251 / 743
第7話 力の行方
帰還 Episode:04
しおりを挟む
◇Sylpha
授業が終わって、私は真っ先に図書館へと足を向けた。
夕べは遅くなってからここへ着いたので、学年が違うタシュアとは、帰ってきてからまだ会っていない。
奥のテーブルに、見慣れた姿を見つける。
「――タシュア」
「お帰りなさい」
まるでちょっとどこかへ出掛けていただけのような言い方が、いかにもタシュアらしかった。
「これを、返そうと思って。――ありがとう、役に立った」
そう言って借りていたダガーを差し出す。
使う機会はあまりなかったが、手元にあったお陰でとても安心だった。
――傍にタシュアがいるようで。
「そうですか、それはなによりでした。アヴァンではいろいろあったようですね」
「ああ」
どこからどう話していいか、わからないほどだ。
どう切り出そうか考えていると、タシュアが先に口を開いた。
「そう言えば、今回は珍しい格好をしたようですが」
「珍しい格好……?」
なんのことだろうか?
「パーティがあるとかで、ドレスを着たのでしょう? スカートが苦手なあなたにしては、珍しいと思いますが?」
「……なっ、どっ、どうしてそれを?!」
突然言われてうろたえる。
「今朝、ルーフェイアとミルドレッドが、写影を持ってきてくれましたよ」
そう言ってタシュアが差し出した写影は、確かにあのアヴァンの屋敷でみんなで撮ったものだった。
薄紫のドレスを着た自分が、中央に写っている。
「だっ、ダメだっ! そんなの――!!」
慌てて手を伸ばす。こんな格好をしたものを、タシュアに持っていてもらいたくない。
「おっと」
だがタシュアのほうが一瞬早く、ひょいと写影を引っ込めた。
「あつつ……」
勢い余ってテーブルに顔から突っ込む。
「そんなに机が好きだとは、知りませんでしたよ」
「誰のせいだ!」
見ればタシュアの顔に、意地の悪い笑みが浮かんでいた。
私の様子が、よほど面白かったらしい。
彼のいじめ癖は今に始まったことではないが、それにしてもどうしてこう、ひねくれているのだろう。
「それにしてもスカート嫌いのあなたがよく、ドレスを着る気になりましたね?」
「いや、それが実は……」
訊かれて、ナティエス以下後輩たちに、脱がされかかったことを話す。
正直あれがなければ、絶対に着なかった。
「おやおや、困った後輩たちですね」
口ではそう言っているが、話を聞いたタシュアは完全におもしろがっていた。
目の前で同じことがあっても、ぜったいに止めてくれないだろう。
それどころか、よけいに煽りそうだ。
「……何か言いたいのだろう?」
ついそんなことを口にする。
授業が終わって、私は真っ先に図書館へと足を向けた。
夕べは遅くなってからここへ着いたので、学年が違うタシュアとは、帰ってきてからまだ会っていない。
奥のテーブルに、見慣れた姿を見つける。
「――タシュア」
「お帰りなさい」
まるでちょっとどこかへ出掛けていただけのような言い方が、いかにもタシュアらしかった。
「これを、返そうと思って。――ありがとう、役に立った」
そう言って借りていたダガーを差し出す。
使う機会はあまりなかったが、手元にあったお陰でとても安心だった。
――傍にタシュアがいるようで。
「そうですか、それはなによりでした。アヴァンではいろいろあったようですね」
「ああ」
どこからどう話していいか、わからないほどだ。
どう切り出そうか考えていると、タシュアが先に口を開いた。
「そう言えば、今回は珍しい格好をしたようですが」
「珍しい格好……?」
なんのことだろうか?
「パーティがあるとかで、ドレスを着たのでしょう? スカートが苦手なあなたにしては、珍しいと思いますが?」
「……なっ、どっ、どうしてそれを?!」
突然言われてうろたえる。
「今朝、ルーフェイアとミルドレッドが、写影を持ってきてくれましたよ」
そう言ってタシュアが差し出した写影は、確かにあのアヴァンの屋敷でみんなで撮ったものだった。
薄紫のドレスを着た自分が、中央に写っている。
「だっ、ダメだっ! そんなの――!!」
慌てて手を伸ばす。こんな格好をしたものを、タシュアに持っていてもらいたくない。
「おっと」
だがタシュアのほうが一瞬早く、ひょいと写影を引っ込めた。
「あつつ……」
勢い余ってテーブルに顔から突っ込む。
「そんなに机が好きだとは、知りませんでしたよ」
「誰のせいだ!」
見ればタシュアの顔に、意地の悪い笑みが浮かんでいた。
私の様子が、よほど面白かったらしい。
彼のいじめ癖は今に始まったことではないが、それにしてもどうしてこう、ひねくれているのだろう。
「それにしてもスカート嫌いのあなたがよく、ドレスを着る気になりましたね?」
「いや、それが実は……」
訊かれて、ナティエス以下後輩たちに、脱がされかかったことを話す。
正直あれがなければ、絶対に着なかった。
「おやおや、困った後輩たちですね」
口ではそう言っているが、話を聞いたタシュアは完全におもしろがっていた。
目の前で同じことがあっても、ぜったいに止めてくれないだろう。
それどころか、よけいに煽りそうだ。
「……何か言いたいのだろう?」
ついそんなことを口にする。
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
スキル買います
モモん
ファンタジー
「お前との婚約を破棄する!」
ローズ聖国の国立学園第139期卒業記念パーティーの日、第3王子シュナル=ローズレアは婚約者であるレイミ・ベルナール子爵家息女に宣言した。
見習い聖女であるレイミは、実は対価と引き換えにスキルを買い取ることのできる特殊な能力を有していた。
婚約破棄を受け入れる事を対価に、王子と聖女から特殊なスキルを受け取ったレイミは、そのまま姿を消した。
レイミと王妃の一族には、数年前から続く確執があり、いずれ王子と聖女のスキル消失が判明すれば、原因がレイミとの婚約破棄にあると疑われるのは明白だ。
そして、レイミを鑑定すれば消えたスキルをレイミがもっている事は明確になってしまうからだ。
かくして、子爵令嬢の逃走劇が幕を開ける。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる