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第2話 抱えきれぬ想い

秘密 Episode:06

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 その晩、あたしはベッドの中で寝返りばかりうっていた。

 学院の夜は、とても静かだ。
 ここはなんの音もしない。
 銃撃の音も、砲撃の音もしない。

 静かすぎて眠れなかった。

 ――これが、平和なのかな?

 こんな穏やかさ、とても信じられない。
 逆に言えばそれだけ、常に気を張っていたんだろう。
 でもそれは当たり前だったし、何より生き残るにはぜったい必要なものだった。

 そっと起き上がる。
 柔らかいベッド。清潔な部屋。
 どれもあたしにとっては、馴染みが少ないものばかりだ。

 なんとなく不安になって、枕元に置いておいた太刀を手にする。
 これだけは変わらなかった。

 柄を握っていると、いろんなことが脳裏をよぎる。
 炸裂する砲弾。えぐられていく大地。
 引き裂かれて死んでいく兵士たち……。

 でも、なぜだろう?

 あの地獄の風景が、呼んでいるような気がする。
 無念の死を遂げた亡霊たちが、囁いてる。
 ここへ帰れ、と。

 あたしはイヤだった。
 ほんの少しでいいから、血の臭いから離れたかった。
 それなのに亡霊たちは追いかけてきて、囁き続ける。
 
 ――ここへ帰れ、と。

 あたしは頭を振ると、立ちあがった。
 確かにいつかは帰るだろう。それが約束だから。

 けど、今だけは……。

 もう寝つけそうになくて、寝室のドアに手をかけた。
 共用スペースの端末を使えば、なにか適当に暇を潰せるだろう。

 そして、気が付く。

 こんな遅い時間なのに、共用スペースからかすかに物音がしてた。
 魔視鏡の共鳴音――それに、操作盤を叩く音。
 どうも、先輩も起きてるらしい。
 驚かさないようにと思って、あたしはそっとドアを開けた。

 先輩が端末に向かって、何かしてる。
 なんだかすごく真剣な感じで声をかけられなくて、そのまま魔視鏡に映るものを、あたしは後ろから眺めていた。

 ――なんだろう、あれ。

 ふだん目にする映像とかじゃなくて、何か文字ばっかりだ。
 それが先輩が操作するたび、すごい勢いで流れていく。

 しばらく見ているうちに、やっと幾つか見知った単語があることに気がついた。
 これならたぶん……記録石の中のデータ一覧だ。

 けど、自分のをこんなふうにして見るのは、聞いたことがなかった。
 だいいちこんな変わったことをしなくても、簡単な操作で詳しく見られる。

 ――だとしたら、何を?

 しばらく考えて、あたしは思い当たった。

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