部屋中から声が上がる。
理解が追いつかない。今なんて?
衝撃的な言葉が連続していたように思えるよ?
全員がポカンとする中、ノウファムは「そうであろう?」と騎士の背中を叩いた。
ネイフェンは驚愕から立ち直った様子でヒゲを撫で、温厚な瞳でワゥランを見た。そして、首を振った。
「いいえ、殿下。私はそのような恐れ多き身分ではございませぬ」
ワゥランはそんなネイフェンをじっと見つめていた。
他の者たちはその尋常ではない初対面のやり取りをどう飲み下したものかと目を白黒させている――、
ワゥランが口を開いた。
「異母兄の件はともかく、王国は私に味方をして下さるということですね」
真っ直ぐな猫の目がキラキラしている。綺麗だ。
ノウファムはそれを受け止めて、「いかにも」と頷いた。
「先日、我々王国のハネムーン隊は大森林に滞在していたのだ。森林地帯は空気も美味しいし、神秘的な世界樹の麓で睦むのも風流であろうと思い」
ノウファムは僕を抱えてソファに身を沈めると、主導権を握ったままどんどん語る。
ハネムーン隊ってなんだ。恥ずかしい。やめて、その名前。恥ずかしい。
「しかし、貴国の虎族がやってきて騒動を起こしてムードを台無しにしてしまった。遺憾である……」
ノウファムは僕の顔を自分の胸に抱くようにして、僕の後頭部をよしよしと撫でた。
「聖杯もとても怖かったと申している。可哀想に」
――なんだこれ。
いや、ノウファムのやりたいことが僕にはわかる。
慣れてきた。お芝居だ。これはお芝居なのだ……。
僕はちょっと躊躇ってから、自分からすりすりとノウファムの胸板に頬を寄せた。
「怖かったです……」
恐る恐る調子を合わせてみたら、何故かノウファムがピクっと全身を強張らせて僕を凝視している。
――合わせてあげたんじゃないですか、なんですかその珍獣を観るような眼は?
ともあれ、僕たちとワゥランたちは友好関係を誓い合った。
果実酒を注いだグラスをノウファムとワゥランが同時に掲げて、一緒に飲み干す。それはこの地方で「これから友情を深めよう」という始まりの契りらしい。
「【獅子王】が亡くなり、我々は次の王を選んでいる最中です」
ワゥランはちょっと熱った声で自分の置かれている状況を物語る。この人、お酒に弱いのかもしれない――僕はそう思った。
「ネコ族の代表と虎族の代表、どちらが王にふさわしいか試練をこなして対決をしているのです、ひっく」
あっ、酔っている。
見守っている従者の人たちが心配そうにワゥランを見ていて、僕はなんとなくネイフェンに視線を移した。
すると、ネイフェンは僕が自分の反応を伺うのをわかってたみたいな顔で視線をパチリと合わせて、チャーミングにウインクをするではないか。うーん?
――結局、異母兄というのは本当なんだろうか。
「お前も飲むか?」
「ん……」
お代わりをそそがれた葡萄酒のグラスを渡されて、僕はちょっと迷ってから舐めてみた。
「甘くて美味しい」
葡萄酒は果実の風味が舌に爽やかで、大地の恵みって感じでとても美味しかった。
即日会いに来るとは思っていなかったらしい。気持ちはとてもわかる。
「ネコ族のワゥランと申します」
ソファをすすめてくれるワゥランのキトンブルーの猫目が透明度の高い宝石みたいで、美しい。その眼差しを深海のような隻眼で受け止めたノウファムは、ネイフェンの腕を引っ掴んで前に出した。
「この騎士は貴殿の異母兄である。ワゥラン殿が即位なされた後は貴国との外交役となるだろう」
「殿下っ!?」
部屋中から声が上がる。
理解が追いつかない。今なんて?
衝撃的な言葉が連続していたように思えるよ?
全員がポカンとする中、ノウファムは「そうであろう?」と騎士の背中を叩いた。
ネイフェンは驚愕から立ち直った様子でヒゲを撫で、温厚な瞳でワゥランを見た。そして、首を振った。
「いいえ、殿下。私はそのような恐れ多き身分ではございませぬ」
ワゥランはそんなネイフェンをじっと見つめていた。
他の者たちはその尋常ではない初対面のやり取りをどう飲み下したものかと目を白黒させている――、
ワゥランが口を開いた。
「異母兄の件はともかく、王国は私に味方をして下さるということですね」
真っ直ぐな猫の目がキラキラしている。綺麗だ。
ノウファムはそれを受け止めて、「いかにも」と頷いた。
「先日、我々王国のハネムーン隊は大森林に滞在していたのだ。森林地帯は空気も美味しいし、神秘的な世界樹の麓で睦むのも風流であろうと思い」
ノウファムは僕を抱えてソファに身を沈めると、主導権を握ったままどんどん語る。
ハネムーン隊ってなんだ。恥ずかしい。やめて、その名前。恥ずかしい。
「しかし、貴国の虎族がやってきて騒動を起こしてムードを台無しにしてしまった。遺憾である……」
ノウファムは僕の顔を自分の胸に抱くようにして、僕の後頭部をよしよしと撫でた。
「聖杯もとても怖かったと申している。可哀想に」
――なんだこれ。
いや、ノウファムのやりたいことが僕にはわかる。
慣れてきた。お芝居だ。これはお芝居なのだ……。
僕はちょっと躊躇ってから、自分からすりすりとノウファムの胸板に頬を寄せた。
「怖かったです……」
恐る恐る調子を合わせてみたら、何故かノウファムがピクっと全身を強張らせて僕を凝視している。
――合わせてあげたんじゃないですか、なんですかその珍獣を観るような眼は?
ともあれ、僕たちとワゥランたちは友好関係を誓い合った。
果実酒を注いだグラスをノウファムとワゥランが同時に掲げて、一緒に飲み干す。それはこの地方で「これから友情を深めよう」という始まりの契りらしい。
「【獅子王】が亡くなり、我々は次の王を選んでいる最中です」
ワゥランはちょっと熱った声で自分の置かれている状況を物語る。この人、お酒に弱いのかもしれない――僕はそう思った。
「ネコ族の代表と虎族の代表、どちらが王にふさわしいか試練をこなして対決をしているのです、ひっく」
あっ、酔っている。
見守っている従者の人たちが心配そうにワゥランを見ていて、僕はなんとなくネイフェンに視線を移した。
すると、ネイフェンは僕が自分の反応を伺うのをわかってたみたいな顔で視線をパチリと合わせて、チャーミングにウインクをするではないか。うーん?
――結局、異母兄というのは本当なんだろうか。
「お前も飲むか?」
「ん……」
お代わりをそそがれた葡萄酒のグラスを渡されて、僕はちょっと迷ってから舐めてみた。
「甘くて美味しい」
葡萄酒は果実の風味が舌に爽やかで、大地の恵みって感じでとても美味しかった。
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