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第8話 言葉ではなく

古巣 Episode:02

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「っと、アンタらどこ見てんのさ! こっちの上等な服が――」

「あたしに向かってカモるなんざ、いい度胸じゃん、ミハーナ」

「え?
 ――シーモア?!」

 このスラムにはよくいるこの手合いだけど、彼女はシーモアの知り合いだったみたい。
 ただ、あたしはよく知らなかった。
「シーモア、誰?」

「あ、ナティは知らないっけね。
 パンテラって言うグループのミハーナ。ほら、目潰しのミハーナさ」

「ああ♪」

 パンテラっていうのは、この街にたくさんある不良少女グループの中でも、最強チームの名前。
 で、シーモアったら今のグループに引き抜かれる前は、そこにいたって聞いたことあった。

 その中でも目潰しのミハーナは、今のリーダーのティニと並んで、ここじゃ相当名が知られてる。

「ウワサじゃさ、大の男を五人もノしたっていうけど、あれホント?」

「あはは、ノしたってほどじゃないよ。でもあいつらときたら分け前よこさない上にさ、欲しけりゃヤらせろってナイフ出してさ」

 うん、それはなかなか悪質。てか、ナメすぎ。
 ミハーナが続ける

「さすがにハラたったからさ、ティニと二人して片っ端から役立たずにして、ついでに目玉潰してやったんだ」
「ほんとだったんだ……」

 シーモアから話は聞いてたけど、当人から聞くのって、やっぱり違うかも。

「それにしてもあんた、どこのモンさ。あんま見かけないね」

 仕方ないって分かってるけど、こう言われちゃうと、ちょっと寂しいかも。
 あたし、ここの言葉ヘタだから、丸分かりだし。

 どう言おうか迷ってたら、先にシーモアが口を開いて。

「言うの遅れたね。
 コイツはナティエスって、あたしのダチさ。ガルシィんとこで、前にいっしょに世話になってた」

「へぇ……そりゃ驚いた」

 ミハーナが、ちょっと見下した顔になって。

「いつからガルシィんとこは、お嬢さんを飾るようになったんだい?」

 ちなみにあたしたちのグループは、名なしなの。
 というか、もう「ガルシィのとこ」って言えば通じちゃうほど有名。

 もひとつ言うとガルシィのとこは、普通?の不良とは一味違って、強盗なんて絶対やらない。

 普段はたいてい誰かの依頼――店主どうしの嫌がらせ試合みたいなのもあるけど――で、ボディーガードまがいをしてるの。
 後はあたしたちより上になる大人のグループに頼まれて、兵隊やったり。
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