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第8話 言葉ではなく
団欒 Episode:13
しおりを挟む――させないっ!
大きく踏みこみながら、男の腕めがけて太刀を振り上げる。
でも刃が達する前に、男がくずおれた。男が持っていた短剣が石畳に落ちて、乾いた音を立てる。
背に、ナイフが突き立っていた。
残る男たちも、ひとりは死の呪文で、もうひとりはあたしの小太刀で絶命している。
あたし、また……。
「ルーフェイアっ!」
そこへやっと――と言っても最初から数えてもほんのわずか――イマドが来る。
「大丈夫か?」
「うん。片付いたわ。
――ウィン、大丈夫?」
たぶんさほどではないと思うけれど、心配だった。
「ちきしょ~、いてぇ……」
痛がるウィンに急いで駆け寄って、傷を診る。
――よかった。
逃げようとしていて、まともに切られなかったのがよかったのか、命に関わるような傷じゃない。
「ちょっと動かないでね」
回復魔法を唱えると、流れていた血が止まった。
ついでに持ち合わせの痛み止めを打ってあげて、応急手当の代わりにする。
「あとは魔法で治すより、病院へ行ったほうが……」
魔法は便利だけど、本来の治癒能力を強引に高めているに過ぎない。
戦場のような緊急事態ならともかく、普段はなるべく使わないほうが良かった。
「俺、もうダメ、息、あがった」
ダグさんにさらに遅れて、ゼロールさんがここへ来る。
「あの、おふたりとも、大丈夫ですか?」
「あんたにそう訊かれちゃ、かたなしだよな……」
ダグさんが苦笑いした。
「にしてもこのナイフ、誰が投げたんだ?」
向こうではイマドが、倒れた男の人の背を見て、不思議がっている。
「かなりのウデだぜ、これ投げたの」
「そうだね」
ウィンをゼロールさんに預けて、あたしも見てみた。
投擲専用の物が、正確に背中から心臓を突き刺していて、男は即死だ。
でも、このナイフ……?
精緻な彫刻が刃の付け根に施されているけど、それに見覚えがある。
もし記憶違いじゃなければ……。
「――私だ」
路地の奥から声がした。
予想通り聞き覚えがある声だ。
「――父さん?」
そう呼ぶと、見慣れた姿が現れた。
「え、ディアスさん?!」
「誰かと思えばディアスじゃないか」
「あ、ルーフェイアの親父さん」
他の三人からも一斉に声が上がって、思わずあたしたちは顔を見合わせた。
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